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OL委員会とは約一万人のOLとOL経験者で構成されている娯楽団体である。五週間に一度、会員にアンケートをとり、その結果をまとめたものを会報にまとめるというのが基本的な活動内容だ。またそれらを編集した本も多数出版されている。
インタビュー場所に現れた清水ちなみさんはジーンズにトレーナーという軽快ないでたちだった。このあとはお仕事なんですか? と尋ねると、「友達の引っ越しの手伝いに行くんです」とのこと。
清水さんはいつも忙しい。そしていつも楽しそうだ。
娯楽団体OL委員会の主宰者として、日夜面白いことを考え続けている清水さんに毎日を楽しく過ごすための秘訣を聞いてみたいと思った。
――まず、OL委員会設立までの経緯を簡単にお話頂けますか?
OL時代に会社にいて仕事が隙な時に、学生時代の友達にファックスを送って遊んでいたんです。ファックスだと仕事しているように見えるじゃないですか。最初は変な絵を書いたり、待ち合わせ場所の地図を送ったりという程度だったんですが、ある日、なんとなく、「あなたの会社の上司は変なネクタイをしていませんか?」という質問とYESとNOという選択肢を書いたものを送ったんです。そしてその解答がまたファックスで返ってくる……。それがOL委員会の活動の始まりですね。結局、そのファックスアンケートを一週間で200人分集めたんです。それを出版社に持ち込んで始まったのが、週刊文春の「おじさん改造講座」でした。OL委員会といっても、もちろん初めはちゃんとした組織になんかなっていなくて、私が一人でやっていたんですけどね。
――仕事は暇だったんですか?
もちろん忙しい時もありましたが、基本的に私には向いていなかったんです。仕事はシステム・エンジニアだったんですけれど、私ってミスが多かったんです。誰も考えつかないような画期的なプログラムを作ることは得意だったんですけど、基本的なところがいつも抜けていて、結局仕事にならないという……。
――でも、なかなか仕事中に遊ぼうとはしないと思うんですが。
私はとにかく嫌なことはやらずに、楽しいことだけやりたい。この時間をどう工夫したら楽しく過ごせるのかと考えるのが大好きだったんです。
――それは子供の頃からだったんですか?
小さい頃からそうですね。私、本当に勉強が嫌いだったんです。で、嫌いと思ったものはやらなくてもいいんだ! という信念のようなものもありました。中学3年の初めまで、全然勉強していなくて、学校の定期テストでは、授業で聞いたことで覚えていることを書く、という感じでした。でもある日、受験勉強というのは学校の勉強とは少し違って、パズルみたいで面白いと気付いて、それから受験までの数カ月間、猛勉強をしました。その時初めて、「暗記」という概念を知ったんです。みんな試験前にブツブツと言っていたのは暗記しようとしていたんですね。私は授業で聞いて覚えていることしか知らなかったけど、みんなは頑張って暗記するんだなあ、と。
猛勉強の甲斐があって、無事高校に合格しました。でも「もう二度と勉強なんかしない」と入学式の日に決めたんです。すごく晴れた、空の青い日でした。
それ以来、本当に全く勉強しませんでした。授業も単位取得ギリギリの出席数を計算して、全教科きっちりそれだけしか出席しませんでした。たまに出席しても、お弁当食べてるか、寝てるかでしたね。当然成績は下がる一方で、先生からもよく勉強しろと怒られました。
――でも、怒られてもやらなかったんですよね。
そう。私、怒られるのはすごく嫌なことなんですけど、恐くはなかったんです。やりたいことを我慢したり、やりたくないことをやって、つまらない思いをするくらいなら、楽しいことだけやって、その後で怒られようと思っていたんです。
――それでも大学にも行かれたんですよね。
最初は「短大にでも行って、2年間遊べればいいや」と思っていたんです。でもある時気付いたんです。「4年制に行けば4年間も遊べるんだ、これはなんとかしなきゃ」と。
――先ほど清水さんがおっしゃった「やりたくないことはやるな」というのは、言葉としては非常に魅力的なんですが、実際そうしようと思ってもなかなか大変なのでは?
そうですよ。私は娯楽団体の主宰者なんかをやっていて、世間から「お前は遊んでばっかりでいいなあ」とか「いつも前向きだなあ」ということを思われがちなんですが、その人たちは、私がこれまでどれだけ怒られてきたかを知らないんですね。本当に怒られてばっかりだったんですから。
――最近、やりたいことがないとか、やりたいことがわからないという人が多いと聞くんですが、清水さんからそういう人たちに対するアドバイスのはありませんか?
やりたいことをはっきりさせるというのは、世間で言われるほど簡単なことではないと思うんです。私だって、何十年後はこういう大人になりたいとかいうことは考えていません。自分は何をやりたいんだろうと探すというのは不自然な気もします。それは、やりたいと思うというよりは、やりたいと決めるという感じですよね。
私に言えることは、やっぱり「やりたくないことは、やらなくてもいいんだ!」ということですね。たとえば「学校を休んではいけない」というのが常識的に言われていますけど、私、そんなことはないと思うんです。仕事だって行きたくなければ行かなければいい。そう考えて、実行してみると見えてくるものもあるような気がします。
就職先を決めるという時にも、私は仕事が面白そうなところはやめようと思っていたんです。仕事は労働を提供して、ギャラをもらうことだと割り切って考えていたんです。もし、仕事が面白かったら、私、ずっと会社から出られなくなって、自分の時間が全くなくなってしまうんじゃないかって恐かったんです。だから、やりがいなんか全然考えませんでした。
将来に悩んでいる人がいたら、こうしなくてはいけないという常識から、一度自由になってみるというのはいいかもしれませんね。
――清水さんがOL委員会としてこれからやっていきたいことってどんなことなんでしょう?
細かいことならいろいろあるんです。OL委員会の会員のみんなで競馬場を走ってみたいとか、「よいではないか」をやりたい。
――「よいではないか」って……。
昔、江戸時代とかに、お殿様が生娘に向かって「よいではないか」と言いながら襲い掛かり、帯を引っ張ると娘がクルクルまわるというのがありますよね。あれが「よいではないか」です。今、会員の皆さんにそれにぴったりな旅館があるかを探してもらっているところなんです。くだらないけどすごく楽しそうでしょう。
――確かに楽しそうですが、清水さんはいつもそういうことを考えていらっしゃるんですか?
ええ。なんか思いついたら、すぐにメモするようにしています。
――話は変わりますが、幻冬舎から『サルでもできる家事いっさいがっさい』を出させて頂いてますが、僕も含めて、家事なんて面倒でつまんないから、やりたくないという人が多いと思うのですが、これをなんとか楽しくする方法ってないでしょうか?
ある種の人たちにとっては、家事は苦痛でしかたないことだと思うんです。でもそれも、こうしなきゃいけないというところから自由になることによって変わってくると思うんです。家事というのは体系的に研究されたことがないんですね。今ある家事の本のほとんどが、すごく熱心に、時間をかけて家事をやってきた人が考え出したテクニックが基になっていると思うんです。でも実際は、子供もいれば、仕事だってあるから、家事だけに時間をかけられないじゃないですか。それで、できない人ほど、本でも読んで勉強しようとして、ああこんなこと私には無理だと思うんです。
――確かに、家事というのはちゃんと学術的に研究されていませんよね。一般的に言われていることが、果たして本当に正しくて、効率的なのかどうかは分からないかもしれません。
そうなんです。たとえば床を掃除する時に、隅にある家具をどけて、部屋の隅々のほこりも取らなければいけないというのが一般論だとしますよね。でも一方では、露出されているところだけきれいになればそれでいいという人もいるんです。これはこれで否定されるべき考え方ではないんですよ。
とにかくなんでもありなんだと思うことで、大分気持ちが軽くなるんじゃないでしょうか。
毎日を楽しくするには、ちょっとした発想の転換が必要なんだ、と清水さんのお話を伺い、改めて思った。
もちろんその発想の転換が難しいのだが、いつまでも難しいといっていては何も始まらない。難しいと思ってしまうことから、壊していかなければ。
一生は一度。どうせなら楽しい方がいいに決まっている。
清水ちなみさんはいつも楽しそうで、いつも輝いている。
中西哲生 プロフィール】
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