引越しして二ヶ月になるが、まだ部屋が片付かない。
 行き場のない家具が寝室の真ん中に連立している。廊下にはダンボールが積まれている。「とりあえず」置いたはずのものが、生来の居場所みたいに、二か月も動かずにそこにいる。
 今現在これを書いているのも、仕事机の上ではなく、台所のテーブルの上である。
 台所のテーブルの上と言ったって、ダイニングテーブルというほどのものではなく折りたたみの小さな机だ。そこに、ノートパソコンと資料と辞書と文房具と読みかけの本と食べかけのチョコレイトが、山盛りになって載っている。
 どうしてこんなに整理整頓が苦手なのか、そう思うともう本当に落ち込んでくる。
 片付けていないわけではない。
 少しずつではあるが、ダンボールをあけたりしまったりしているつもりだ。
 だが自分を客観的に見てみると、ダンボールからダンボールへ物を入れ替えているだけのように思える。必要か不必要か分からない。どこに置くべきものか分からない。それでまた違うダンボールに詰める。「とりあえず」押入れの奥に閉まったものを取り出すには、その前にあるたくさんのものや家具を動かさねばならないから、片付けようとすればするほどさらに部屋は混乱していく。
 こんなはずじゃなかったのになあ、と、思いながらわたしは台所で仕事を続ける。
 新しい部屋に友達を呼んで鍋でもするつもりだったのに、いまやもう真夏日である。
 障害物や隠れ場所の多い部屋を楽しんでいるのは、一緒に住んでいる飼い陸亀だけである。
 ソファの裏をぐるりと廻り、雑誌の山を乗り越えるさまはなんだか楽しそうで、まあもうしばらくはこのままでもいいかな、などと思ってしまう。
 と、ここまで書いてふと髪を触ったら、今日もリンスを流し忘れていたのに気づいた。
 風呂に入ったのはもう四時間も前だ。
 わたしはどうも全体的に、きちんとできない性質らしい。
 だったらしかたないな、などという自分への甘さも、きっと性質なのだろう。


編集部よりお知らせ
このWebマガジンの連載「愛の病」をまとめたエッセイ集『幸福病』(幻冬舎文庫)が好評発売中です! 前回の『愛の病』より時間を経て、カバーも内容も少し大人な感じになったのではと思っております! みなさん是非、御一読ください。




性質の問題狗飼恭子オフィシャルブログ