特別著者インタビュー
中原昌也

Masaya Nakahara Interview


 今号の巻頭著者インタビューは、ノイズ・ミュージックの権化“暴力温泉芸者”改め“ヘアスタイリスティックス”こと中原昌也さんです。ミュージシャンとして活動する傍ら、作家としての執筆活動を始めて3年。暴力的にナンセンスな短編集として好評を博した『マリ&フィフィの虐殺ソングブック』『子猫が読む乱暴者日記』(ともに河出書房新社)以後ナリをひそめていたが、ついに長編小説『樹海の虎 ワイルド番外地』をひっさげてウェブマガジン幻冬舎に登場! はたして、無事に連載終了して本にすることができるのか? その意気込みをビストロ気楽亭(東京都世田谷区)でスペシャルビーフカレーを食べながら担当編集者が聞いてみた。


――最近なにしてるんですか? ちゃんと書いてるんですか?


書いてますよ、一生懸命……ハタから見るとただ遊んでいるように見えるのかもしれないけど。本もたくさん読んでますしね。

――読むばっかりですか……。

なんだよ、もう、嫌味だな。書くってば。……風呂に3時間入るようになったんですよ。風呂の中で本を読んでるんですけどね。まだ湯の中に落っことしたことはないですよ(笑)。

――あちこちの記述を見ると「金がない」っていつもぼやいてますよね。

ホントにない。家賃も2カ月分ためちゃってるしなぁ。今月もいっさい入金ナシ。毎日銀行に電話して、残高調べてますよ……なんか振り込まれてないかなって。最近はね、プッシュホンで残高調べられるんですよ、僕は富士銀行ですが。たまにね、機械が応答するんじゃなくて、人が電話に出て『いつも御世話になっております。今月は5日以降入金はございません』なんて言われてね、すごく頭にくるんですよ。分かってるよ、知ってるよって。

――知ってるんなら電話しなきゃいいじゃないですか。

ははは……。

――今回始まった初の長編小説『樹海の虎 ワイルド番外地』は大丈夫なんですか? 長編は初めてですよね。話はだいたいの流れができてますか?

まあ、だいたい……どうなるんですかねえ、自分でもよくわからない。普通、作家って「これはエンターテイメント小説」「これは純文学」って書き分けたりしてるんですかね?

――ん……してないんじゃないですか? 特定の賞を狙ってる場合はそれを意識したりはするでしょうけど。

ふぅ〜ん、まあ、賞なんてどうでもいいしな。名誉はいらないから、金がほしいなあ。

――金が欲しいなら『売れる小説』を意識してみるってのはどうですか? 何が売れるかって分かってたら苦労はないんでしょうけど。

ギャグでは『売れる小説』を書いてみようって思ったりはしますけどね。僕が、俗に『売れるモノ』ってのを好きだったら良かったんですけどね。基本的にぼくは『大衆』って嫌いですからね。だから素直にそういうことができないんですね……。特にそんな技術もないんですけど。ははは……。

――でも、だから今月も入金ゼロなんでしょ?

そうだけどさ、だからってそんな媚びたことするんだったら、バイトした方がマシですよ。いつも言っているように、書くことって嫌なことなわけで、バイトも執筆も同じ嫌なことなら、どっちか楽な方(バイト)を選びますよ。他の作家は単に職業意識で書いてるんですかね、それともちゃんと書きたいことをしっかり書いて売れてるんですかね……?

――……ん……、売れる、売れないは別としても、書きたいことしか書けないもんじゃないですか?

でも、信じられないほど、小説がくだらなくなってるでしょ? バイオレンスって言えば、みんなタランティーノのパクりみたいなので、ホラーって言えばS.キングみたいだし。なんか僕なんか『生きるな』って言われてるようなもんですよ。

――そんなことないでしょ。

そうだって。名前はそこそこ浸透してるけど、それだけで生活できないんだから、東京じゃ。もう、日本にいたくないよ。やりたいこと全て金にならなくて、もういったい何をしたらいいか? って言ったら、廃業してすぐバイト生活。

――でもアーティストでしょ?

まあねえ、金にならないことをやらされてるってことではアーティストかな。まあ、僕の作家活動を辞めさせたい人がいたら、割のいいバイトを紹介してくれれば、すぐ辞めますよ。お金があるときは、バイト情報誌とかちゃんと買ってますもん。

――どんな職を探してるんですか?

できそうなやつ。

――……話を変えましょうか。書いてるときって、映像とか見えてるんですか? 映画評論とか書いているだけあって、映像化を夢みていたり?

いいえ、ぜんぜん考えてないですね。むしろ僕は文章の中でしか存在し得ないような風景に憧れているから、そういうのを書こうとしているんですけどね。あと、よくミュージシャンが文章書くと「文章の中に音楽が流れてる」なんてことを言われますけど、僕の場合はまったくそんなことなくて、別の仕事としてやってますからね。ま、どちらもいい加減な態度で臨んでるっていう点で共通点があるわけだけど(笑)。

(黙々とカレーを食べ続ける)

僕、不眠症なんですよね。一時期は薬を飲んでましたけど、今は飲んでないから3時間くらいしか眠れない。そういうのも仕事がはかどらない理由なんですよね。

――へぇ……。

それだけ?

――嘘なんですか?

いや、ホントだってば。

――へぇ……。

要するにね、僕の書くモノっていうのは、“抵抗”なんですよ、大衆に対する。“表現”なんてものじゃなくてね。一生マイノリティ。なんだかなぁ……。













中原昌也略歴

 1968年11月11日兵庫県生まれ。中学時代から自主映画を撮り始め、それをきっかけにガイナックスに出入りする。87年『ダチ』でフジテレビヤングシナリオ大賞に佳作入選(ちなみにこの時の大賞は野島伸司氏)。95年初めての詩集『月のナイフ』、97年『シンプルライフ・シンドローム』を自費出版。阪神間でベストセラーを記録する。98年2月から自主映画『シンプルライフ』を撮り始め99年10月完成。
 2000年8月幻冬舎より改筆版『シンプルライフ・シンドローム』発売。また、映画も9月より東京・大阪で公開が決定している。

http://www.kh.rim.or.jp/~sumishi/

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