借り物ワールドカップ2000





 突然だけど、引っ越すことになった。
 ということで、今回は『買い物ワールドカップ2000』ではなく、『借り物ワールドカップ2000』なのだ。
 引っ越すからには当然理由がある。部屋が狭いのだ。最近書くほうの仕事も頂いているので、机も欲しい。ちなみに家で執筆しているときは、無印良品のコタツ机の上にパソコンを置いて、座布団に座って原稿を打っている。それでは腰も痛いし、姿勢も悪くなるので、そろそろ限界を感じてきた。さらに今年31歳にもなって、たしかにサッカー選手ではあるが、将来ずっとそうしていられるはずがない。サッカー以外の仕事のパフォーマンスを上げるためにも、少し広いところに引っ越すことに決めた。なぜなら、パソコンを打つのも、テレビやビデオを見るのも、ゴハンを食べるのも、そして寝るのも、ワンルームなのですべて同じ場所なのだ。そうなると原稿を打つまでに、それ以外のことばかりしてしまって、肝心の仕事がいっこうに始まらない。要するに集中できない、他の誘惑にすぐ負けてしまう弱い人間なのである。
 僕は子供の頃からずっとマンション暮らしなので、一軒家にはまったく興味がない。よって探している物件はマンションだ。そんな僕が引っ越すに当たって、不動産屋さんに出した条件は、間取りが2LDKの50F以上の広さで、新築もしくは築浅(完成してからあまり年月の経っていないもの)ので、部屋の位置が最上階の角部屋で、日当たりが良くて、フロントオートロックシステムが付いていて、お風呂とトイレが別々(つまりユニットバスがダメ)で、洗濯機が室内に置けて、浴室内乾燥機が備え付けられていて、駅から徒歩3分以内で、敷地内の駐車場があって、留守番ロッカーが付いていて……、だいたいこんなところかな?
 さらに説明を付け加えると、間取りは寝室と仕事部屋が欲しいので、当然2部屋必要である。新築もしくは築浅については、当然キレイな方がいいから。部屋の位置が最上階の角部屋は、だいたいマンションの物件って、そこに一番いいタイプのモノがあるから。日当たりは、僕が猫(つまり陽だまりが好き)なので。オートロックは安全のため。お風呂とトイレが別々なのは、ユニットバスだと清潔感がなくなると思うから。洗濯機は外置きだと、近所迷惑なので夜洗濯できないからイヤだ。浴室内乾燥機は、最高だから! と書いても、使ったことがないひとは分からないか。とにかく最高、カビが生えにくいし、雨でも普通の乾燥機よりも早く洗濯物を乾かせるし、冬シャワーを浴びる前に寒くないし、まだまだ良いことが一杯ある。皆さんも是非!
 駅から近いのは、僕にとってかなり重要である。なぜなら電車のヘビーユーザーだからだ。イオカード(JRの自動改札に直接出し入れできる)の3千円分カードや、パスネット(関東地域の私鉄がほとんど切符なしで乗れる、超スグレモノ)の5千円分カードも常に携帯しているぐらいである。駐車場は、雨の日などに車まで歩いて濡れるのは避けたいので、敷地内に是非欲しい。あと留守番ロッカーも超便利な一品だ。ひとりで住んでいるひとにとって、宅急便を受け取り損ねてもう一度配達を頼むことほど面倒臭いことはない。それをすべて解決してくれるのが、この留守番ロッカーだ。不在でも、配達人がそのロッカーにモノを入れてくれれば、あとは暗証番号を入力して、カードを読み取らせればすぐに取り出せる。
 こんなことを書いていると、読者の皆さんから「わがまま!」とか、「そんな物件あるか!」とかツッコミが入りそうだが、今年で31歳の僕としては、住む部屋とお付き合いするの女性については(?)については厳しくいこう! と固く心に誓ったのでしょうがない(訳分からないけど)。
 しかしだ、それをすべて満たす物件があったのだ! しかも新築で、しかも駅から30秒だ。
 僕が仲良くして頂いている不動産屋さんに、以前から「そんな物件があったら教えてね」と頼んでおいたところ、建築中のそのマンションの前を通ったので、すぐ電話して「分譲マンションができるの?」と聞いた。すぐに調べてくれて、「賃貸らしいよ、結構いいかもしれない」となり、極秘に設計図などを入手してリサーチしたところ、すべての条件を満たしてしたため、入居者募集の前にむりやり予約を入れてもらったのだ。
 しかし今度は別の問題がふたつ発生した。ひとつは現在住んでいるマンションを、契約切れのため11月末日で退去することに決まっているのだが、新しいマンションの完成は12月の末だということ。もうひとつはお金がないこと。「ないなら引っ越すな!」と言われそうだが、別にぜんぜんない訳じゃない。自分のポリシー(バックナンバー第1回参照)を貫いているために、まとまったお金、つまり貯金がないのだ。ご存知のとおり新しい物件を借りるには、敷金、礼金、仲介手数料、最初の1ヶ月分の家賃など、普通家賃の6ヶ月分ぐらいのまとまったお金が必要なのだ。さらに引越し代もかかるのである。
 さてどうするか? あんなとんでもない条件の物件だから、読者の方も家賃が安くないのは想像できるだろう。だからお金を作ることした。自分の持っているもので、まとまったお金になりそうなものを売って、お金を作るのだ。
 車を売ることにした。
 しかも2台あるのではなく、たった1台の超お気に入りを売るのである。車は僕の所有物の中でも、こだわり度ベスト5に入るぐらい、こだわっているモノだ。名前は1996年式メルセデスベンツAMGのC36というモノで、車に興味のないひとには分からないかもしれないが、車好きには名車と言われていて、あらゆる面で僕にとって完璧な車(車についてはキリがないので、また別の機会に)なのだ。新車当時の価格は1000万円! である。これにはかなりの迷いがあったが、売ることにした。自分の仕事のパフォーマンスを向上させるには、車を所有するより、引っ越すことの方がいいと考えたからだ。
 車を手放しても僕には、大好きな電車があるので大丈夫だ。しかし自動車屋さんや車買取センターさんに売るのは抵抗があった。せっかくこだわって大事に乗っていたモノだから、せめてその価値を分かる僕の知っているひとに乗ってほしいと思った。そして幸いにもその車を欲しがっている車好きの友人がいたので、そのひとに売ることができるようになった。良かった、良かった。
 これでお金がないという問題は解決したが、もうひとつ問題が残っている。1ヶ月間いったいどこに住むのか?
 続きは次号『借り物ワールドカップ2000 PART2』で、お楽しみに!







お気に入りの車。もうお別れです。
お気に入りの車。もうお別れです。


現在のマンション。
現在のマンション。
狭いし、引越し前なので、ごちゃごちゃ。



今度のマンション。
今度のマンション。ご覧のとおり工事中。






1969年愛知県生まれ。同志社大学経済学部卒業。名古屋グランパスエイトを経て、川崎フロンターレへ。勝利への並外れた執着心と、闘志剥き出しのプレースタイルで、観客を魅了する。また持ち前の明るさとリーダーシップで99年はチームのキャプテンとして、JI昇格、優勝に大きく貢献。

昨年末、小社よりJ1昇格までの軌跡を綴った『魂の叫び J2聖戦記』(金子達仁氏/戸塚啓氏と共著)を刊行。文章が書けて、しかも喋れる、マルチなサッカー選手を目指している。

この連載で伝えたいのは「こんなに買ってるぜ!」ということではなく、「なぜ自分は買わなければいけないのか」という人生哲学である。

<中西哲生オフィシャルホームページ>