誰でも持っているクレジットカードだが、意外とその仕組みを知っている人は少ない。 今回と次回は、ふつうの人にも役に立つカードの使い方を紹介する。
簡単に説明するならば、クレジットカードは次のようにできている。
あなたがどこかの店で1万円の商品を買ったとして、レジで1万円札を差し出すとする。当然、店にはその場で1万円の現金が入る。
では、あなたが現金のかわりにクレジットカードを出したらどうなるだろう? 店とカード会社との契約にもよるが、たいていは「月末締め翌月20日払い」のような条件になっているので、売上の1万円は1ヶ月以上待たなくては店の口座に入金されない。
そのうえ、実際に入金される金額は9,500円だったりする。売上の5%にあたる500円は、手数料としてカード会社に差し引かれるからだ(この手数料率は、当然、店とカード会社の力関係によって決まる。量販店なら3%前後だし、小さな店では6%以上とられることもある)。踏んだり蹴ったりとはまさにこのことだが、ただし、利用者の口座に残高がなく、1万円が引落とされなくても、カード会社の支払い義務は免れない。店がカード会社に支払う手数料は、確実に売上を回収するための保険料でもあるのだ。
カードと現金を比べるならば、店としては、当然、できるだけ現金で支払ってもらいたい。1ヶ月待って9,500円しか入金されないなら、その場で5%割引いて、9,500円の現金を受取った方がずっと有利だからだ。
こうした仕組みを知っている客は、「現金で払うからちょっとマケてよ」と交渉したりする。店とカード会社との契約で、現金払いの客だけを優遇することはできないことになっているが、こっそり値引きに応じる店もあるから、やってみる価値はある。
一方、カード会社は、「月末締め翌月10日払い」のような条件で、カード利用者の銀行口座から利用額1万円を引落とす。そこから店に9,500円を支払うと500円の利益が残る計算になるが、実は、そう簡単にはいかない。カード利用者の口座からの引落とし手数料や、店への振込手数料はカード会社が負担するからだ。
さらに、カード業界も生き残りをかけた熾烈な過当競争に突入しているから、利用者を獲得し、利用額を増やすためには、ポイント還元などの付加価値に力を入れなくてはならない。カード利用者への還元の原資も、当然、500円の手数料をあてるほかない。
さらには、利用者から回収できない金は、すべてカード会社が負担することになる。これは要するに丸損であるが、昨今の不況でカード破産者が増えた影響でこうした個人版「不良債権」が積みあがり、各社の収益を大きく圧迫している。
そう考えれば、カード会社というのは、実は非常に利益率の低い業態だということがわかる。実際に、たんにカードを買い物に使ってもらうだけでは、どこも利益をあげられなくなっている。
ではここで、クレジットカードを利用する際の原則を教えよう。それは、とても簡単なことだ。
1)カード会社が儲からないことは、利用者にとって利益である。
2)カード会社が儲かることは、利用者にとって損である。
このふたつのことさえ知っていれば、あとは応用問題ですべて解ける。
通常のショッピング・クレジットでは儲からなくなったカード会社は、現在、分割払い(リボルビング)とキャッシングに力を入れている。ここまで読んだ方ならば、その理由はすぐにわかはずだ。
あなたが、「月末締め翌月10日払い」のカードを使っているとする。6月1日に1万円の買い物をすれば、締め日は6月30日で、あなたの銀行口座から1万円が引落とされるのは7月10日だ。これは要するに、40日間、1万円を無利子で融資されたことと同じである。あなたのショッピング枠が100万円で、6月1日に100万円の買い物をすれば、当然、この100万円も40日間、無利子で融資される。量販店などが「ボーナス一括払い」のキャンペーンをやっているが、この場合は、無利子の融資期間は最大半年まで延長される。
今のような低金利時代では実感がないかもしれないが、短期間であっても、無利子・無担保で100万円の融資が受けられるというのはベラボウな好条件である。仮に普通預金の金利が5%なら(想像できないだろうが、これがふつうの金利水準だ)、40日間銀行に預けておくだけで5,000円以上の「運用益」が得られる計算になる。それが半年なら、なんと2万5,000円の利益が生まれる。
まずは常識として、自分の持っているカードの締め日と支払日を確認しておこう。そして、来るべきインフレ・高金利時代にそなえ、高額の買い物はできるだけ締め日の直後にする習慣をつけておくことだ。
一回払いのショッピング・クレジットが無利子・無担保の融資であるのに対し、分割払い(リボルビング)やキャッシングは、同じ無担保ながら、とてつもない高利の融資である。
カード会社によっても異なるが、分割払いの場合の実質年利は15%前後、キャッシングになると、その実質年利は出資法の上限である29.2%に限りなく近づいてくる。まさに、天国と地獄の違いである。
「分割払い(リボルビング)を使えばポイントが2倍!」などというキャンペーンをやっているカード会社もあるが、支払うことになる金利を考えれば、そんなもの何の役にも立たない。
ここから、クレジットカードは常に一回払いにする、という当たり前の原則が発見できる。
この超低金利時代に、もっと安い金利で金を借りる方法はいくらでもある。100万円程度の借金で3%以上の金利を払うのは、金をドブに捨てるようなものである。
カードの利用明細といっしょに送られてくる保険や旅行・通販などの案内を利用するかどうかは好き好きだろうが、個人的にはこれもあまり勧められない。
生命保険などは、カード利用者向けの団体割引レートが適用されているから、個人で同じ保険に加入するよりも保険料が安く設定されている。だが、カード会社が保険の紹介をするのは販売手数料目当てだから、そのコストが保険料に上乗せされ、結果的に、通販系の保険や共済に比べて割高になっている。その気になって探せば、同じ保障内容でもっと費用の安い商品はいくらでも見つかるはずだ(そもそも保険などに入る必要はないという議論もあるが、それは本題ではないので置いておく)。
旅行にしても、通販にしても、販売金額の一部が手数料としてカード会社に支払われるのは同じこと。カード会社が発行する会員向け豪華雑誌に出てくる商品など、雑誌の制作コストまで商品価格に上乗せされている。こんなもの、相手するだけ時間の無駄だ。
次のポイントは、年会費である。
自分の店で使うだけのハウスカードならともかく、一般のクレジットカードは、VISAやMasterなどの大手クレジット会社と提携していなければ相手にされない。ところが、この提携にも金がかかる。それを賄うのが年会費で、だいたい一利用者あたり2,000円程度の年会費を徴収しなければ帳尻が合わないとされている。
だが、たいして利用しないカードに年間2,000円も払ってもらえるような甘い時代はとうに過ぎ去ってしまった。少しでも無駄だと思われれば、さっさと解約されてしまうだけだ。
そこでカードの年会費は1,500円、1,000円と徐々に下がっていき、ついには年会費無料のカードまで登場してきた。VISAやMasterをつけるコストを、販促費としてカード会社が負担するのだ。
この戦略でもっとも成功したのが
セゾンカードで、その結果、
GEカード、
GCカード、
ASCOTカード(アコム)、
NTTカード、
ライフカードなど、知名度の低い新興のカードは入会金・年会費無料が当たり前になってきた。
複数のカードを保有して、いざという時のために与信枠を広げておきたいのなら、こうした年会費無料カードを揃えておくべきだろう。ただし、カードの合計与信枠は他の金融機関でも簡単に調べられるから、無限に増やせるわけではない。
一般にカード会社の与信枠は年収の半分程度が上限だが、キャンペーンなどを上手に利用すると、年収くらいまでは簡単に到達できる。年収500万円の人が、500万円のショッピング・キャッシング枠を持っていれば、何が起きても1年は家族を食べさせていける、という安心感が生まれる。年会費無料のカードならコストはかからないから、それほど悪い話ではない。
ただ、持っている与信枠が大きすぎると、銀行から融資を受ける際などに障害になることもある。住宅ローンを組む時に、銀行から「使っていないカードをすべて解約してください」と言われた人もいるはずだ。
では、年会費が必要とされるカードには意味がないかというと、そんなことはない。当たり前の話だが、年会費を上回るメリットがあればいいからだ。
こうしたメリットとしては、大きくふたつ挙げられる。
ひとつは、ポイントの還元率。もうひとつは、旅行傷害保険などの保険機能だ。
クレジットカードにおけるポイント還元というのは非常に興味深いテーマなので次回に回すとして、ここではカードの保険機能について触れておこう。
一般に、4泊5日程度の海外旅行に必要とされる旅行傷害保険(死亡保障3,000万円、治療・救援費用1,500万円、賠償責任1億円など)に個別に加入すると、5,000円程度の保険料が必要になる。だが、ふつうはこんな手厚い保険は必要ない。仮に海外で病気になって手術・入院したとしても医療費は100万円もあれば十分だし、賠償責任が発生するケースのほとんどは運転中の事故だろうが、これは車を借りる時に加入する保険でカバーされている。
そう考えれば、
シティバンクカード(死亡保障3,000万円、治療費100万円など)、
三井住友VISAカード(死亡保障2,000万円、治療費50万円、賠償責任2,000万円など)のように、一般のカードに旅行傷害保険が組み込まれているものを利用すれば、カードの年会費だけで必要な保障を賄うことができる。年に1回、海外旅行に出かける人なら、年会費を払っても十分元がとれる。
年会費1万円以上もするゴールドカードに、「保障が手厚い」という理由で加入する人がいるらしいが、これはまったくの無駄。
たしかに、カードについている旅行傷害保険の場合、死亡保障の保険金額は合計されない(複数のカードに旅行傷害保険がついている場合、その中の最高額が上限)。一般のカードなら、死亡保障3,000万円が限度だろう。だが、それ以外の治療費や携行品損害などの保障は合計されるから、保険金殺人を計画しているのでもないかぎり、旅行傷害保険のついたふつうのカードを1枚か2枚、持っているだけで充分だ。
ただひとつだけ、注意しなければならないことがある。
ここで紹介したシティバンクカードも三井住友VISAカードも、一般カードの場合、旅行保険が適用されるのは、旅行費用(ツアー料金や飛行機など交通機関の料金)の一部をそのカードで支払った場合に限定されている。ほとんどの人はこのことを知らないので、いざ保険金を受取ろうとしても断られるケースが多発していると聞く。
こうした方針を非難する人もいるが、それは筋違いだろう。反面では、厳しい制限をつけなければ帳尻が合わないくらい、年会費に比べて保障内容が充実しているということだからだ。
そうなら話は簡単。旅行費用の一部を、カードで払えばいいだけだ。
といって、わざわざツアー代金や航空運賃の支払いにこれらのカードを使うことはない(詳細は次回に譲るが、別のカードを使った方が得をする場合が大半だからだ)。
ではどうするか?
いずれのカード会社でも、自宅―空港間の費用を旅行代金の一部として認めている。ということは、たとえば東京―成田空港間のリムジンや成田エキスプレスの代金を、あらかじめこれらのカードで支払っておけばいい。ちょっと面倒だが、行きの切符をシティバンクカード、帰りの切符を三井住友VISAカードで払えば、両方の保険が有効になって、わざわざ高い旅行傷害保険に入ることなく安心して旅行に出発できるのである。