携帯のメールが苦手だ。
 用事も無いのに、なんとなくやりとりするあの感じが、とても苦手だ。
 あんまり親しくない人からのメールになんて答えたらいいんだろうって悩むのが、たまらなく苦痛だ。
 しかも、受け取って一時間以内に返信しないといけない、みたいなルールもどうかしてると思う。
 もともとわたしは携帯電話を携帯していなくて、六時間くらい放っておくのだって普通で、電話にもあんまりでなかったりする。だからメール着信後すぐになんかほとんど返事できない。メールに気づくのはどうしてか夜中であることが多くて、こんな時間に返信するのは失礼だよなあと思ったら、もうそのまま返事が書けなくなる。
 ついでに言えば、顔文字も苦手だ。
 友達に、「携帯メールが苦手だから、好きになった男の人にだけは絶対に携帯のメールアドレスを教えない」という女の子がいる。どうでも良い人たちには教えて、そして返事をしないのだ。おかしな話だが、それはそれで筋が通っていて清々しい。だが小心者のわたしは、「アドレス教えて」と言われて「嫌だ」なんて答えられない。それに、誰にも聞かれないっていうのも淋しい気がする。携帯メールって、本当にわたしの心をかき乱す。
 同じメールでも、パソコンのメールは別だ。
 何時に送ろうが受け取り手は自分の好きなときに読むことができるし、自分の好きなときに返事が書ける。
 なんていうか、携帯メールのあの、「束縛してるつもりは無いけど結果的にそうなっちゃってるかな」とか言いそうな、可愛いけどなんかちょっと面倒くさい女の子、みたいな雰囲気が、わたしには合わないのだ。束縛されるのはあんまり得意じゃない。好きな人と一緒にいたいと思う気持ちと束縛欲とを、ごっちゃにする人が多すぎる。
 メールしたい人としたいときにしたいようにできるんだったら、携帯メールだって手軽でいいのだろうけれど。
 たとえばすべての人の携帯メールが、一日に五通しか発信できないようにする、というのはどうだろう。たった五通しか出せないうちの一通を自分にくれたんだ、と思ったら、わたしだって頑張って返信するのに、などと変な妄想をしつつ、酔っ払ってついアドレスを教えてしまった、よく知らない人からのどうでもいいメールに、なんて返事しようかと悩んでいるのでした。


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