男の人は、どうしてかみんな水族館が好きだ。
 そんなことないのかも知れないけれど、わたしが今まで親しくしてきた男の人の八十三パーセントが、水族館好きだった。体感として。数字は出鱈目。
 「どこに行きたい?」
 尋ねると、八十三パーセントが「水族館」と答える。
 わたしも水族館は結構好きなほうだけれど、「どこに行きたい?」と聞かれて一番に水族館とは答えない。どっちかっていうと、動物園のほうが好きだ。牧場とか公園の中にある小さな動物園でもいい。うさぎとかハムスターとか、触れるところ。水族館で触れる生き物は、ヒトデぐらいだ。イルカに触れる水族館に行ったことがあるけれど、別料金だった。室内だったら、博物館が好きだ。デートするなら、水族館に誘われるより博物館に誘われるほうが、ちょっとだけ多めに嬉しい。
 とにかく、男の人は水族館が特別に好きなような気がする。おかげでたくさんの水族館へ行った。東京周辺の水族館は、もう何度も。沖縄や大阪の水族館にも行った。
 どうしてだろう。そういえば、熱帯魚を買いたがるのも男の人が多いかも。ほとんどの女の子は犬を飼いたがる。わたしは、熱帯魚も犬も飼いたくないけれど。
 水槽=羊水のイメージ、だったりして、無意識に母性を求めている? とかそういう小難しい嘘くさい理屈は抜きにしよう。
 昔、「海と山だったらどっちが好き?」という質問を繰り返す男の人と会ったことがある。その人はどうしてか「山」と答えると嬉しそうな顔をした。この質問をするとほとんどの人が「海」と答えるから、らしい。あるとき気まぐれに「海」と答えてみたら、それ以来その質問をされなくなった。本当のとこ、べつにどっちでもいい。その男の人のことは好きでも嫌いでもなかった。
 「農村と漁村だったら、どっちに住みたい?」と、そういえば一昨日恋人に聞かれた。深い意味のない質問。わたしは「漁村」と答えた。わたしの母方の実家は農村にあるから、ある程度農村の実態を知っている。だから知らないほうに住みたいと思った。でも、実際には、どっちでもいい。わたしの部屋があるところなら、別にどこにだって住める。
 「水と土のどっちが好き?」という質問はされたことがないけれど、そう尋ねられたら、水、と答える。泳ぐのは好きじゃないけど、水に触るのは好き。洗濯機の中に手を突っ込んだり、お皿を洗ったり。そういう、近くにある水に触るのが好き。
 なんだかどうでもいい話。
 とにかく、男の人の八十三パーセントは水族館が好きなのだ。


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