第10回

後編

ブックコーディネーター内沼晋太郎インタビュー

いろんな仕事を組み合わせて、どこにもいない人になっちゃえ

構成・文/田島太陽 撮影/市村岬

題字/masi. 企画編集/アライユキコ

真緑に塗られたオフィスの窓辺。「緑があったら落ち着くかなと思って、仲間と塗ったんですよ」

真緑に塗られたオフィスの窓辺。「緑があったら落ち着くかなと思って、仲間と塗ったんですよ」

ブックコーディネーター、クリエイティブディレクターなど様々な肩書きを持ち、ジャンルを超えて活躍する内沼晋太郎さん。これからフリーランスとして活動し続けたいと思っていた僕にとって、内沼さんは憧れの先輩だった。これからの編集者とは? 新しい仕事を始めるには? 日頃の不安や疑問をぶつけ、ますます人生相談となる後編!




これから可能性のある編集者


PROFILE


内沼晋太郎

1980年生まれ。大学ではブランド論を学びながら、後藤繁雄氏主宰の編集教室にも通う。卒業後は見本市主催会社に就職し、出版業界の見本市を担当するもすぐに独立。千駄木の往来堂書店・運転手・テレアポなどのバイトをしながら、本と人との出会いをプロデュースするユニット「ブックピックオーケストラ」を立ち上げ、ウェブデザイナー・ライターなどとして仕事を始める。現在は「本とアイデアのレーベル numabooks」というひとりユニットとして活動しており、ブックコーディネーター・クリエイティブディレクターの肩書きを名乗る。「TOKYO HIPSTERS CLUB」「HANSEL&GRETEL」(共に株式会社ワールド)、「TOKYO CULTUART by BEAMS」」(株式会社ビームス)などのセレクトショップで販売する書籍のコーディネイトを中心に、書籍売り場やライブラリのプロデュース、本にまつわる企画や作品制作、書店や出版社のコンサルティング、電子書籍関連のプロデュースなどを手がける。最近の事例に、読書するDJイベント「hon-ne」(フクモリ/2010-)、カフェにおけるドリンクと文庫本のセットメニュー「文庫本セット」>spiral/株式会社ワコールアートセンター/2009)、中身の見えない文庫本コーナー「覆面文庫本」ヴィレッジヴァンガード新宿マルイカレン店/2009)など。昨年3月に初の著書『本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本』を上梓。

サイト
numabooks | 内沼晋太郎
http://numabooks.com/

ツイッター
内沼晋太郎 (numabooks) on Twitter
http://twitter.com/numabooks/


田島太陽(たじま・たいよう)

1984年生まれ。出版社勤務を経てフリーライターに。表現活動をする同世代の考え方に興味を持ち、様々なジャンルの20代クリエイターにインタビューをするwebマガジン「creatalk」を個人で運営。当企画では出版・メディアにジャンルを絞り、深く掘り下げていく予定。

20代クリエイター限定インタビューマガジン「creatalk」
http://creatalk.com/

ツイッター
田島太陽 (t_taiyo) on Twitter
http://twitter.com/t_taiyo


内沼晋太郎『本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本』

内沼晋太郎『本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本』
(朝日新聞出版/2200円)

左開きで読むと、内沼さんの仕事のノウハウがまとめられた「仕事の未来をつくる本」、右開きで読むと、ブックコーディネーターとして手がけた数々の仕事が紹介されている「本の未来をつくる仕事」。まるで両A面CDのような本で、仕事への取り組み方とその結果が対をなしている構造が面白い。特に「未来の仕事〜」は内沼さん自身が会社を辞めてからの経験で得た仕事術であり、「お金をもらわないという強み」「規則正しい生活は心がけない」「覚えられやすいルックスになる」など、よくあるビジネス書とはちょっと違った切り口で進められる。内沼さんがいかにオリジナルにこだわっているのかが分かる一冊。フリーで働く人には必読書だと思います。



僕の拙い質問の意図を汲み取り、分かりやすい例を挙げて話してくれていたのが印象的だった。そして僕は前回同様「おーなるほどー」を連発して普通に聞き入ってました。

僕の拙い質問の意図を汲み取り、分かりやすい例を挙げて話してくれていたのが印象的だった。そして僕は前回同様「おーなるほどー」を連発して普通に聞き入ってました。


ーー内沼さんは学生の頃に編集も学んでいたんですよね。

内沼 後藤繁雄さんのスーパースクールっていうワークショップに通ってました。

ーー内沼さんにとって編集ってどういうものなんでしょう?

内沼 それは広い質問ですね(笑)。そうだな、これはよく言われることですが、今はみんな編集者なんですよ。例えばtwitterで誰をフォローするかっていうのは、自分の雑誌で誰に原稿依頼をするかというのと似ていて、みんな自分のTLを編集しているわけです。だから僕も自分がやっていることは全部編集だと思ってるし、だからこそ優れた編集者は必要とされる時代だとも思ってて。最近はネットが普及して誰でも発信できるようになって、情報も表現者もとても増えました。だからこそ、編集者は必要なんです。

ーーコンテンツの量が多いからこそ?

内沼 たくさんあるものに価値を付け直すとか、まとめることで違うひとつの世界を見せるとか、そういうことが編集だとすると、それが仕事になったり誰かに評価されたり、面白がってもらえたりするチャンスは昔よりとても増えていると思います。今、世界一の編集者はグーグルです。しかも誰もがそのパワーを使える。だから逆に言えばグーグルにはできない編集をすればいい、しないといけないんです。

ーー出版業界がヤバいみたいな話はもう飽きるほど言われている一方で、今の話みたいにライターや編集者にはチャンスの時代ということもよく聞くし、僕自身もそう思うんです。でももともと雑誌の編集をやっていたので、じゃあ媒体を離れたところでどうしたらいいんだろうってことがよく分からないんですよね。

内沼 なるほど、そうかもしれないですね。ただ僕が言っている編集者っていうのは、媒体を選ばない人だと思うんですよ。それは雑誌もできるしウェブもできますみたいな平たい話じゃなくて、その企画にもっとも適した広め方をゼロから考えられる人。。今はメディアの種類も増えているし受け入れられるものも変わってきているので、そのことについて敏感であること、さらに自分で新しく生み出せる力が必要だと思います。

ーー内沼さんの著書では「説得力が必要」という話が出てきますよね。僕もそれ、フリーランスになってからすごく感じ始めていたので興味深かったです。やっぱり必要なんだなぁって。

内沼 僕は企画を出したりアイデアを形にする仕事をしてるので、今までになかったものや価値を作りたいと思ってて、それをやっていくにはまずは自分が面白くないとしょうがないですよね。その次に必要なのは周りの協力なんです。そのためにはどうするかというと、魅力を分かってもらうことがいちばんなんですよ。お金を出してほしい人には、どうやってその人に利益を還元するのか。手伝ってほしい人には、何をしてほしいのかを説明しないといけない。それができないと絶対に面白いものにはならないんです。だから企画を考える力と同じくらい伝える力も必要だなと思います。

ーーそうですよね。その辺がまだまだだなぁと常々思ってます。あと僕は「creatalk」という20代限定のインタビューサイトもやってるんですね。

内沼 あ、友人が出てたので読んだことありますよ。

ーーわ、ありがとうございます! あれは会社を辞めてライターやろうと思った時に、いきなり出版社行って何か書かせてくださいって言っても無理だろうから、書ける場所をまず自分で作ろうと思って始めたんです。それで半年経って、この幻冬舎の仕事もそのサイトがきっかけだったんですね。ただ最近ちょっとだけ忙しくなってきて、更新するのが大変になっちゃったんですよ。もう時間のやりくりができなくてなってきて、どうしたらいいのかなぁというのをずっと考えてたんですけど……どうしたらいいですかね?

内沼 おお、本当に相談ですね(笑)。あのサイトでやりたかったことはある程度達成されたんですか?

ーーいや、まだまだですね。取材したい人もまだいっぱいいますし。

内沼 なにがネックですか?

ーーやっぱりインタビューだし、デザインとかも全部自分でやっているんで時間がかかりすぎちゃうんですよね。自分の生活すらギリギリというか成り立ってない状況なのに、仕事を置いといてでもそれをやらないといけない状況もあって「あれ、なんでこれ始めたんだっけ?」って思っちゃったり。

内沼 だったら単純にメンバーを募集すればいいんじゃないですか?

ーーそれもよく考えるんですよ。でもひとりであれを全部やってるのがすごいよね、面白いよねって言ってくれる人がすごく多いんです。あれをチームというか何人かで運営するとなると、多分似たことやってるサイトはたくさんあるんだろうなとも思うんです。そこはまだこだわりたいんですよ。

内沼 なるほどね。仕事よりもそっちを優先している状況に疑問を感じてしまうのだとすれば、それはお金がもらえないからですよね。もしそうだったら、それを収益という目線で考えてもいいんじゃないですかね。ライターとしてあのサイトを名刺代わりにできているならそれは立派なプロモーションツールだし、もっと分かりやすくモチベーションにするなら、書籍化を目指すとかね。うまく本にすることができれば実際の収益になるし、人に「本にするつもりなんです」って話すようにすれば、仕事としての意識が高まるだろうし。どうですか?

ーーそうなんです、あれでちょっとでもお金が入る仕組みがあれば違うのかもしれないなとは思います。

内沼 でも全然あり得ますよね。本にするならもちろん出版社にも売り上げというメリットがないといけないんで、そのためには「今ネットですごく話題なんですよ」とか「この中から今後すごい有名になる人がでますよ」とか、そういう説明ができないといけないですけどね。今はサイトを続ける目的が見えなくなってしまってるんだと思うんで、ちょっと違うところに目を向ければいいと思うんですよ。そのサイトをきっかけとしていくつか仕事をもらえたことで、まずは成功なんです。だったらライターとしての自分が今いる位置をもう一度考えて、目的意識をもうひとう高い所に持って行く、っていうことなんじゃないですかね。

ーーなるほど、目的意識ですか。

内沼 あ、もしくは「20代コーディネーター」とか肩書きをつければいいんじゃないですか? 20代のクリエイターだったら自分が世界でいちばん詳しいっていう立場を目指して。20代の面白い人を俺は500人知ってる、みたいな状況になればライターとは別の仕事が来ると思うんですよね。テレビ局から「若者の特集をしたいんだけど、取り上げる人が足りないから紹介してくれないか」って話があったりとか。あるいはもう少しマーケティング会社っぽく、若者文化についてインタビューを通じて調べているってことにして「若者関連の話題でお困りの方はご連絡下さい」って書いておくだけで一歩広がりますよね。田島さんはライターとしての専門は何かあるんですか?

ーーそれがあまりないんですよね。それも悩みのひとつで。

内沼 ライターで専門分野を持つ人には、実際に専門職の人も多いじゃないですか。お菓子のことを書くライターさんはお菓子職人もやっていたり、音楽のことを書くライターは実際に音楽をやっている人だったり。そのほうが説得力があるわけで、ライターとして専門を持つということの先はそのジャンルの専門家としてライター以外の仕事もあるという状態ですよね。だとしたら、今持っているウェブをそうやって活用する方法もありますよね。



主張があるのは素晴らしいこと



小田明志君とは中目黒のイタリア料理店で知り合ったそう。高校生に関わる仕事をする時にはまず明志君に相談するのだとか。

小田明志君とは中目黒のイタリア料理店で知り合ったそう。高校生に関わる仕事をする時にはまず明志君に相談するのだとか。



前編の反響の一部をツイッターから。アグレッシブで新しい内沼さんの仕事観に大きな反響が!

naoko_ishii すごい勉強になった……
8:30 PM Sep 14th

ecogroove オモロい!
9:37 PM Sep 14th

nayui741 毎回面白いw
5:39 PM Sep 15th

yoyogi_103 内沼さんのインタビュー凄く面白いです。後編にも超期待してます!
4:51 AM Sep 17th

yuriikaramo 現状が今まさに不安な僕には響くものがありました。 「自分が3年後に何をやっているかとかは考えたくない。」という言葉には励まされるものがあった。そうですよね。さきのことより今やれることやらないと
1:07 AM Sep 18th

momo_com 面白い!なんか今ドキだなあ。頑張る理由なんてナイナイヨー◎
12:53 AM Sep 18th

tarochinko 太陽たんの内沼さんインタビュー非常に面白かった。僕が常日頃言ってる「人はいつか死ぬ」ってのを行動原理に頑張ってる人がいるのはとても勇気になった。服従の対価が細切れにして分配される勝利なら華々しい負け戦を望もうじゃないか、人間諸君。
1:41 PM Sep 22nd


ーーなるほどー、勉強になりました! アイデアを出すってことはやっぱり問題がどこにあるかを探るってことなんですね。今話しててすごくそれを感じました。

内沼 そうですね。さっきも言いましたけど、まずは話を聞いて状況を知る、問題が何なのかを理解する、それでどう解決するかを考えるってことです。こういうことを毎日やってるからアイデアも出てくるし、今もなんとか食べて行けてるのかな。

ーー実はもうひとつご相談がありまして(笑)。

内沼 はい、なんでしょう。なんでもどうぞ。

ーーこの幻冬舎での連載も若手ライターで順番にやってて、もっと面白くできないかなって話もよくするんですよ。

内沼 ああ、ただあのウェブマガジンがよくないのは、デザインだと思うんですよね。前回出てた小田明志くんも言ってたけど(笑)。だから原稿とか企画がどうこうもあるんだけど、まずはそこじゃないですかね。予算が取れないってことなんですかね?

ーーらしいですね。

内沼 でもなんていうか、天下の幻冬舎ですよ? 幻冬舎さんとしてあれでいいのか? っていうのは思っちゃいますよね。一昔前のサイトという感じがしてしまうし、ユーザビリティも低いし、もったいないですよね、ああいうサイトって。

ーーデザイナーさんもリニューアルしたいって話は出してるらしいんですけどね。

内沼 でも予算がつかないんですよね。それはつまり、あのデザインのどこが悪いのか分からない、だからそれに予算をつける理由がわからない、っていうことだと思うんですよ。だったらもう仮サイトを勝手に作ってそれを見せてみるとかね。デザイナーさんにはリスクがありますが、比較対象があれば、気がつきやすいじゃないですか。これだったら今よりも全然いいでしょ、幻冬舎のウェブならこうあるべきでしょ、恐らくこれくらいアクセスも上がりブランドにもこういった価値を付与するので予算を出してください、って言えば分かってもらえるかもしれないですよ。

ーーああ! そうか今度やってみます! 今ちょっと名前が出ましたが、明志くんとはお知り合いなんですよね。

内沼 そうなんですよ。知人の紹介で知り合いまして。

ーー今回内沼さんにインタビューしたかったのは、明志くんと話してて「次の人決まってないなら内沼さんオススメっすよ。超面白いです」って言われたのも理由のひとつだったんです。

内沼 いやー光栄ですね。

ーー前回のインタビュー記事はどうでしたか?

内沼 すごく面白かったですよ。だいぶ叩かれたりもしてましたが、叩きたくなる気持ちを生み出してるって時点で勝ってるってことも、ちゃんと分かってやってるし。だからあれで良かったと思う。10代であんなやつなかなかいないと思うし、はっきりしてるから、僕は彼がすごい好きなんですよ。それにこれは僕の想像ですけど、あれってウェブマガジン幻冬舎の中ではダントツでアクセスを集めた記事じゃないですか?

ーーまさにそうだったみたいです!

内沼 その時点で、彼はその媒体で書いている他の誰よりも影響力があったってことですよね。素晴らしいことじゃないですか。



「あの人は何者なんですか?」って思われたい


インタビューという場を利用して個人的な人生相談までさせてもらい、取材後は「なんとかやっていけるかも……!」とちょっと勇気が湧きました。

インタビューという場を利用して個人的な人生相談までさせてもらい、取材後は「なんとかやっていけるかも……!」とちょっと勇気が湧きました。


ーー僕は会社にいた頃から原稿を書くのは好きだったんでライターを名乗るようになったんです。でもやっぱり書いててしんどいと思うこともあるんですよね。結構飽きっぽいところがあるんで、内沼さんみたいにいろんな仕事をしてるのは楽しそうだなぁと思うんです。

内沼 僕もすごい飽きっぽいし、同じことだけをやるのは好きじゃないんですよ。仕事の環境も、やっぱり場所に慣れちゃうと仕事も進まなくなってくるので、オフィスはシェアにしてコミュニケーションを楽しんだり、ノートパソコンを持ち歩いていろんなカフェで仕事したりしてます。だから新しい話が来るとすごい嬉しいですよね。何をどう間違ったのか分からないけど、この人はこの案件を僕に頼もうとしている、って瞬間がすごい楽しいです。

ーーどうしたらそんないろんな種類の仕事が来るんですかね?

内沼 僕は「ブック・コーディネーター、クリエイティブ・ディレクター」って肩書きをつけてますけど、それってよく分からないじゃないですか。もちろんライターって書かないと来ない仕事もあると思うけど、そう書くとライターの仕事しか来ませんよね。でもこういう肩書きでいると「こんなのもできますよね?」みたいな仕事も多いんです。これは一長一短で、もちろんいきなりよくわからない肩書きをつけても何の仕事も来ないと思いますが……。あとは多分「これ誰に頼めばいいんだろう?」みたいな案件が出た時に、内沼ならできそうかもって思ってもらえてるってことなんです。アイデアを出し惜しみせずどんどん話すのも、「あっそういうことも頼めるのか」って思ってもらえるための工夫でもあります。

ーーウェブにも肩書きがたくさん載ってますよね。

内沼 肩書きというよりは事業領域みたいなもので、便宜上こういうのがないと頼みにくい人もいるので、たくさん書いています。最近だと1年くらい前から司会業みたいのをこっそり加えたんですよ。というのも、僕はトークショーとかのイベントがすごく好きでよく行くんですが、司会の人があまり上手くなくて、ゲストに聞くべき話をきちんと掘り下げられていないと思うことが何度もあったんです。そうしたらたまたま、他の仕事でご一緒したある会社にそこが主催するトークセッションの進行を頼まれて、やってみたら意外とできたんです。それでもう自分でやろうと思って肩書きに入れたら、他にもちらほら頼まれるようになってきた。そうやってなるべく同じことばかりやって飽きてしまう状況を作らないようにしてますね。

ーー新しい仕事を作るとか新しいフィールドに行くっていうのはそういうことなんですね。

内沼 司会っていう仕事は世の中的には新しくないですけど、それが加わることで自分が新しくなるじゃないですか。そうやってどんどん変わって行きたいんです。司会をする人はたくさんいるし、本のセレクトをする人も何人かいるかもしれないけど、その両方をやる人となると競合がいなくなる。それが積み重なることで、どんどんオリジナルな存在になっていく。自分が手がける仕事を、これまで誰も見たことのないものにしたいというのと同じように、僕自身もどこにもいない人になりたいんですよ。だから「内沼は優れた編集者だ」とかは言われなくていい。それよりも「あの人は何者なんですか?」って思われたい。何やってるのかよく分からないけど、なんか面白いですよねっていう。

ーー著書では「なりたい感じのイメージ」を目指そうと書かれてますよね。内沼さん自身は「よく分からない人」になりたかったんですか? 具体的にあの人みたいに、ではなくて。

内沼 具体的に誰っていうのはないです。ただ、よく分からない人ってたまにいるじゃないですか。糸井重里さんとか、菊地成孔さんとか、いとうせいこうさんとか、領域を横断している人。でも今挙げた人たちはそれでもまだイメージがありますよね。できればイメージもないくらいのよく分からない人になりたいんです。あ、そういう意味では高城剛さんとかそうかもしれないですね。

ーーあの人は本当に何してるか分からない領域ですよね(笑)。

内沼 まぁブランディング的な考え方をすると、まったく何してるのか分からないっていうのはあまりよくないのかもしれないけど。

ーーホリエモンもよく分からないです。

内沼 そうそう、ネットから出てきた人にも、分からない人が多いですね。ひろゆきさんとか。ただ、公に言えないことが多くてクローズドであるがゆえによく分からない人というのではなくて、なるべくオープンでいたい。要は切り口がたくさんありすぎるが故に、何してるかよく説明できないっていう感じですね。別にそうなること自体が目的というのではなくて、自分がちゃんとその都度面白いと思うことをやれる環境にい続けることができれば、結果的にどんどんそういう自分になっていくだろうな、という感じです。

ーーでは最後ですが、内沼さんの今の目標はなんですか?

内沼 うーん、ちょっと質問と違うかもしれないですけど、僕は今年30歳になったんですが、そういう時によく「20代に比べると30代はあっという間だよ。40代はもっとあっという間だよ」とかって言う人がいるじゃないですか。僕はああいう決め付けがすごく嫌いというか、ナンセンスだと思っているんです。それはその人たちの毎日が年をとるほど単調になっているだけ。それで時間が早く感じているだけで、もちろん年をとれば冒険できなくなるというのは一般的にそうかもしれませんが、それはあなたの怠慢の話であって僕とは関係ない、と思うんです。

ーーあー! 確かにそうかもしれないですね。

内沼 だから僕の30代の目標は、20代よりも長い10年間を送ることなんです。僕は20代の頃に色々やってきたと思っていて、後悔はしてないし、まあまあよくやったと思っています。だけどそれ以上にもっと充実させることによって、若い人に「30代はあっという間だよ」とか言うヤツの横で「そんなことないよ。こいつは怠けてただけで、30代のほうがもっと長くすることもできるよ」って言いたい、言える自分でありたいんです。

ーーなんか格好いいです!

内沼 実際僕は27歳より28歳のほうが、28歳より29歳のほうが長かったんですよ。多分それはその時のほうが経験を詰め込んでるからなんですよね。もちろん何でも詰め込めばいいわけではないのでバランスを取りつつ、毎日充実させてたくさんアウトプットしていきたいなと思っています。



次号予告


どんな相談をしてもすぐに色んなアイデアが出てくることに驚いた。こういう人をクリエイティブディレクターというんだなぁと実感。

どんな相談をしてもすぐに色んなアイデアが出てくることに驚いた。こういう人をクリエイティブディレクターというんだなぁと実感。


ぜひこのインタビューを! おまんま食い隊への挑戦状をひっさげて新人が現れた? 次回は、新しい顔ぶれによる企画をおとどけする予定。おもしろい企画があれば、あなたもおまんま食い隊になれる! お楽しみに!


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専用ブログ「おまんま食い隊レポート」でメイキングも随時掲載

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