最近、鯉が可愛く見えて仕方がない。
 池だの結婚式場だの蕎麦屋の水槽だのにいる、あの鯉である。
 丸っこい頭とつぶらな瞳、そして特に口をぱくぱくとゆっくり開け閉めするところがたまらない。通りかかって鯉の姿を見つけると、しばらくうっとりと見つめてしまう。
 それから、鳥も可愛くて堪らない。丸っこい頭とつぶらな瞳、そして特にくちばしをぱくぱくとするところがたまらない。
 それから蛇も可愛い。丸っこい頭とつぶらな瞳、そして特に、
 とそこまで考えてはたと気づく。
 丸っこい頭とつぶらな瞳、そしてぱくぱくとする口(蛇はあまりぱくぱくしないけれど)。
 それらはすべて、わたしの家にいる飼い陸亀の、特徴なのである。
 つまりわたしは、
 飼い陸亀が可愛くて堪らない → 飼い陸亀の特徴を有しているものも可愛く見え始める → 鯉だの鳥だの蛇だのを愛しく感じる、
 という状態に流れ着いたようなのである。
 昔は蛇が、あんまり好きじゃなかった。タイで首に蛇を巻かれて悲鳴を上げた。けれど今のわたしは、蛇が可愛い。首に巻かれた蛇も愛せるだろう。飼い陸亀のおかげだ。
 「俺(わたし)、子供なんかぜんぜん好きじゃなかったけどさ、自分が親になってみて分かった。自分の子供だけじゃなく、すべての子供は可愛いよ」
 なんてよく聞く台詞の意味も、なるほどすごくよく分かる。
 そしてさらにわたしは気づいてしまった。
 「どうしてわたしの好きになるのはみんな駄目男なのだろう」
 という女の人たちの心理。
 彼女たちはたぶん、最初に好きになった男の特徴に、えんえん惹かれ続けているのだ。
 はじめての恋を経験するのは、だいたいみんな学生時代のことであろう。だから相手も学生であることが多い。
 まだ十代の男の子は大抵、子供っぽかったり、暴力的だったり、お金がなかったりお金の使い方が下手だったり、女の子を大切にする方法を分かっていなかったりする。
 ただ、大人になっても「子供っぽかったり、暴力的だったり、お金がなかったりお金の使い方が下手だったり、女の子を大切にする方法を分かっていなかったり」する人は、あんまり幸福な恋愛に向いていない。
 初恋の人の特徴を持った男ばかり愛しく見える彼女たちの恋愛は、だから、結果駄目な感じに終わってしまうのだ。
 これは、ものすごい発見のような気がする。
 陸亀と、子供と、いい男は、なるべく若いうちに近くに置くことが大切、ということ。
 情操教育は、早いに越したことはない。



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