第17回
突然ですが、みなさん
「かもめ食堂」という映画をご存知ですか?
主人公の日本人女性がフィンランドで開いた、
小さな食堂を舞台にしたお話。
全体に流れるゆる〜い空気感が心地良く、
時折スクリーンに映し出される料理からは、
おいしそうな匂いが漂ってきそうで、五感が刺激されます。
原作(群ようこさん著、幻冬舎より好評発売中!)の中では
「珈琲」の存在感はそれほどなかったのですが、
映画の中では大事な役割を持っていました。
何だかうれしかったです。
でも、『あら、あのコーヒーミルいいなぁ』とか、
『手でドリップしてる』とか、そんな部分だけ
現実に戻って観察する自分が少し哀しかったですけど……(笑)
実は、フィンランドは国民一人あたりの珈琲の消費量が
世界でもトップクラスなんですよ。
日本では、珈琲をたくさん飲むと胃に悪いだとか、
眠れないだとかいうイメージがいまだにあります。
本当に体に良くないものだったら、何百年もの間、
世界中の人々に愛され続けるでしょうか?
今回はこの場をお借りして、
少しでも愛する珈琲の名誉挽回になればと思います。


日本に限らず、世界中で「珈琲と健康」についての研究がされ、
多くの論文が発表されているようです。
おそらく今後もこのテーマは続くでしょう。
近年では新聞に、珈琲は肝臓がんの抑制に効くという記事が載り、
テレビでは、ダイエットに効果があると放送されました。
その度に、メディアの力ってすごいと思い知らされます。
みなさん、けっこうすんなりと信用するんですよね。
間違ってはいないし、良い情報なのでいいのですが……。
それによって買いに来られる方は、
不思議としばらくすると来なくなります。
健康のために、ダイエットのためにというのでは味気ないです。
珈琲なんて嗜好品ですから、おいしいなぁと単純に楽しむもの。
素直においしいと感じるものであれば、きっと体も喜ぶでしょう。
そして、知らず知らずのうちに良い効果があったりして。


そもそも胃に悪いイメージがついた理由の一つに、
以前は煮出し式の珈琲であったとか、
作り置きして煮詰まった珈琲であったなどの
「淹れ方」に問題があったことが考えられます。
本来、有効に働くはずの成分が変化してしまった珈琲を
何杯も飲んで、胃腸に負担がかかったのではないかと。
何となく想像がつきませんか?
実際に、煮詰まった珈琲はおいしくないですし、
何杯も飲みたいとは思わないでしょう?
やはり、質の良さは大事です。
余談ですが、胃はすごくデリケート。
ストレスを受けやすく、例えばバリウムを飲む検査を受けただけで
胃潰瘍が出来る人もいます。
「胃に悪い」なんて思いながら飲んでは、胃も珈琲もかわいそう……。
医療の観点からすると、胃に悪いとされるのは、
「刺激物」だからだそうです。
(お酒やタバコほどではないです、辛いものも刺激物。)
珈琲には、胃の粘膜を刺激し、胃液と胃酸の分泌を促す作用があり、
食後に飲めば消化を助けてくれます。
ただ、小さい頃からの食べ物の習慣による個人差があります。
胃腸の弱い方は、空腹時を避け、食後に飲むようにしたり、
ミルクを加えたりして、ご自分にあった飲み方で楽しんで下さい。


今までに分析された、珈琲豆に含まれる成分は、
700種類以上もあるそうです。
中でも、栄養面で重要なのはカフェインとクロロゲン酸。
カフェインには覚醒作用があり、眠けを覚ますのはよく知られてますが、
他にもれっきとした薬理作用があり、様々な効果が報告されてます。
●ストレスを緩和し、心臓の拍動を高める作用により、
 血液循環を良くし、血圧を下げる
●善玉コレステロールを増やす作用により、動脈硬化を防ぐ
●褐色脂肪細胞のエネルギー代謝を活発にし、余分な脂肪を燃焼
 ダイエット、生活習慣病の予防に役立つ
さらにクロロゲン酸には、
●発がん性物質や活性酸素を抑える効果がある
他にも珈琲には、
●大腸菌やピロリ菌の増殖を防ぎ、抗菌作用がある
●香りをかぐと、アルファ波が増えリラックスする
などなど、ざっと調べた範囲でもこんなに。
さらに、700種類もの成分には、
まだまだ未知の可能性が秘められているようです。



珈琲が、現在のように嗜好品として飲まれるようになったのは、
17世紀以降のこと。
実は「薬」として飲用された歴史の方が長く、
1000年以上にもわたるようなのです。
エチオピアの山中に自生していた珈琲の木の、
赤い実を食べたヤギが興奮するのを見たことから、
珈琲が発見された説があります。
当時のイスラム教圏の高僧らが、赤い実を元気の源として食べ、
その実の煮汁を眠気覚ましの「秘薬」として飲んでいたとか。
こういった記録をみると、
様々な研究により、多くの効用が明らかになる方が
当たり前のことの様に思えてきます。
珈琲の飲用の始まりは、薬だったのですから。

ま、そうは言っても
やたらガブガブ飲めばいいという物ではないでしょう。
何事にもバランスが大事ですし、適量というのがあります。
珈琲が、必ずしも体に良いと断言されないのは、
質の問題や個人差によるところもあると思います。
珈琲の持つ特徴を知った上で、
やはり普通に、飲みたい時に淹れて、
おいしく飲んでるのが一番ではないでしょうか。

珈琲というと、何かにつけてカフェインのことを悪く言われがち。
夜飲むと眠れないというのは、
先入観による暗示作用もあるようですよ。
数値的に見れば含有率は1%前後ですし、お茶や紅茶にも含まれてます。
本当にカフェインに敏感な人は、
お茶や紅茶を飲んでも寝つきが悪くなるので、
遅い時間に飲むのを控えれば良いと思います。
また、珈琲の焙煎度合いによってカフェインの含有量は違います。
どうしても気になる方は、浅煎りに比べて深煎り豆の方が、
カフェインの量が少ないことを覚えておいて下さい。

今回のテーマは、私の経験上からのお話ではなく、
文献などを参考に書かせてもらいました。
私は普段、体に良いとか悪いとかではなく、
もちろん、おいしいから飲んでます。
仕事柄、味見をしたりもするし、結構量は飲んでるかもしれません。
でも、至って元気ですし、夜もぐーすか眠れます。
研究者じゃないから、こうみたいよと伝えることしか出来ませんが、
私が元気だってことが何よりの証拠かなと思います(笑)