女友達が恋をした。
 彼女はどうも社会的幸福感から外れたところにある恋愛を選ぶ傾向がある。
 二十近く年上の男とか、精神的サディストとか性的サディストとか、自分しか愛せない極度のナルシストだとか、まあたぶん自分が誰かの支配化に置かれるという状況に幸福を感じるタイプの人間なのだろう、という推測がされる。
 がしかし、恋愛面以外においては彼女自身がサディスト傾向を持っていて口が悪い。
 彼女の酷い一言によって傷ついた人間たちは男女問わず数知れず。しかも、それがほぼ無意識によってなされているので、性質が悪いのである。
 彼女は、
 「わたしを好きになる男など、好きになれない」
 などと本気でのたまう。
 そんな彼女が、恋をしたのだ。
 わたしはまだ会ったことはないのだが、話を聞いてみるとやはり、「社会的幸福感から外れた」ところにいるいる相手だった。
 もうそろそろ幸せになればいいのになあ、と思いながら、彼女の話を聞いていた。相手の男の人は、彼女をすぐに放ったらかしにするそうだった。
 彼女の長い長い不幸なノロケ話を聞いていて、ふと、気づいたことがあった。
 彼女の言葉使いが、いつもと違うのだ。
 「彼が電話をくれてね」
 と、彼女は口にした。そのあとも「何々してくれて」という言葉を、たくさん使った。それまでの彼女はたいていの場合、「誰々が何々をしてきて」という言葉を使っていた。「くれる」というのは、相手に対する感謝がなければ出てこない台詞だ。
 長いノロケ話のあとには、わたしに向かって「聞いてくれてありがとう」という優しい言葉までかけてくれた。
 どんな恋愛でも、やはりするにこしたことがないのだなあ、と再確認した小さな出来事、であった。


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