仲良くなりたいものだと思っている男性の知人と珈琲を飲みつつ話をしていて、どうやら二人の間に共通点はないようだと気づいた。
 彼はスポーツが好きでサッカーや野球に詳しく、わたしにはさっぱり分からない。
 彼はクラシックに造詣が深く楽器もたしなむが、わたしにはさっぱり分からない。
 彼はアウトドアが好きで山や海を愛しており、わたしは自分の家の中が一番好きだ。
 かろうじて重なる映画好きという点では、好みの映画の方向性が違い過ぎた。
 これでは会話にならない。
 彼の話のほとんどすべてに興味のなさそうな顔をするわたしに、
 「一体趣味はなんなんですか」
 と、彼は笑顔で聞いた。呆れていたのかもしれない。
 趣味はなんですか。
 という質問を受けることは、結構あるものである。しかし、そのたびにわたしは困惑してしまう。本を読むことと映画を観ることが好きで、でもこれらは生活の一部で仕事の一部でもあったりするので趣味とは言い難い。舞台を観るのも好きだが、年々観賞数は減り、ひとに月一本くらいしか観ていない。その程度で趣味と言っていいものか、と、根が真面目なわたしは躊躇してしまうのである。それ以外の好きなことといったら、洋服や物を買うことだったりするけど、それは趣味というより「何かを買わなければ」という半依存症的強迫観念から来る部分が大きい。
 わたしにとって趣味の定義とは、
(1)どうしてか「それ」に長時間関わっていられる。
(2)「それ」を間髪いれず好きだと即答できる。
(3)毎日少なくとも三十分は「それ」をしている。あるいは「それ」について考えている。
(4)「それ」でお金を得ることは一生ない。
(5)むしろ「それ」を辞めたら家計が楽になると予測される。
 の五つ、である。
 この五つをクリアしなければ趣味とは言えないのではないかと思うのだ。
 わたしの思う趣味人は、ジグゾーパズルが好きな人とか、日本の名城めぐりをしている人とか、毎週末ハイキングに出かける人とか、意味もなく家庭でフランス料理フルコース作ってしまう人とか。わたしはパズルも城巡りもハイキングも料理すらしない。
 というわけで、わたしには趣味がない。
 趣味の定義の「それ」を気になる異性の名前にしてみると、それはそれで面白いということに、ふと気づいた。趣味の定義と恋の定義は、良く似ている。(5)は、特殊な場合のみかもしれないが。


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