第11回
店でお豆の販売をしながら、お客さんと会話する時間は
私にとってすごく楽しいひとときです。
何でもないような日常会話や、珈琲の説明。
たまにこちらが「えっ?」と
ビックリするような話をされたりもします。
普段から珈琲が身近にある人間には「当たり前」の事でも
知らない人にとっては「そうではない」
という事がありますよね。
ついつい忘れがちになるこの感覚。
接客は、ただ品物を売るというだけでなく
私にとっては色んな発見の時間でもあるようです。

今回はそんなエピソードと、
お客さんからよく聞かれる質問を、
Q&Aの形でお話してみようと思います。
もしかしたら、みなさんも同じような疑問を
お持ちかもしれないですもんね。

お豆の販売をする時には、必ず
「豆のままでいいですか? 粉にしますか?」
と聞いています。
その時のお客さんはこの質問に「んっ?」と
一瞬ためらいながらも、
「いやぁ、実はこの前、人から頂いた珈琲は
あまり良くなかったみたいで、
お湯をかけても色が出ないんですよ」と言うのです。
『色が出ないって、エキスがよく出なくて薄いのかなぁ』
と思って話を聞いていたが、どうやら違うらしい。
よくよく聞くと、その方は、
「豆のままの状態にお湯をかけていた」のでした。
それじゃあ、色が出るハズない……。
だけど、すぐにこの事に気付かなかったのは、
「珈琲豆は粉にして抽出する」ことが当たり前の頭で
「まさか」と思って聞いてるからです。
お茶や紅茶の場合は、お湯をかけるだけで色は出ますからね。
日常的に珈琲を淹れる環境になければ、
お茶やインスタントコーヒーと同じ感覚で
淹れることもあるのでしょうか?

またまたある日の会話。
おじさんが買いに来て、注文された豆を粉にしていました。
すると唐突に「さすがに2番は薄いですね」と言うのです。
「えっ? ブレンドの2番ですか?」と聞くと
「2回目にやるやつ」とさらりと答える。
「1回抽出して、2回目に出すやつですか?」と
驚いたように聞くと
おじさんは「あれ、みんなやるんじゃないの?」と……。
ちなみにどうやるのかを聞いてみると、
「1回目終わったやつを干して、よく乾燥させてから
それを集めて、またペーパーに入れて使うんだ」との事。
んーーー、かつおぶしの1番だし、2番だしとはありますが
珈琲の2番だしってのはあまり聞かない……。
皆さん、もったいないからって真似しないでくださいね(笑)

他にもちょっとしたエピソードはあります。
「珈琲は濾せばいいんだろ?」と、
豆とペーパーだけ買っていこうとした方。
「自家焙煎」と書かれた店に入ってきながらも、
珈琲豆は茶色に出来上がった状態で輸入されてる、
と思っていた方。
友人へのプレゼント、と注文された豆を粉にしている時に、
えっ、インスタントコーヒーとは違うの?
と言ったオネエチャン……etc.
キリがないのでこの辺でやめておきますね。
結構楽しませてもらうのと同時に、
珈琲の認識なんてこんなもんと思い知らされます。

Q:お湯を注いだ時に粉が膨らまない?
A:膨らむ、膨らまないは珈琲豆の鮮度を判断する
ひとつの目安になります。
膨らまないのは、焙煎してから時間が経った豆、
もしくは、管理の方法に問題があるのが原因。
特に粉で買った場合、冷凍庫で保管していないと
湿気って膨らまない事があります。
ですが、膨らまないといけない訳ではなく、
あくまで鮮度やおいしく飲めるかの目安。
ちなみに市販品に関しては、
ガス抜きをしてからの密封なのであまり膨らみません。

Q:どのくらいの量の珈琲を抽出したらいいの?
A:10g入るさじを使った場合、
一人前であれば、豆を山盛り一杯で150cc位の量、
二人前であれば、軽い山盛り二杯で300cc位の量が目安です。
ただ、みなさんそれぞれ飲みやすい濃さがあるでしょう?
薄くしたい場合は、使う粉の量はそのままに
注ぐお湯の量を増やして調節してください。
濃いほうが好きな方は、一度に作る人数分を多くして
淹れると良いですよ。
よくメッシュを細かくして、濃く出そうとする方がいます。
おいしいエキス分だけを抽出するための、
道具に合ったメッシュがあります。
「クドさ」と「濃さ」は違いますから、誤解のないように。


Q:お店で飲む珈琲の味のように、おウチでも淹れられるの?
A:お客さんからお代を頂く以上、
それなりに技術を磨いて珈琲を淹れています。
でも基本的に、他人様の淹れてくれた珈琲って
おいしいですよね?(笑)
まぁ技術よりも、お店は「淹れる条件」が整ってますから、
自宅で全く同じ様にとはいかなくて仕方ないのです。

Q:自分で珈琲を淹れる度に味が違うのですが……。
A:こういう事に気が付くのは、意識して飲んでる証拠ですね。
理由としては、
お湯の温度、注ぎ方、豆の鮮度などが考えられます。
温度が高すぎたり、注ぎ方が雑だと苦味がキツくなります。
また、粉の状態では、たとえ冷凍庫で保管していても、
豆の状態より劣化は早いです。
時間の経過と共に味も変化しますが、
変化するものだ、と知っていれば
そのうち細かい事は気にならなくなりますよ(笑)

Q:いちばんベストな道具はどれですか?
A:どれが一番と言い切れるものはありません。
6回目でお話したように、
それぞれの道具に良い点と悪い点があります。
みなさんがご自分で試してみて、これが一番おいしい、
と感じる道具がベストだと思います。
この連載ではペーパードリップ式を紹介しました。
それは、誰にでも出来て、おいしくいただける方法が
まず大事だと思うからです。

んーー、何だか“生協の白石さん”の気分になってきました(笑)
では、次に行ってみましょう。

Q:ブルーマウンテンNo.1ってやっぱり美味しいの?
A:これを聞かれると困るんですよね〜〜。
模範解答としては、
苦味、酸味、甘味のバランスが良く、香りも良く
上品な味が好まれます、と答えます。
だけど、実際に自分で飲んでみて判断するのが一番、
といったところかな。


Q:香りの良いものを下さい。
A:珈琲は、味もさることながら
あの何とも言えない香りの良さも魅力です。
ただ、100gの豆には100g分の香りしか入ってませんからね。
当然ながら、時間の経過と共にぬけて減る一方です。
粉にして買った場合はなおのこと。
さらにそれを濾過した液体は、言ってみれば
ほとんどお湯が占めてますからね、
豆の状態に比べると香りは弱いです。
でも逆を言うと、
ネルを用いて抽出したエキス分の濃い珈琲というのは
味も香りも濃縮されたような感じで、
その分ぷわんっと立ち昇ってくるんですよ。
個人的には、香りより味で買った方がいいとは思いますが、
どうしてもという時は、独特な香りを持つモカなどを
試してみてはいかがでしょうか。


Q:インスタントコーヒーとはどう違うの?
A:パッと見た感じ、豆を粉にした状態と
顆粒状の見た目は似ているかもしれませんが……、
全く違いますからね。
インスタントコーヒーを簡単に言うと、
抽出した珈琲のエキスを乾燥させて水分を除き、
それを砕いて顆粒状にしたものです。
だから、お湯を注ぐと溶けて、珈琲の液体になります。


Q:カフェインレスコーヒーはありますか?
A:たまに聞かれるんです。
デカフェコーヒーやカフェインレスコーヒーというのが
市販されています。
ただ、珈琲豆の中に含まれるカフェイン量がどのくらいか
皆さん知ってます?
実際は1%程度で、緑茶よりも少ないのです。
あまり神経質に考えるよりも、
効用面(血液の循環をよくする等)に目を向ける方が
楽しめるのではないかと……。
カフェインは味の面では苦味成分です。
それを除いた珈琲は、ビールから炭酸を抜いて
「はいどうぞ」と出されたようなもの。
あんまりおいしくないと思います。
でも、カフェインに敏感な人もいますからね、
それなら深煎りの豆の方がカフェイン量は少ないですよ。
余談ですが、以前こんな方が。
外国のお客さんで、
『普段、カフェインを摂ると頭痛がするのに、
お宅の珈琲は飲んでも頭痛がしない』
と言って、よく買いにいらしてました。
珈琲豆の成分が、きちんと熱変化されているからでしょうか?
同じカフェインでも質の違いが出るのか、
わたしは科学者じゃないから分かりませんが……。
上手に焙煎された豆は、おいしく飲めるだけでなく、
色んな面でいいんだってことですね。


今回は、こんな形でお話ししてきましたが
少しはお役に立てたでしょうか?
他にもまだまだ、色んな質問をされるのですが、
それはまたの機会に。