第18回
珈琲にはこんなお菓子が合いますよ〜なんて、
余計なお世話なのですが、今回はそんなお話を。
冒頭のコラムで、和菓子が珈琲に合うと言っているのには、
一応理由があります。
和菓子の甘さは、珈琲の味を邪魔しないのです。
日本人にはお茶の文化があり、
茶道と和菓子は切っても切れない縁があるので、
和菓子に珈琲というと「?」と思われるかもしれません。
でも実際には、「どちらの味も壊さない」組み合わせのように思います。



例えば、生クリームを使ったケーキの甘さや
果物を使った酸味は舌に残るので、
その後に飲む珈琲の味が変わってしまいます。
普段は意識していないから、気付かないかもしれませんね。
というのも、ケーキ類は脂肪分を多く使っています。
普通の温度では溶けにくい油ですから、
食べると舌に油膜を作ってしまい、
本来味わえる、珈琲の微妙な味が感じられなくなってしまうのです。
そうなると、単に苦いだけの珈琲や、熱い紅茶の方が合うんですよね。
おいしい珈琲というのは、微妙な味のバランスの上に成り立っている
と、前にもお話しました。
舌の上に膜が出来ると、
苦い味だけは判りますが他の味は消されてしまい、
ちゃんと味わうことが出来ないのです。
脂肪分の高いコーヒー用のミルクも同じようなこと。
変な味をごまかすには良いのですが、
ちゃんと出来た珈琲を楽しむには、
脂肪分が程々にある濃い目の牛乳の方がいいのです。
ま、牛乳を入れないで楽しむのが一番ですが……。
日本でもヨーロッパでも、ケーキのセットには珈琲が出ますが、
「合うから」というより、
「口の中をさっぱりさせる」という理由のように思えます。



では、和菓子はどうでしょう?
砂糖はたくさん使いますが、脂肪分を含んだ材料は使わないので、
舌に、他の物を味わう際の弊害が起こりません。
当然、珈琲だけではなくお茶にも合います。
これはあくまで、私が珈琲を主とした見方で、
和菓子が合いますよと言っているだけですが……。
和菓子といっても、大福や饅頭といった餅や皮に包まれたものより、
餡そのものを使った、煉り切りやきんとんのような上生菓子の方が
珈琲と相性がいいですね。
舌の上ではらりと溶け、スーッと消える和菓子の甘さと、
珈琲の苦みが絶妙にマッチします。

繊細な味覚を持つ日本人には、和菓子の美味しさが合うはず。
本来ケーキは甘いものですが、海外へ旅行に行って
ケーキの甘さにビックリしたことありませんか?
それこそ、グッと苦〜い珈琲が飲みたくなるでしょう?
やはり、食文化の違いというのもあると思いますね。


余計な話ついでに、珈琲カップのお話も少し。
珈琲は味も大事ですが、見た目の美しさも捨てがたいもの。
普通にペーパードリップで淹れられた珈琲は、
キラキラと輝くような琥珀の液体をしています。
ただし、抽出器具によっては(コーヒープレスやエスプレッソ等)
液体の美しさを損なう物もありますからね。
琥珀色の液体を、目でも楽しみながら飲むのに適した器となると、
やはり純白がその基準となるでしょう。
外側は色付きでも、せめて内側は白が良いですね。
では、白なら何でも良いのかと思われるかもしれませんが、
そうでもないのです。
唇に当たる部分が薄いほど、不思議と美味しく感じられます。
ワインやシャンパンでもそうじゃないですか?
理由は分からないのですが、厚手のものはやぼったい感じがします。



珈琲に限らず、食べ物や飲み物の美味しさというのは、
味だけでなく、トータルの美味しさを五感で味わうものだと思います。
日本古来の茶道は、お客様をもてなすという心遣いも含め、
五感で味わうことの極地ですよね。
例えば、いくらおいしい珈琲でも、
白い紙コップで出てきたら何だか味気ないでしょう?
逆に同じ白でも、素敵な有田焼のカップなどに入っていたら、
出てきた瞬間に美味しそうに感じるでしょう。
そんなもんです。
自宅で珈琲を飲むなら、いちいち面倒だからマグカップでいいわ、
というのも全然構いません。
それで味が落ちる訳ではないですから。
ただ、珈琲は嗜好品であり、また趣味みたいなもので、
それぞれが自分なりの楽しみ方を出来る良さがあると思います。
味にこだわっても良し、器にこだわっても良し、
結局は「楽しむ」という「心のゆとり」の部分なのでしょうね。
そんなひとときに珈琲がお役に立てるのは、
とても嬉しいことだと感じます。