現在フリーライターとなって約一年の、田島太陽と加藤レイズナ。ともに本連載「お前の目玉は節穴か」のレギュラーライターであり、WEBや雑誌を中心に活動中。そんな時出会った本が、大先輩ライター、北尾トロ、下関マグロが駆け出しの新人だった時代を交互に綴った青春ノンフィクション『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』。今回は、この本を課題本に、新人ライターふたりに対談してもらいました。20数年経った今、フリーライターの状況ってどう変わったんだろう? 収入は? 職場は? どんな仕事してるの? かっこいい? ダサイ? モテる? 辛い? 楽しい? なんでフリー? そもそもどうしてライターに? そして二人の関係は?
聞き手は、ライター経験約4ヶ月の超新人、ジャニーズが好きすぎるあまりいつの間にかライターになっていた夏トマト。新人のおふたりに超新人が聞く、今フリーライターであること、フリーライターである意味。『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』担当編集者の、ポット出版大田洋輔さんも遊びにきてくれました(偶然にも、大田さん・太陽さん・夏トマトの3人は同い年)。昭和が終わる頃生まれた人たちが集結して、さてどんな話になるのでしょうか。




「つくりたい」想いはかわらない


田島太陽(たじま・たいよう)PROFILE

1984年生まれ。フリーライター。日大法学部卒。出版社退社後、「20代クリエイター限定インタビューマガジン creatalk」を開設。「エキレビ!」レギュラーライター。WEBや雑誌でのインタビュー記事が中心。また編集、企画ディレクション、コピーライティング、電子書籍、ウェブ製作など幅広い仕事を手がける。ものごし柔らかな話し声や相槌がとても心地よく、数分話しただけで心を許せてしまう安心感がある。コミュニケーション力の高さは、これまでこなしてきたインタビュー経験の賜物。穏やかな顔つきと対照的に奇抜なヘアスタイルが印象深い。

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田島太陽(たじま・たいよう)



「何ページ何行目のとこ、超共感しません?」

と本をパラパラめくりながら対談スタート

「何ページ何行目のとこ、超共感しません?」と本をパラパラめくりながら対談スタート。この本の編集を担当された大田さん(写真下)は、偶然にも太陽さんのお友達。


──太陽さんも加藤さんも、フリーライターになって約1年。トロさんとマグロさんの駆け出し時代の様子を読んで、どんな印象をもちましたか?

加藤 俺この時代だったらライターになってないっす。めんどくさいじゃないですか手書きでテープ起こしなんて! 気が狂いそうですよ。

太陽 手書きは今となっちゃ考えられないよね。

加藤 ライターの三種の神器が留守番電話・ワープロ・FAXって書いてあるけど、そもそもFAX持ってないですもん。

太陽 俺もFAXは持ってないや。時代とともにテープレコーダーとか名刺も加わってくるとも書いてあるよね。今の三種の神器っていったらなんだろうね。パソコン、レコーダー、あとは携帯かな?

加藤 昔と今で、レコーダーだけが変わってないんですよね。早く何かそれに代わるものが出てきてほしいですよ。テープおこしがとにかく辛いじゃないですか。

太陽 ほんっとにしんどいからねぇ。あれさえなかったら超楽しい仕事だと思うもんね。

大田 おふたりともフットペダルは持っていないのですか? 僕は使ってますよ。再生・停止・巻き戻しなど足で操作できて手動よりも全然効率いいですよ。

加藤 へー! パソコンで使えるのもあるんですね! カセットテープのなら聞いたことあるけど。

大田 USBで繋げるんです。ガジェット感もワクワクするし、僕はテープおこしは結構好きなんですよ。おこす段階でバッサリカットしたりして編集するのも気持ちいいですし。


──昔と比べて、仕事の内容や環境なんかはどうですか?

太陽 編プロのいい加減さとかは全然かわってないなーと。先輩が全然おしえてくれないとかね。

加藤 俺、会社経験ないんでそこ聞きたかったんですよね。

太陽 出版社に内定もらって、大学卒業前から働いてたんだよね。初日、午後1時に来てくださいって言われてたから行ったら、フロアが真っ暗で誰もいなかったの。場所間違えたのかなと思って1回下に戻って人に聞いたら、あってますよって言われて。それでおそるおそる入っていったら、暗がりの中パソコン打ってる事務のおばちゃんと、その辺に寝てる人がいて。起こしたら「ここ座って待ってて」って言われたんだけどいっこうに人が来ない。エロ系の本とかDVD作ってるとこだったので、2時間くらいエロDVD見て待ってた(笑)。ようやく3時頃人が来るようになったんだけど、「コレは本当に会社なのだろうか」って思いましたね。


──この本にもエロ業界は出てきますね。エロで下積みしている人って多いんですね。

太陽 エロ出身ライターってサラブレッドって気がしない?

加藤 ふーん。

太陽 今40代とかで一線でやってる人ってそういう人多い気がするんだよ。

加藤 エロ仕事で、なんかすごい話ないんですか。恥ずかしかった話とか。

太陽 んー、恥ずかしいなんてないよ。だってみんな裸なんだもん。服を着てる人のが少ないんだもん現場は。カメラマンもパンツ一丁。

加藤 なんですかそれ、ユートピア(笑)。カメラマン脱ぐ必要ないですよね。つーかなんの現場の話ですか?

太陽 いやもう本番。絡みとかの撮影。確か面接でも「誌面出たりとかはないから、そういう心配はしないで」とかなんとか言われたんだけど、すぐ出た(笑)。俺が知ってるうちは全部自分でモザイクかけてたから顔は出てないけど。

加藤 自分の裸見ながら自分でモザイクかけるんですか! そんなことまでやってるんですね。俺辞めますよ、そんなんやれって言われたら。

太陽 それ自体に抵抗がなかったわけじゃないんだけど、「雑誌をつくりたい」とは思ってたから。この本にも「エロ本といえどやってることは他の雑誌とかわらない」って書いてあったじゃない。誌面づくりはみんな真面目にやってるしね。会社選んだのもそんな深い理由はなくて、雑誌つくれるとこだったらよかったのかな。書くのが好きで出版社に入ったってのもあって、ライター使わない仕事は自分で書いたりとかもしてました。



フリーライターになった理由


加藤レイズナ(かとう・れいずな)PROFILE

1987年生まれ。フリーライター。「エキレビ!」レギュラーライター&編集2号。日経ビズカレで「ゆとり世代、業界の大先輩に教えを請う」連載中。アニメ「プリキュア」通としても知られ、ムック「プリキュアぴあ」に参加。NHK-BS2「MAG・ネット」プリキュアシリーズ特集に出演。「SQUARE ENIX」「アルティメットゲーマーズ」 や「日本一ソフトウェア」ではゲーム実況プレイヤーとしても活動。自分の大好きだった「プリキュア」のシリーズが終わったときは、この世の終わりだと思ったそう。ゲーム実況プレイヤーならではの鋭いツッコミが気持ちいい。

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加藤レイズナ(かとう・れいずな)



将来の夢はなかったのですかと聞くと

食い気味で「なかったです」と答えた加藤さん

将来の夢はなかったのですかと聞くと、食い気味で「なかったです」と答えた加藤さん。でも今はライター以外の仕事は考えられないのだとか。


──会社を辞めて、フリーになったきっかけは?

太陽 会社は「早めに辞めよう」とは思ってたんですよ。10年とか続けてもし子どもができた時に、言えないじゃん娘に。「エロ本作ってる」って。友達には全然言えるけどさ。グループが大きかったので、自社ビル内で色んな雑誌にガンガン営業してから辞めれば、ライターとしてやってけるって思ってました。でもなんとなく辞めちゃったんですけど。その後、会社にいた頃付き合いのあったライターさんが、グルメ本のライターの仕事手伝ってって言ってくれて。そっから始まりましたね。


──加藤さんは就職せずにそのままフリーになったんですよね。

加藤 2007年くらいから、友だちとニコニコ動画でゲーム実況をあげてたんですよ。それをこの「節穴か」の企画編集もやってるフリー編集者のアライユキコさんが観ていて、雑誌「Quick Japan」に紹介してくれたんです。


──そんなきっかけが。

加藤 最初は、アライさんはゲーム実況の本を作りたいねって言ってたんです。「ゲーム実況から著作権を考える」みたいなことだったかな。で、いっしょに企画を考えてるうちに「文章書くのに興味ない?」という話が出て来た、雑談みたいに。で「Quick Japan」のコラム欄に挑戦することになったんです。若手ライターの登竜門みたいなもんだし、書いてみない? って。


──お友だちもいっしょに。

加藤 そうですね。最初は4、5人いました。で、俺は、実況とは関係なく「レイズナ」名義でプリキュア関連のレポートをブログにたくさんあげてたこともあって、書くの楽しかったんですね。まあ直しもいっぱいくらったし、苦労もしたんですけど、諦めちゃう人がたくさんいたなかで、俺のはなんとか掲載された。もちろん「プリキュア」について書きました。それは単純にうれしかったですね。でも、その時点でライターになる気なんてなかったんですよ。ブログで好きなこと書いてただけですし。そもそもライターって仕事知らなかったですもん。「Quick Japan? なんすかそれ?」みたいな感じだったし。それまでは、夜ごろ起きて、朝寝て、ゲーム実況やって、ダラダラ楽しいフリーターでした。夢も特になかった。サラリーマンにもなりたくなかった。フリーターからフリーライターなんでずっとフリーです。



お互いの記事を読んで、刺激を受ける


夏トマト(なつとまと)PROFILE

1984年生まれ。フリーライター。「エキレビ!」レギュラーライター。電書雑誌よねみつ「アラシックニッキ」連載中。デザイン事務所退社後、宣伝会議の「編集・ライター養成講座」、「編集・ライター養成講座 上級コース プロフェッショナル・ライティングクラス」を受講。執筆ジャンルはジャニーズで、嵐と関ジャニ∞が中心。実体験を含めたファン目線のリアリティを書くよう心がけている。フリーのグラフィックデザイナーとして電子書籍制作や、各種デザイン、ブランディングなども行う。昼間は受付嬢。特技は暗算。

ツイッター

夏トマト(なつとまと)


「creatalk」、100人達成という目標はまだかわらないそう

「優先順位の高い仕事が次々くるから今はあんまり手がつけられない」

「creatalk」、100人達成という目標はまだかわらないそう。「優先順位の高い仕事が次々くるから今はあんまり手がつけられない」と嬉しい悲鳴をあげていました。


──最初から自覚的にやろうとしていた太陽さんと、やる気がなかった加藤さんは、すごく対称的ですね。でも今は、フリーライターという同じ職業。お互いのことはどう思ってますか?

太陽 友達ってほどふたりで会ったりもしないし、そこまでライバルって気もないんだよね。「同じ境遇の人」って感じかな。でも加藤くんの記事は読むよ。石田衣良さんのインタビュー(*1)は好きだなぁ。ヤバい現場を丸々ネタにしちゃってるでしょ。こういう構成のしかたもアリなんだって思ったし、自分の仕事にもヒントもらった。この前会った編集者さんもあの記事読んだことあったらしくて、「おもしろかった」って言ってたよ。反響すごいでしょ。

※(注1)
日経BPnetビズカレッジ内の連載「ゆとり世代、業界の大先輩に教えを請う」でのインタビュー。話をひき出す側の加藤が、逆に石田に説教されている


加藤 掲載当時、ツイッターで記事のURL検索するとぶわーって出てきましたね。けっこう、多くの方が見てくださっていて、いまは20万近いアクセスになってるらしいです。

太陽 すごいね、でもインパクトあったもんな。

加藤 太陽さんは、バイタリティあるなと思いますね。今は全然更新されてないあの「creatalk」(*2)ですけど、1回の取材時間3〜4時間ってすごいと思います。あ、太陽さん「creatalk」って知ってます?最近全然更新されてない「creatalk」ってサイトなんですけど(笑)。

※(注2)
20代クリエイター限定インタビューマガジン「creatalk」は、太陽が25歳の時に始めたインタビューサイト。自分が30歳になるまでに100人にインタビューするという目標を掲げてスタートした


太陽 あ、はい(苦笑)。あれは取材時間は最初から4時間って決めてるわけじゃないんだけどね。一番最初の竹内道宏くんが、聞いてないことまでたくさん喋ってくれたの。それで脱線しつつも根気強く聞きたいことを全部聞いてたら4時間経ってたってだけで。でもどんどん短くなってるよ。最近は2時間とか。要領よくなってきたのかも。加藤くんは得意分野がしっかりしてるよね。

加藤 「プリキュア」ですよね。でもそれだけじゃダメなんですよ。初めて会う編集の人に「何書いてるんですか? プリキュア以外で」って聞かれるんですよ。それで答えられないんです。この前も、アニメ雑誌の編集者さんに、「プリキュア以外でどんなアニメ見てるんですか?」って聞かれて困った。他にあまりアニメ見てないし、アニメだから「プリキュア」を見てるわけじゃないし。

太陽 俺も、「何書いてるんですか?」って聞かれると結構困るな。でもライターなんて強みがないとダメだと思うから、そういうのがあるのは羨ましいけどね。俺は何もないなってのはいつも思うから。



ゆずれない専門分野が必要だ


ゆっくりと話を掘り下げていく太陽さんと、それにツンツンとトゲを刺していくような加藤さんのツッコミ

ゆっくりと話を掘り下げていく太陽さんと、それにツンツンとトゲを刺していくような加藤さんのツッコミ。マジとおふざけのバランスがとても良いコンビです。


──加藤さんの「プリキュア」のように、太陽さんは、自分の軸としていきたいテーマはありますか?

太陽 ないですねー、何も。困ったことに。

加藤 でも太陽さん幅広いっすよね。なんでもできちゃうって感じ。

太陽 なんでもできる=なんにもできないってことなんですよ。器用貧乏。まだ若いからおもしろがって仕事をふってくれる人はいるんだろうけど、なんか1個強い専門分野を持たなきゃなとはすごい思ってる。加藤くんは、最悪他に何も書けなくても「プリキュア」だけは書けちゃうわけじゃん。それはライターとしては正しいんじゃないかな。

加藤 そういう武器がもう2〜3個あればいいと思うんですけどね。太陽さんは出版社に戻る気はないんですか?

太陽 割となんでも要領よくやれちゃうタイプだから、会社員で編集やってた方がいいのかなーとも思ったりする。会社辞める時もたしか編集長に言われたんだよ。デザインもやるし原稿も書けるしディレクションとかもできるけど、何かひとつ特徴というか強みがないとダメだよねーって。昔からそう。通信簿もオール4で5がないみたいな。

加藤 小さい頃はそれで優等生だったんですよね。

太陽 そうなの。でも飽きっぽいんだよね。会社入ったら入ったで、ひとつの雑誌ずっとやってたら飽きてくると思う。この雑誌楽しそうだなーって思うのはあるけど、絶対入ったら大変でしょ。どっちやっても大変だったらまだフリーでやってた方がいいと思うし。まだしばらくフリーでやるかな。


──加藤さんのプリキュアについて聞かせてください。「ファン」から「仕事」に変わったわけですが、どういう目線で見ているのですか?

加藤 純粋にファンとして見るだけでなく、仕事モードで見て、考えることが増えました。

太陽 変なこと言えないよね。ツイッターとか色んな人見てるしね。


──でも、プリキュアのプロデューサーや声優など、関係者にたくさん会えてますよね。自分の好きな人や有名人に堂々と会えるのは、ライターの特権かなとも思います。仕事で好きな人に会いたいって思ってる人に、何かアドバイスなどはありますか?

加藤 「ファン」として作品を観るだけの立場でいたいなら、会わない方がいいかもしれないです。

太陽 仕事だけじゃなくて、会って飲みに行く関係になれたらいいよねー。

加藤 そうなったら、楽しいですけど、やっぱり緊張しますよね(笑)。

太陽 会えるけど原稿にしなきゃいけない大変さと、会えないのとだったらどっちがいいの?

加藤 それで俺は会う方を選んだんです。大好きな作品だから、気になることも多いし、知りたいわけじゃないですか。それで、聴いたことを、自分のなかで留めておくだけじゃなく、多くのファンの人たちに伝えたいんです。でも、自分はただのファンではいられなくなりますよ。夏トマトさんは、どっちがいいですか? それでも「嵐」に会いたいと思います? ある程度の覚悟は必要だと思います。


──会いたいです。

加藤 ライブに行っても、キャーッて言えなくなりますよ。

──会って名前呼んでもらえるんだったら、もうキャーッて言えなくていいです。

加藤 まぁ確かに、一個人として認識してもらえるのも嬉しいことですよね。

太陽 でもやっぱり飲みに行くだけの関係が一番いいね!



次号予告


『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』北尾 トロ、下関 マグロ/ポット出版

『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』北尾 トロ、下関 マグロ/ポット出版
フリーライターとして数々の著書を出版している、北尾トロと下関マグロ。ふたりの駆け出しライター時代、25〜30歳(1983〜88年)を振り返った青春エッセイ。定職につかず、家を転々とし、将来設計もなくなんとなくただ「書く」という仕事をこなして暮らしていた。金も地位もないけれど、時間と人脈には恵まれていた。当時のライターの仕事内容や生活ぶり、そして悩みなどがリアルに綴られている。まるで本の中から、男の部屋のこもった臭いと、楽しそうな笑い声が聞こえてきそう。


番外編前編いかがでしたか? 2010年4月「節穴1」がはじまったときは、「フリーライターです」と名乗るのもぎこちなかった田島太陽と加藤レイズナ。約1年の連載のあいだに、仕事も順調に増え、すっかり頼もしく(ふてぶてしく?)なりました。初参加、夏トマトの初々しくも容赦ない質問に、終始笑いにつつまれての楽しいの対談。後編は、現場での失敗談やお互いのワースト仕事とベスト仕事など、ますます遠慮会釈なくツッコんでいきます、お楽しみに。

「お前の目玉は節穴か」では、おもしろい取材企画を募集しています。ブログなどで具体的に企画をはじめているかた、道場破りもありです、ぜひお問い合わせください。プロアマ問いません。編集担当のツイッター @kaerubungei までどうぞ。

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