スポーツ実況アナウンサーに迫る第二弾は、野球。学生野球にプロ野球、今ではメジャーリーグまで、野球の話題がない時期はない。ちょうど今日2月1日はプロ野球のキャンプイン。実況アナウンサーもシーズンインだ。そこで今回は、野球実況を中心に活躍するスポーツアナウンサー・石原敬士さんにお話を聞くことにした。キャンプイン直前の貴重な時間に聞いた石原さんのお話は、これまた貴重なネタばかりだった。




相手チームのことを知らないでしゃべるのは無理!


石原敬士(いしはら・たかひと)


石原敬士(いしはら・たかひと)PROFILE

1968年 愛知県東郷町出身 法政大学経営学部経営学科卒
1991年に入社した(株)テレビ新広島時代は、カープ・サンフレッチェを中心にアマチュアを含めたスポーツを担当。入社1年目にしてカープの優勝に立ち会ったのをはじめとして、94年サンフレッチェの1stステージ優勝、ハンドボール広島メイプルレッズの日本リーグ7連覇を見届けるなど、数々の大舞台を選手とともに体験した。その一方で6年間にわたって夕方のニュース番組「スーパーニュース」の金曜担当キャスターを務め、数々の事件・事故現場などからの中継も担当した。2005年3月31日に14年間勤めた(株)テレビ新広島を円満退社。大好きなスポーツにいつまでも関わり続けファン・サポーターとともに選手を応援し続ける実況者でありたいと思う。

石原敬士オフィシャルブログ「石原敬士の声心」


オグマナオトPROFILE

福島県出身。風車とスポーツと食べることについてばかり考える30代。「エキレビ!」レギュラーライター。『編集会議』でインタビュー記事を担当するほか、風車ライターとして『電書雑誌よねみつ』で「まわれ風車男」を連載。現在、実況アナウンサーの魅力を多角的に紹介する企画を進行中。

ツイッター:@oguman1977


石原さんが実際につけているプロ野球個人カード

石原さんが実際につけているプロ野球個人カード。西武・中村剛也選手と牧田和久投手の成績が事細かに記されています。こりゃ3時間かかりますよね。


──せっかくのオフシーズンにお時間をいただきありがとうございます。

石原 そうなんです。季節労働者というか(笑)。2月からはキャンプ取材が入ったり移動だったりでバタバタして、シーズンが始まってしまうと毎日の実況の準備に追われて結構忙しいんですが、この時期だけはのんびりできてますね。

──「毎日の実況の準備」というのは具体的にどのようなことをするんですか?

石原 野球に関して言えば、全選手分の「個人カード」というものをオリジナルで作ってあるので、それに毎日選手の結果をつけていく、と。

──え? 12球団全部?

石原 はい。何打数何安打で、安打の内容やフォアボールとかも全部書いてます。ピッチャーだったら何番目に登板したのか、先発だったのか。5回を投げて、球数いくつで。という風に一覧表になっているカードに毎日つけていく。

──毎日…

石原 毎日。だから、オフは何もしなくていいので、ホッとできる時期なんです(笑)

──それはやっぱり全チームをやる必要があるんですね。担当チームとかが割り振られる訳ではなく。

石原 でも、全部で12球団ですからね。広島の局アナ時代からそうなんですけど、例えば、サンフレッチェの試合を実況する。ってなったら、僕の場合は直前2週間はサンフレッチェのことなんか何も調べないんです。相手チームのことばっかりひたすら調べて、ネタ探しばっかりする。スポーツって相手がいないと成り立たないものですから、相手チームのことを知らないでしゃべるのは無理!って思っているので。

──それ、毎日どのくらいの時間をかけるんですか?

石原 まあ、短く終わって3時間かな。

──野球中継が夜10時、11時くらいに終わってそれから?

石原 試合後につけることもあれば、朝起きてからということもありますけども。今はインターネットで全部結果が出てるので夜中でもできるんですけど、若い頃はそういうのがなかったので、翌朝新聞を見てやってましたねぇ、大変でしたけど(笑)。まあ、例えばナイトゲームの中継だったら午後2時くらいまでに球場に入ればいいので、朝6時に起きて3時間つけて、9時か10時。十分間に合うね、と。それくらいの感覚でやってますけどね。これがメジャーリーグを担当するようになるとまた変わってくるんですけども。

──そうですよね。メジャー、朝に中継やってますもんね。

石原 はい。メジャーリーグは基本的に「ゲームノート」っていう毎日発行されるリポートを数日分読んで試合に臨んでるんですけども。メジャーの場合は実際に試合が見られない訳ですから、いろんなところからの記事をメモしたりとかもしてますね。

──プロ野球の場合、現場の取材っていうのはどのくらいの頻度で?

石原 基本的には試合前に毎日グラウンドでっていうのがほとんどですね。でも、一軍の球場で昼間に二軍が試合する場合は、朝10時くらいから行ったりもしていますね。

──それは、選手の肉声を聞くことがメインになるんですか?

石原 そうですね。あとは定点観測じゃないですけども、「観察」するのも取材だと思っているので選手をじっくり観察してますね。

──観察?

石原 例えば、最近この選手打ててないな、と思ったらひたすらジーッとその選手のことを見てみる。そうすると、自分勝手な素人考えなんだけれども、こうなんじゃないかな?と思うところが見えてくるんですよね。そこで思ったことを放送で解説にぶつけてみると「そういえばそうだね」って言われたこともあるんですよ。

──そこで感じたことを実際に選手に聞いてみたりとかは?

石原 まあ、選手にぶつけてみることもあるんですが、選手の方も心が穏やかじゃないときだったりするので、「あの時こうだったんじゃないかと思ってたんですけど、実際どうだったんですか?」と後から聞いてみたりしますね。選手は一生懸命、上手くなりたい・打ちたい・投げたい・抑えたいと思ってやっているので、それを直すためのアドバイスは僕らの仕事でも何でもないし。原因を掘り下げるのは大切だけれども、それを暴いてつきつけてっていうのは違うのかなと自分では思っています。むしろ「この選手はこういう風に努力していますよ」「こんだけもがいてるんですよ」っていうのを伝えることこそ自分の仕事だと思っています。



スポーツアナウンサーは主役になれない。主役はゲームであり、選手


実際に実況シーンを再現してくれる石原さん

実際に実況シーンを再現してくれる石原さん。この美声をお届けできないのが残念。


──先ほどメジャーリーグのお話が出ましたが、メジャー中継はスタジオでの収録ですよね。

石原 そうですね。オフチューブ中継(※1)ですね。

※1
海外から試合映像を伝送してもらい、それを日本のスタジオで出演者に画面を見てもらいながら実況・解説するスタイル。


──球場での実況と、スタジオでモニターを見ての実況は、どちらの方が難しいですか?

石原 メジャー中継の場合、はっきり言ってしまえば視聴者の皆さんと同じ画を見てしゃべっている訳です。代打なんかは見たままを伝えればいいのですが、問題は守備ですよね。あれ誰?っていう場合も結構あります(笑)。

──誰だよ、お前?と(笑)

石原 まあ、メジャーリーグはWeb上で頻繁に情報が更新されるのでまだいいんですけども、WBCの実況をしたときに、メキシコからの中継映像が異常にひどくてですね。日本とかメジャーリーグの場合は、打った瞬間一塁側のカメラで追いかけるんですね、打球を。それがメキシコではバックネット裏のカメラだったんです。打って、打球が上がった瞬間に、カメラがそのまま上にあがるんです。

──ボールを追いかけて?

石原 でもボールがないんですよ。追っかけてないんです(笑)。メキシコのカメラマンがボールを見失ったと思うんですけども、なんとなく向こうに飛んだなー、という感じでずーっとレフトを追ってるんです。で、こっちはその映像を見てレフトフライなんだと思って実況するじゃないですか。「レフトにあがりました」って。そしたら、画面の片隅でサードがフライを取ったんですよ。

──(笑)

石原 ラッキーだったのはそれが見えたから「ん!? サードのファウルフライですっ」と言い直せましたけど、あれは勘弁してくれよーって思いましたね。もちろん、生で見て実況する方がやっぱりいいんですけども、実際球場で喋っている場合でも、結構モニターを見てしゃべってるんですよ。だから、そのモニターにすべての権限を委ねた実況だ。と考えれば、難しいは難しいんですけども、無茶苦茶難しくはないです。

──では石原さんにとって未だに難しいなぁと思ったり課題だったりする部分はあるんですか?

石原 課題はたくさんあるんですけど、一番はゲームの流れ。いきなりゲームが壊れる場合があるんですよね。いきなり8点取っちゃった、とか。そういう時のつなぎ方だったり、話のネタの出しどころの判断だったり。もちろん表現方法もそうですし、もっともっと野球を知らないといけないなと思いますね。元カープのチーフコーチを務めた山本一義さんにアナウンサーになったときに言われたんですけど、「お前は早く100見ろ!イヤ、1000だ。1000試合を見ろ!」と。1000試合はたぶん超えてるんですけど、まだまだわからないですからね、野球。

──奥が深いですよね、野球。

石原 同じ試合って二度とないので、課題と言っても毎回思うことは一緒ですよ。今日は上手くしゃべれるかなぁ?と。今日はどういう風に入ろうかなぁ?この選手のときにこの話したいけどどうなんだろうなぁ?上手く流れに乗るかなぁ?っていうのが毎回の問題なので。スポーツアナウンサーってある意味、主役になれないじゃないですか。主役はゲームであり、選手なんで。他の分野のアナウンサーと違って主役になれない役割なので、毎回「いいゲームになりますように」って思いますね。

──やっぱり4時間5時間かかっちゃうゲームは「もう、早く終わろうよ!」って思っちゃうんですか?

石原 いや、時間がかかっても面白いゲームってやっぱりあるんですよ。僕、長いプロ野球の歴史の中でたった一回っていうゲームを実況してるんですよ。日本ハムに八木っていうピッチャーがいるんですけども、その八木がルーキーの年に、福岡ドームで、延長10回までノーヒットノーランをやったんです。で、11回に武田久が出てきて12回はマイケル。この2人もノーヒットに抑えたんですよ。(※2)「史上初!3投手による延長12回ノーヒットノーランゲーム」っていうのをやったんですが、これ、長いプロ野球の歴史の中で一回だけなんです。

※2
2006年4月15日、日本ハムファイターズvs福岡ソフトバンクの試合。日本ハム所属の八木智哉、武田久、マイケル中村の3投手により達成された。


──それは、ずっと緊張感が続きそうなゲームですね。

石原 そうなんです。だから、長くてもいい試合っていうのはあるし、どんだけ乱打戦になってもいい試合ってあると思うんですけど、逆に言えば、見ている人が飽きない試合が「いい試合」ですよね。だとすると、飽きそうな試合でも飽きさせないスパイスだったりエッセンスっていうのを僕ら実況アナウンサーが加えられれば、もっと「いい試合」って増えるんじゃないかなとは思うんですよね。

──それこそ実況アナウンサーの腕の見せ所だと。

石原 そうじゃないですかね。投手戦ってよく見ていてつまらないって言われるんですけども、投手戦こそ僕は飽きないゲームになってほしいと思っているんです。どう凄いのか。どうすれば攻略できるのか。あれはできないか、これはできないかって攻略法を考えたりとかの楽しさっていうのも野球の醍醐味でもあるので、もっと見ている人に「あ、投手戦も面白いんだな」って思ってもらえるようにしゃべりたいなぁとはいつも思っていますね。



審判講習会、キャンプ、メジャー、少年野球etc. 色んな角度から野球を見てみたい


NPB12球団ジュニアトーナメント

NPB12球団ジュニアトーナメント。2011年大会で7回目を迎え、石原さんのライフワークとなりつつあります。


──石原さんのブログを拝見したら、審判員の講習会を受けに行ったエピソードがあったんですが。

石原 はい。審判員講習会に出たことがあるのは、マスコミではまだ僕だけですね。「初めて来ていただきましてありがとうございます」と言われたくらいなんで。

──それはやっぱり、先ほどの「もっと野球を知らないと」という想いから。

石原 実況って、実況席という高い場所から俯瞰して見てるじゃないですか。グラウンドの中ってどうなんだろう?と思ったんですよ。ピッチャーを真正面に見て、バッターに一番近い場所で立っている審判って、どういう風景で野球を見えているんだろう?って、長年悶々としていたんです。そしたらある日新聞の片隅に、「審判講習会受講生募集。経験の有無を問わず」って書いてあって。でも笑っちゃうのが「経験の有無を問わず」って書いてあるのに、持参するものっていうのに「審判道具一式」って書いてあるんですよ。

──(爆笑)

石原 あわてて全日本野球連盟に電話しましたからね。「すみません。ホントにド素人で、審判用具何も持ってないんですけど、それでもいいんですか?」と。そしたら、「あぁ、大丈夫です大丈夫です。どうぞどうぞ」と。「あ、じゃあ貸していただけるんですか?」と聞いたら「えー、貸せるものはないんですけどねー」と。まあいいや、行ってみようと。

──行っちゃった!

石原 まあ、言ってみたらマスクは他の人のを借りられて、プロテクターはなかったので、実践形式の練習のときは主審の位置には入らず、という風にやりくりして。でも、面白かったですよー。普段、中継で見ているときは「ホームベースってちっちゃいなぁ」っていつも思っていたんですよ。「よくあの幅の中にストライクを投げてくるなぁ」って思ってたんです。でも主審の位置で構えると「ホームベースってデカイじゃん」と(笑)。距離感もあるのはわかってるんですが、「あぁ、これならストライク入れられるかぁ。意外と広いな、ホームベース」って思ったのは面白かったですね。

──結果的に新しい視点は持てましたか?

石原 その講習会のおかげで、NPB審判部長の井野さんに球場でお会いすると、ちょこまか話をさせてもらったりしてますね。「審判の目線で見ることも大切にしてほしいし、審判のこともっとわかってあげてくださいね」と井野さんからは言われてます。その代わり、審判がおかしなジャッジをしたら実況の中でもちゃんと言いますけどね。でも、ストライクボールの判定を僕がごちゃごちゃ言ったりしたことはないですけども。でも、もっともっといろんな角度から野球を見てみたいですね。喋るだけじゃなくて、ただただじっくり野球を見る日も大事だなぁと最近思ってきて、去年からメジャーリーグも見に行くようにしましたし、今年も6月くらいには行こうかなぁと思っています。

──それって自費になるわけですよね。

石原 もちろん自腹ですよ。フリーの実況アナウンサーは実況マイクの前に座らなきゃお金にはなりません。

──2月からプロ野球のキャンプにも行かれると思うんですけども、それも当然…

石原 自腹です。

──うわー、12球団まわらなきゃいけないとなると相当な費用に。

石原 離島に行く金がないです(笑)、久米島とか。石垣島はなんとか行かなきゃとは思ってるんですが… どうまわろうか悩ましいところです。1球団につき3〜4日見るっていうフリーのアナウンサーもいるにいるんですけども、そこまでの費用と時間はちょっとかけられないので、1日だけ行って、挨拶して練習見て、気になる選手の今年の目標を聞いて、っていう感じが多いですかね。まあキャンプ取材って、ひとつは「挨拶」っていう部分が大きいので。俺いたよ、と。もちろん、2〜3日かける場合もあるし、1クール見るにしても、1球団に付くのか複数球団見てまわるのかでもだいぶ取材の仕方は違ってきますよね。

──大変だ…

石原 そんなもんなんですよ。でもマイクの前に立ったときの自分のために、野球中継を見ている人のためにどうすればいいかっていったら、自腹であろうがなかろうがいいネタを見つけておいたり、いい空気を吸っておくのはいいことなので。広島の放送局に入社した91年に広島カープ優勝の空気を球場にいて吸えたことが、僕のアナウンサー人生の中でとても大きかったんです。だから、メジャーリーグも見に行ったことがなくてしゃべっちゃダメだよねと思って、去年ようやく時間が作れたので、メジャーリーグの球場の空気を吸ってきました。そしたら、ひとつおもしろいネタを仕込めて帰ってくることができたんでね。

──どんなネタですか?

石原 ちょうどヤンキースタジアムでテキサスレンジャーズ戦だったんですけども、レンジャーズにデレク・ホランド(※3)っていうピッチャーがいたんです。

※3
テキサス・レンジャーズ所属の投手。2011年はチームトップの16勝を挙げ、レンジャーズのア・リーグ制覇に貢献。


──左ピッチャーの。

石原 2年前、菊池雄星投手がドラフトにかかる前に、メジャーリーグからもオファーが来て面接を何球団かとしていたんですね。レンジャーズはそのとき、現役のピッチャーも連れてきていたんですが、そのピッチャーというのがホランドだったんです。僕が「昨日、日本から来たばかりだ」と挨拶すると、「キクチは?キクチは?」って聞いてくるんですよ。僕の頭の中では“菊池雄星=雄星”だったので、「キクチって誰だよ?」って思いながら話を来てたら、あー、そうかそうか、君があのとき来ていたピッチャーか、という風になって。「キクチはどうしてるんだ?」って何度も聞いてくるので「先日一軍デビューしたところだよ」って伝えたら、「そうか、彼も頑張っているのか」と凄く喜んでくれて。日本に帰ってきてからそのことを菊池雄星投手に伝えたら、こちらもとても喜んでくれて、そのことを現地で知り合った方にメールしたら、またホランドに伝えてくれたみたいで。そんな架け橋になったりして。

──メジャーの実況をする上でも、日本のプロ野球の実況をする上でもいいエピソードですね。

石原 この入団2年目の菊池雄星というピッチャーを応援してくれているメジャーリーガーがいるってすごいじゃん!と。そういうことも行かないとわかんない話ですからね。

──プロ野球、メジャーリーグだけでなく、石原さんは少年野球にも力を入れてますよね。ブログでもよくテーマにされたり。

石原 NPB12球団ジュニアトーナメント(※4)ですね。これはJ SPORTSがずっと中継を担当していて、僕も第1回大会から実況をやらせてもらっています。プロ野球と、野球界そのものが発展していくためには、プロがもっともっと少年の世界まで降りていって指導することが大事だろうし、子供たちにもプロ野球をもっと身近なものとして感じてもらうことも大切だろうなって思っているので、この12球団ジュニアトーナメントっていうのは、とにかく続けて欲しいですね。去年、第1回大会に出場した選手から初めてプロ野球選手が誕生したんです。これはとても大きなことだと思っているので、常にジュニアのことは書くようにしていますね。

※4
2005年から毎年12月下旬に開催される、日本野球機構(NPB)およびプロ野球12球団が主催する少年野球大会。12球団ごとに小学5、6年を中心としたジュニアチームを結成。選手はプロ球団とほぼ同じユニホームを着て試合し、各チームの監督・コーチは各球団OBが務める。


──同じ「野球」というスポーツの中で、少年野球、プロ野球、プロ野球のファーム、そしてメジャーリーグと、様々なカテゴリーを担当されていますが、取材で特に注意している部分、実況で意識的に変えている部分っていうのはありますか?

石原 あまり変えてないつもりでいます。実況の中で選手を「君づけ」にするか呼び捨てにするか、っていう程度ですね。少年野球って、ここからどう伸びていくの?っていう部分の面白さだったり、この年齢でしかも軟式ボールで130km近く出す選手ってすごいよね!っていうのが醍醐味なので。そういう選手のいいところを褒めるというか伝えられるようには心がけてます。あと解説の人に「もっと上手くなるにはどうしたらいいですか?」っていう質問はよくしますね。

──褒めて伸ばす!

石原 「プロ野球が降りていかないといけない。近づかなきゃいけない」と思っている僕がプロ野球と同じように実況してなければ、少年野球の選手たちにとって近づいているようには感じてもらえないですからね。だから、ホームランのシーンや得点の場面とか、むしろプロ野球と同じように実況していますね。そこを変えるつもりは僕はありません。



情熱を持って見ている解説者の方なら、何言ってもいいんじゃないのかな


川藤モノマネを交えながらの空想実況

川藤モノマネを交えながらの空想実況、ありがとうございました。達川節もリクエストすればよかった…


──先ほど、“実況席の目線”というお話がありましたが、球場によってしゃべりやすい球場、しゃべりにくい球場はあるんですか?

石原 一番問題になるのは距離感ですね。あと、ピッチャーとキャッチャーを結ぶラインからどれくらい外れるか。昔の広島市民球場は味のあるいい球場だったんですけど、たいぶ真ん中から外れた位置に実況席があったので大変でした。今だと、僕が行っている球場ではしゃべりにくい球場っていうのはないですけどね。西武ドームもQVCマリンも神宮、横浜、名古屋、福岡、東京ドームも、そんなにやりにくいと思ったことはないですね。

──グラウンドからの角度があった方が全体がより見えるですか?

石原 ありすぎても困るんです。僕はまだ実況したことがないんですが、色んな噂を聞いていると京セラドームがひどいらしいです、上過ぎて。どんなに打球があがっても、打球が下にしか見えない(笑)

──神様の視点ですね(笑)

石原 だから、ボールの行方がわかんないそうです。噂によると、公式審査員の席は座ってしまうとホームベースが見えないのでこうして(身を乗り出して)見ているとか。恐らくそれと同じくらいのレベルの高さに実況席もあるはずなので難しいみたいです。過去しゃべったところでって言われると、難しかったのは前の広島市民球場と広島の二軍が使う由宇球場ですね。由宇球場は監督室に機材を入れてやるんですけど、地べたと同じラインに椅子が置いてあって高さがないんです。しかも、由宇球場って日本一ファールグランドが広いので、ホームベースですらものすごく遠いんですよ。これはしゃべりにくいんですけど、逆にああいうのを経験してしまえば、大抵のところはそんなでもないかな。

──球場やチームごとに解説者が変わってくると思いますが、この解説者だからこういうことを聞こうとか、この人やりにくい…みたいなことありますか?

石原 やりにくさを感じる人はいません。気をつけてるのは専門分野に関してですよね。バッター出身の人に投球心理を聞いても仕方がないですから、「この場面、バッターはこのピッチャーをどういう風に見ていると思いますか?」って打者心理を聞きますね。得意分野って行ったら変ですけど、その解説者の方がどのポジションだったのか、どういう大舞台を経験したのかとか、「○○さんはこういう舞台も立ちましたけど、そのときはどうだったんですか」みたいな裏話をひっぱるとかはありますけど、やりにくいと感じた方は僕はいないですね。

──例えば、もはやネタのようになっていますけど、技術論を聞いても根性論が帰ってくる川藤さん、みたいなのって実際にはあったりしますか?

石原 ああ、そういうのはありますね(笑)。一緒に実況したことはないんですけど、「川藤さん、ここはベンチはどういう感じになっていますかね?」「ワシゃ監督なんかしたことがないから分からん」(笑) 「さあ、ここは何を投げますかね?」「ワシゃピッチャーなんかやったことない。分からん」なんていうエピソードは有名ですよね(笑)。

──(笑)

石原 でもね、川藤さんは、たぶん本当はできるんですよ。川藤さんと絡んだことはないし、あまりお話したことはないんですけど、だって解説の仕事がなくても、全試合自腹を切って阪神にくっついて試合を見るような人なんですよ。だから絶対できるんだと思いますよ。確かに生涯安打数をマートンに1年で抜かれましたけどね(笑)。でも、そういう情熱を持って見ている解説者の方なら、何言ってもいいんじゃないのかなって思いますね。なんか思い出話にしちゃっても可能だろうなとかも思いますし。だから僕は、苦手とか思った方はいないですね。

──逆に、この人とはいつやってもハマるな、楽しいなという人はいらっしゃいますか?

石原 それは回数の問題になってくるので、達川さんとか斉藤明夫さんだとかは、あ・うんの呼吸にどんどんなってきますよね。中継だけじゃなくてCSのフジテレビで『プロ野球ニュース』もやっていますけど、試合が放送ギリギリになって、編集上がりのテープを見てなくても、僕と斉藤明夫さんだったら、使うこところが分かっていたら全然合いますしね。そういうのもあるんで、それは回数だと思いますね。



次号予告


次回は石原さんの「スポーツアナウンサーへの険しき道」に迫ります。

次回は石原さんの「スポーツアナウンサーへの険しき道」に迫ります。


野球実況にまつわるエピソードいかがでしたか。少年野球への愛情、審判講習まで情熱的な仕事への取り組みに圧倒されました。実況アナウンサーの守備範囲ってものすごい! 後編もまだまだ熱く、石原さんの「夢」にまで話は及びます、乞うご期待!

「お前の目玉は節穴か」では、おもしろい取材企画を募集しています。ブログなどで具体的に企画をはじめているかた、道場破りもありです、ぜひお問い合わせください。プロアマ問いません。編集担当のツイッター @kaerubungei までどうぞ。

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