
伊豆にて、お友達そしてスタイリストの関さんと。早朝ロケにもかかわらず、元気な私たち。伊豆の空気がよいのか、温泉がよいのか。
|
 撮影スタッフの方々との食事風景。パワフルな人ばかり。伊豆は魚が新鮮でおいしかった。
|

撮影の合間のメイク直し。この日は強風だったのですぐに髪が乱れてしまい、メイクさんを困らせていました。
|
|

|
2003年3月○日。
早起き。
まだ、うす暗い午前4時半。
こんな時間に、私はしゃっきりと目を覚ました。
春になったとはいえ、まだまだ寒い。
私はいそいそとシャワーを浴び、身支度をととのえる。
猫たちはいない。
昨日から病院に預けているのだ。
犬の花は、大喜び。いっときも私のそばを離れない。
そりゃあ、そうだ。
花にとって一世一代のイベントが、はじまろうとしている。
私と花の一泊二日の伊豆旅行。
雑誌の取材である。
それでこんなに朝早く出発なのだ。
まだまだうす暗い住宅街を、花と二人、迎えに来てくれたロケバスに向かう。
今日ばかりは、花が主役だ。
わたしはこれから起こるであろう、へとへとになるであろう出来事たちに、少しだけ気が遠くなる。
花は、5月で2歳になる、ラブラドール犬だ。
今でこそ、基本的な号令を聞き分け、事あるごとに私の顔をじいっと見て、判断を仰ぐようになったものの……。
1歳になる頃までは、まるで小さな怪獣だった。
小さな体に大きなエンジン。
まるでチョロQのように走り回るチョコレート色の物体に、私は何度途方にくれたことであろう。
何しろ、いっときも、じっとしていない。トイレを覚えない。
何もかもに興味を持ち、突進する。
可愛い、なんて言っていられるのは、彼女が寝ているときくらいで、冗談ではなく、私は毎日泣いていた。
手に負えないほど元気、ってこういうことか。
軽い気持ちで飼ってしまった自分への戒めだと、ホントに思った。
だけど、飼い主と犬との信頼関係が徐々に生まれてくると……。
驚くほど急激に、花はいろんなことを理解し始め、人の気持ちを読むようになっていった。
それはもう、まるでスポンジが水を吸い込むように。
今こうして、体重27キロの成犬になった花を見ていると、時間が流れるということの素晴らしさを感じる。
しかも今日は、花が主役の取材旅行。
まるで娘を嫁に出すような、母の気持ちだ。
花に対して、私は、自分のことを「おかあさん」と呼ぶ。
それ以外の関係が思いつかない。
賢くなった、とはいえ、まだまだ2歳のラブラドール。
しかもかなりのラテン気質なので、ちょっと甘い顔をしたり、ほったらかしておくと、瞬く間に、大暴れし始める。
救いなのは、親ばかのようだが、性格の良さだ。
何しろ、まったく、と言ってよいほど、攻撃心がなく、絶対に吠えない。
人間も動物も大好きで、心優しい。
花の顔はいつも笑っているように見える。
だから、花は、誰とでも仲良くなる。
フレンドリーすぎて嫌がられることはあっても、花が相手を嫌がるのを私はいまだに一度も見たことがない。
花の好きなおやつ、いつも食べているドッグフード、水入れ。リード。ペットシーツ。
そして私の、一泊二日分の小さな荷物を持って、ロケバスで大移動だ。
伊豆の下田に、犬も泊まれるという老舗の旅館があるそうだ。
今日はそこに泊まる。
温泉も、もちろんある。楽しみ。
伊豆の旅、と銘打っているために、意外にたくさんのポイントで撮影をする。
常にたくさんの大人たちに囲まれ、しかもちやほやされるので、終始ごきげんの花。
私は、ほうっておくとすぐに調子にのる花を戒める係ともいうべき、立場だ。
カメラマンの須藤夕子さんは、動物や子供達を主に撮っている方。
彼女の写真を見て、私はふと思う。
写真には、撮る側の心と、撮られる側の心がそのまんま映ってしまうものなんだなあ、と。
彼女は心でシャッターを切る。
形や、マニュアル以前に、あっ、可愛い、と思ったその瞬間、シャッターを押す。
白浜の海岸の白い砂についた、花の足跡や、私と花の後ろ姿。花を撫でる私の手。
顔なんて全く映っていなかったとしても、撮る側の心の動きが、そのまんま映る。
須藤さんが思ったまま、映る。そして撮られる私の心も、映る。花の心も。
それは全く理屈抜きだ。感じるとしか言いようのないものだ。
写真は面白い……。いつもそう思っているけど、今回改めてそう思う。
旅館は、大正時代からあるという老舗の温泉宿だった。
何故か、大型犬が泊まれる部屋と、小型犬用の部屋と、一つづつあった。
私が泊まった大型犬用の部屋は、いわば、離れのようになっていて、専用の玄関がついている。
そこから犬は出入りする。
私は、犬が泊まれるくらいなので、部屋はフローリングなのかと思っていた。
しかし、まったくの一般的な畳の部屋で、少し驚いた。
そこに、花専用の大きなケージを入れて頂き、花はその中で眠る。
なんだか不思議だった。需要と供給、というか。
今の時代の、空前のペット・ブームがこのような旅館を生んでいるのだろうか。
だけど露天の岩風呂にも入ったし、食事も大変美味で、幸せだった。
温泉は、どうして、それだけであんなに、幸せなのだろう……。
2日目の最後に行った白浜海岸。
真っ白なさらさらの砂浜を、花は、野生の馬のように走った。
はじめて海というものに行き、波と戯れ走る花を見て、ああ、大変だったけど本当に来て良かった、と思った。
花は……、いや、動物は、絶対に、私より先に逝ってしまう。
そのことを考えると、身の毛がよだつほど怖い。
だけどこの無償の愛を私に与え続けてくれる花の一生を振り返ったとき。
どこを切り取っても、幸せだったと思えるようにしてあげたい。
私は仕事柄、留守番も強いるし、いろんな意味で花にとってベストな状況ではないと思う。
だけど、母として飼い主としてできることは、絶対に投げ出さずに花と一緒にいることだ。
花。いたらない母だけど、これからもよろしくね。
そんなことを深く思った、一泊二日の旅でした。
おやすみなさい。良い夢を。

|