米光 ぼく、シャンディーガフ。
豊崎 ハーフ&ハーフにしようかな。
藤田 寝かし玉露ハイっていうやつにします。
いきなり衝撃の事実が明らかになる。一線級のライターともなると「とりあえず生」などという凡人の浅はかな常識はまるで通用しない。人の一歩先の発想をするという基本が最初のドリンクチョイスにも表れているのだ。
たろちん 食べ物も頼んじゃいましょうか。
藤田 今すごいクリームブリュレが食べたい。
たろちん フィナーレの食べ物じゃないですか。ここはお魚がおいしいらしいですよ。
豊崎 地鶏の岩塩焼きお願いします。
米光 おにぎり6種類もあるね。
人の話を聞かないというのも独自の発想力を保つためには重要なことのようだ。
たろちん 今日はですね、ライターの皆さんがどんな生活をして、どんな仕事をしているかという事、それからどんな事を考えているのかという話をお聞きしたいんですけど……なんで皆箸袋折ってるんですか。
藤田 間が持たなくて。
米光 話が長くなるとあっという間に興味なくすのがライターの生態であった。
たろちん どんな種族ですか。そもそもライターになろうと思うきっかけはなんだったんでしょう?
豊崎 わたしは消去法でしたね。就職難の時代で三流大学出身の自分に職なんか見つかるわけないと思ったし、朝早く起きたり制服着たりするのも嫌だなあと思って。それで編集プロダクションに潜り込んだ。
米光 え、最初は編集者志望だったんですか?
豊崎 でもライターの書く原稿が不満で勝手に直したりしてたの。編集者は書き手を育てなきゃいけないのにその根気がなくて、向いてないなって思った。
藤田 すごくよくわかります。あたしも編集者養成の専門学校に行ってたんだけど、編集能力より文章を誉められて「あたしはライターに違いない!」って思い込んじゃった。
豊崎 それで書く仕事もするようになったんだけど、原稿料は私の売り上げとして会社に入れてたのね。で、気がついたら給料14万なのに原稿料は60万くらいになってて、これ辞めたほうがいいじゃんって。だから、どうしてもライターになりたかったって訳じゃないですね。
意外にも最初からライターを目指す人は少ないらしい。編集の才能が無いほうがライターには向いているということだろうか。とすれば僕にも希望がある。基本的に何の才能も無いからだ。もちろんライターの才能も無い。あ、駄目だ。
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僕が話してるのに箸袋を折り折りする大人たち。
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米光 ぼくは文章を書くのが好きで、学生時代からラジオや雑誌の常連投稿者だった。採用される賞金目当てで、バイト感覚でやってたな。
たろちん ハガキ職人! それってどういうこと書くんですか?
米光 え、なんかおもしろいこと。すっころげてブー、みたいな。
たろちん 昭和初期のギャグじゃないですか。
米光 で、まあゲーム会社に就職して、文章はネットに趣味として書いてた。実写版ドラえもんのシナリオとか書いてたら、たまたまそれを見つけた編集者が面白がって、映画評の連載をくれたのが始まりかな。
米光さんのほうが出発点が近いかもしれない。僕も以前はHPにすっころげてブーみたいなこと書く活動を精力的にやっていた。アクセスは1日10人くらいで、編集者どころか友達も見てくれなかった。今のところ絶望の感情しか湧いてこない。
豊崎 バブル期は雑誌がたくさん立ち上がったから、どこもライターを欲しがってて、どんな人でも15万くらいは稼げたのよ。今なりたい人は最初のとっかかりが大変かもしれない。
たろちん そうなんですか……。
藤田 でも逆にいうとブログとかでチャンスは広がってますよ。
たろちん じゃあ僕たちにもチャンスはあるんですね!
豊崎 そういうのはアライさん(アライユキコ、B-TEAMの企画発足・編集担当、フリー編集者)みたいな奇特な人だけで、今の編集者は少ない人数で雑誌作らされてへとへとだから、新しい人を探してる余裕なんてないよ。
たろちん ないんですね。
アライ ネットに面白い人がいるのはもっとみんな知るべきですよ。
豊崎 だから、アライさんみたいな狩猟タイプの編集者は、今珍しいんだってば!
藤田 でもブログから本を出す人もたくさんいるじゃないですか!
豊崎 そんなの一握りだって!!
米光 このおにぎりおいしいねー。
それぞれの価値観でヒートアップする大人たち。僕もビールをぐびりとやったら、いつもよりちょっと苦かった。
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トヨザキ社長の通り名にふさわしい含蓄あるお話をたくさん聞かせていただいた。
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