四年ほど付き合っている彼氏との仲を尋ねられ、「別に変わらず」と答えたら、
 「どうしていまだにそんなに好きなの?」
 と、女友達はわたしにさらに尋ねた。
 銀座のオープンカフェ、なんて笑っちゃうくらい洒落た場所で、昼間から二人でビールを飲んでいるときのことだ。
 わたしはそれを聞いて、そんな質問をされる、ということにびっくりした。
 好きじゃなかったら付き合ってないだろう、普通。
 と、わたしは思ったが、すでに結婚し子供もいる彼女にとっては、「長い間一緒にいる異性に対し恋愛感情はなくなっていくものである」というのが常識のようであった。確かにこの年になると、こぞってさっさと結婚していった友人たちは、こぞって「離婚」を口にし始めている。実際離婚する人たちもけして少なくないし。
 わたしには結婚経験がないから、夫婦生活というものを本当に理解はしていないのだろう。たぶん、同棲を何度したとしても、それは「夫婦生活ではない」と、結婚経験者には言われてしまうものでしかない。
 でも、「結婚したから」生活を共にするうち恋愛感情が減ってゆくのだ、というのも変だ。
 長い間一緒にいたって恋愛感情はなくなるものではないと思う。それは、その相手と本人次第だ。
 などと、わたし的正論をはじめようと思ったとき、はたと気づいた。
 わたしは今まで、付き合っている男の人を嫌いになったことがない。それどころか、今でも全員好きだ。便宜上、社会道徳上、あるいは相手が望まないなどの理由で今は接触がないだけで、今だって会いたいと思うし、会ったら楽しいだろうし、会えたら胸がぎゅっと掴まれる感覚に囚われるだろう。
 友達関係においてもそうだ。一度「この人は大切な友人だ」と思ったら、滅多なことでは縁を切らない。縁を切る、なんて恐ろしい言葉だが、わたしの周りには簡単に人との縁を切ってしまう人が結構いる。前述の、一緒にオープンカフェで昼ビールを飲んでいる友人も、そういえばそうだ。
 わたしは一度好きになった人間は、たぶんずっと好きなんだと思う。
 恋愛においてはやっぱり「好き」だけじゃやっていけない、ということももう分かってしまっているから、別れたり、他の男の人に恋をしたりっていうのはこれから先もあるんだろうけれど。
 そのかわり、わたしは滅多なことじゃ人間を好きにならないのかもしれない。
 大切だと思える人のことは命をかけられるくらい大切にしたいと思うので、あんまり多過ぎると困る、とかいうのが理由かもしれないが。
 これから先、もしかしたら胸を張って「好きだ」と言える人は現われないかもしれない。
 だとしたらなおさら、今大切な人を大切にしたい。


編集部よりお知らせ
このWebマガジンの連載「愛の病」をまとめたエッセイ集『幸福病』(幻冬舎文庫)が好評発売中です! 前回の『愛の病』より時間を経て、カバーも内容も少し大人な感じになったのではと思っております! みなさん是非、御一読ください。




「好き」の長さ狗飼恭子オフィシャルブログ