最近なんだか異常に眠い。
 毎日十数時間眠っている。
 酷いときには、二十時間くらい連続で眠っている。
 すでに生活に影響を与え始め、仕事にも差しさわりが出始めた。
 お風呂に入ったり食事をしたり、日常の生活回りのことをするだけで大抵四、五時間は軽くかかるものだから、一日の「自由時間」は六、七時間しかない。その自由時間の間に、睡眠と生活に関わること以外のすべてを行わねばならない。これは非常に忙しい。仕事は締め切り直前のものを書き上げるのに精一杯で、精神的余裕がまったくない。精神的余裕がないと、新しい世界を生み出そうという気分にはなかなかならない。友達とは最近まったく会えない。恋人とデートもできない。買い物もしていない。映画を観るのが好きなので渋谷まで出て映画を観たりはするが、家に帰ったらすぐに眠る。打ち合わせはしないとならないから編集者には会うけれど、打ち合わせや取材のあった日にはそれ以外の仕事ができず、またこんこんと眠る。
 我慢すれば良いではないか、ときっと誰かが言うだろう。
 でも眠いのだ。たまらなく眠いのだ。我慢できないのだ。空腹も尿意も忘れ、ただただ眠いのだ。
 ろくに歩いていないし運動もしていないのに、なぜこんなに眠いんだろう。
 わたしは「疲れた」んじゃないかと、そこでようやく思いつく。
 小説を書いたりエッセイを書いたり脚本を書いたり、とにかくたくさんの言葉をつむぎながらほそぼそと生き続けてきた。ときには何かと戦ったり、苦しくても我慢して笑ってみせたり、吐きそうで吐けない感情を無理矢理飲み込んで未消化のまま見ない振りして。ものを書き続けるということは喜びや幸福以上に苦しみが伴う。書くことは好きだと笑って言えるけれど、作家であるということは、ただものを書くだけ以上のたくさんのことを要求される。ただ一枚、笑った顔の写真を要求されることすら、わたしにとっては大変な消耗なのだ。限られた時間内で、限られた文字数で、限られたテーマに沿って書くということ。名前を出して仕事をしている人にはなにを言ってもいいと思っている人たちの悪意。圧迫感。期待に応えねばという生真面目さ。利用されないように、なんて疑うことの淋しさ。
 疲れたんだな、わたし。
 と思うとなんだか妙に納得する。
 だからって書くのはやめない。
 ただ眠り続け、わたしはわたしの復活を待つ。


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