携帯電話のディスプレイに知らない番号が表示されたとき、あなたはどうしますか。
  [1] 出る
  [2] 出ない
 の、二択な訳だけれど、わたしは、
  [3] 様子を見る
 というタイプである。
 そのまま留守番電話にメッセージを残してくれたならば問題はない。電話をくれたのが誰なのか分かる。安心してかけ直せばいい。
 でもメッセージを残してくれない場合、わたしがかけ直さない限り誰からの電話なのか分からない。なんの用事なのかも分からない。
 わたしは、ちょっと度を超えて電話が苦手だ。
 苦手というか嫌いなのである。できうる限り、電話で人と話したくない。電話で話すくらいなら、会って話したい、と思ってしまう。顔が見えない状態で人と話すのが、得意ではないのだ。
 だから誰からなのか分からない電話に出るのは、わたしにとって恐怖でしかない。しかも向こうはこっちが誰なのか知っているのだ。まったくもってフェアじゃない。
 そのため、せめて相手が誰なのか分かってから話がしたくて、[3]様子を見る、となる訳なのだけれど、これは、わたしのような仕事をしている人間にとってはあまりよくないことなのだろうな、と思う。
「××さんに紹介いただいて、お仕事の件で」
 という場合が、少なからずあるからである。
 それだけではない。
 わたしは、群を抜いて面倒くさがり屋なのである。
 友人知人から「電話番号が変わりましたので、登録をお願いします」というメールを貰っても、ほとんどの場合、登録し直しをしない。面倒くさいのだ。携帯を打ち直すのが本当に本当に億劫なのだ。だから、よく知っている人の番号すら、未登録の場合が多くある。好きな人たちからの電話かも知れないのに、わたしは電話に出られないでいる。
 誤解しないで欲しい。わたしは人に会うのが好きだ。人と話すのだって好きだ。
 ただ、知らない番号から来る電話が怖いだけなのだ。
 こんなに技術が進歩したのに、登録した番号しか名前が出ないっていうのはおかしいんじゃないだろうか、と矛先を他に向けてみる。メールみたいに、送る方の人間の名前を提示したって、構わないんじゃなかろうか。できないはずがない。やらないだけだ。携帯会社の怠慢だ。自分の怠慢は棚に上げ、携帯電話に文句をいいたい。
 今日もわたしの電話に、知らない番号から着信があった。
 けれどもわたしは電話に出られない。
 この番号は、ひょっとしたら大好きなあの人からかも知れない、出られないなんて本当に悲しい、そんなふうに思いながら。



編集部よりお知らせ
このWebマガジンの連載をまとめたエッセイ集『愛の病』『幸福病』(幻冬舎文庫)『ロビンソン病』(幻冬舎文庫)が好評発売中です! 是非、御一読ください。




知らない番号に出るか出ないか問題狗飼恭子オフィシャルブログ