カメラを向けるやいなやさまざまなポーズをとりはじめる西尾さん。決まってます!

「西尾監督が常に言っていました」
『プリキュア シンドローム!』でのインタビュー中、鷲尾天プロデューサーをはじめ、さまざまな人が、口をそろえて言っていたことばだ。
「いやな映像にしない」
「男の子だから、女の子だからという言い方は絶対にしなかった」
「子どもは無条件で受けれてしまうからこわいんだよ」
プロデューサーから、演出、作詞家、広告代理店にいたるまで、みんなが、初代「ふたりはプリキュア」「ふたりはプリキュアMaxHeart」の監督、西尾大介のことばを拠り所に、「Yes!プリキュア5」「Yes!プリキュア5GoGo!」をつくっていた。
「観ている方はそれだけで笑ってしまう。あれは西尾さんの特徴だなあ」「西尾さんのおかげで直接参加していなくても『プリキュア』がどういうものかなんとなくわかっていた」
以前インタビューした、宮原直樹監督も、西尾さんの話をするとき、とても嬉しそうな表情をしていた。
演出とはなんなのか、エンターテイメントとは、子ども向けに作品をつくる意味とは?
だいぶ前、「プリキュアぴあ」でいちど鷲尾さんと対談してもらったことはあったけど、もう一度話を聞くべきだ。そう思い、西尾さんに取材の依頼をした。




ずっとストーリーとセリフと絵を考えていた


西尾大介


西尾大介 PROFILE

1959年4月1日生。広島県三次市出身。東映アニメーション所属。1981年東映アニメーション第一期研修生として入社。「Dr.スランプ アラレちゃん」で演出デビュー。「ドラゴンボール」「ドラゴンボールZ」「蒼き伝説シュート!」「ゲゲゲの鬼太郎」(’90s)「金田一少年の事件簿」「エアマスター」「ふたりはプリキュア」「ふたりはプリキュアMaxHeart」「ロボディーズ -RoboDz- 風雲篇」などでシリーズディレクターを務める。「ドラゴンボール 神龍の伝説」「ドラゴンボールZ」「ドラゴンボールZ 激突!!100億パワーの戦士たち」「金田一少年の事件簿2 殺戮のディープブルー」「ワンピース ジャンゴのダンスカーニバル」「インターステラ5555」など映画監督として劇場版も多数手がける。「探検ドリランド」ではエグゼクティブプロデューサー、『DVD付き 金田一少年の事件簿 20周年記念シリーズ(3)限定版』『(4)限定版』ではプロデューサーとして参加。



金田一少年の事件簿

名探偵、金田一耕助を祖父に持つ高校生、金田一一(きんだいちはじめ)が、祖父譲りの推理力で次々と難事件を解決していく。今回、『DVD付き 金田一少年の事件簿 20周年記念シリーズ(3)限定版』『(4)限定版』に同梱されるDVDには、2008年に連載、『金田一少年の事件簿 黒魔術殺人事件』に収録されているエピソード「黒魔術殺人事件」を収録。金田一一最大のライバル、地獄の傀儡師・高遠遙一との戦いを描く。©天樹征丸・さとうふみや/講談社
『DVD付き 金田一少年の事件簿 20周年記念シリーズ(3)限定版』
2012年12月17日(月)発売。
※予約締切:2012年11月2日(金)
3,280円(税込)
・『DVD付き 金田一少年の事件簿 20周年記念シリーズ(4)限定版』
2013年3月15日(金)発売。
※予約締切:2012年2月1日(金)
3,280円(税込)


──お久しぶりです。いやー、タバックはいつ来ても緊張します。

西尾 そうですか?

──すぐ隣りの部屋でアフレコが行われていますしね。西尾さん今日はジャケットですか。

西尾 取材だからジャケット着てきたのに、ヒゲを剃ってくるのを忘れたんだよね。

──似合っていますよ。すごく。

西尾 そうかな?

──西尾さんはいまなんのアニメをやっているんですか?

西尾 (プリントアウトされた紙を取り出して)これにプロデューサーとして参加しています。

──『金田一少年の事件簿』。20周年記念シリーズ第3巻と第4巻。あ、「黒魔術殺人事件」のオリジナルアニメDVDが同梱されるんですね。テレビシリーズでは「金田一少年の事件簿」(1997〜2000年)のシリーズディレクターをやられていましたね。どうでしょう、久しぶりの「金田一」は。

西尾 いやー、「金田一少年の事件簿」という作品自体が持つ難しさを改めて実感しました。

──テレビシリーズや映画、今回のようなOAD。原作では何話もかけてやるお話を、場合によっては短くまとめなくてはいけない。

西尾 そうなんです。原作にある部分をダイジェストにすることで、前のシーンと次のシーンがつながらないことがある。原作では部屋の中だから成り立っていた説明のシーンが、アニメでは外のシーンにしないといけないときがある。そうすると、セリフは、原作と同じ内容をしゃべっていても、当然中身は変わってくるんです。

──部屋の外でしゃべらせなきゃいけない。もともとは部屋の中だから成り立っていた会話だから。

西尾 話が通じるように、各シーンの成り立ちを考えなおさないといけないわけですよ。毎週毎週、ずっとストーリーとセリフと絵を考えていた記憶がありますね。



人から言われて気付くと感動する


加藤レイズナ(かとう・れいずな)


加藤レイズナ(かとう・れいずな)PROFILE

1987年9月11日生。フリーライター。「エキサイトレビュー」レギュラーライター&編集。Web幻冬舎「実況野郎Bチーム」でインタビューの面白さに目覚める。9月から「cakes」で新連載スタート。日経ビズカレッジ「世の中、これでいいんですか〜ゆとりの社会学習」連載中、「プリキュアぴあ」に参加。NHK-BS2「MAG・ネット」のプリキュアシリーズ特集に出演。はじめての著書「プリキュア5」シリーズ、インタビュー本『プリキュア シンドローム!』小社より発売中!

Twitter:@kato_reizuna加藤レイズナの仕事一覧ブログ



アフレコスタジオ、タバックでのインタビュー。

アフレコスタジオ、タバックでのインタビュー。


──このインタビューシリーズで何度も登場していただいている、鷲尾天プロデューサー。ゆくゆくはおふたりで「ふたりはプリキュア」を立ち上げる。最初にお仕事をされたのは「金田一」からですよね。

西尾 劇場版の「金田一少年の事件簿2 殺戮のディープブルー」(1999年)で、アシスタントプロデューサーとして入ってもらっていました。ずいぶんお世話になりましたよ。そのときは、鷲尾くんとふたりでとにかくセリフを考えましたね。

──鷲尾さんが報道記者だったときの経験がそこでかなり生かされたと聞いています。

西尾 たとえば「殺戮のディープブルー」では、平田広明さん演じるいつき陽介というキャラクターが、東北の定食屋でふとニュースを観る。

──ああ、公衆電話から東京に電話していましたね。「テレホンカードがない!」って10円玉と100円玉に両替していたシーンを覚えています。あれは秋田でしたっけ。

西尾 そのときのシーンで、鷲尾くんが「報道のときは、こういう言い回しと、単語を使いますよ」って。

──それだけでリアリティが増しますよね。

西尾 もうぜんっぜん違う! ヘリの中で、「残った人質を無事保護!」って聞こえてくるのも鷲尾くんからのアドバイス。警察無線で(手を口にあてて)「ケーシイチマルヨン! ケーシイチマルヨン!」っていう感じとか。

──原作とは違うところで苦労するんですね。

西尾 鷲尾くんはあの映画でノート2冊くらい潰して、結局採用されたのはセリフ一行だけだったと言ってこぼしてました(笑)。

──ははは、アシスタントプロデューサーの仕事、すごい。

西尾 僕も、ずっと考え込んでいると、次の作業が手に付かない。それを、他人の気付きで乗りきれるときがあって。「殺戮のディープブルー」で、複数人が人質になって部屋に閉じ込められている。お互いが口論をするんだけど、そこで気が効いたセリフか、本質を言い当てたことを言わせないと、なかなか先に進めない。そのとき鷲尾くんが書いた中に「あんたらが欲しいのはセンセーショナルな看板だけだ!」と批判するセリフがあって、「それだー!」って。もう、それで、そのシーンを切り抜けることができたんです。

──その「気付き」というのは、人と話しているときのほうが多いですか?

西尾 いや、本来はひとりのときですね、絵コンテとかプロットを書いているときなので。人との会話で解決することはめったにない。「殺戮のディープブルー」のラストシーンに入るきっかけをどうするか悩んでいたことがあって、けっきょく、金田一二三が藍沢茜に声をかけるのをきっかけにしたんだけど、これはずっとわからなかった。あるとき作画監督の窪秀已さんに、「ずっと前のシーンで、茜が二三の汗を拭いてあげるシーンがある。このときハンカチをもらったことにして、ラストで二三がハンカチを返して声をかければどうですか」と言われて、「それだー!」って。人から言われて気付くと感動するよね。



アフレコの一週間前くらいまで引っ張った


途中、某声優さんが乱入、「西尾さん大丈夫? ほんとうにしゃべれるの?」と心配しながら部屋を後にしました。

途中、某声優さんが乱入、「西尾さん大丈夫? ほんとうに(真面目に)しゃべれるの?」と心配しながら部屋を後にしました。



「ドラゴンボール」「Z」で子ども時代を過ごしたので、当時のお話をアレコレ聞きまくり!

「ドラゴンボール」「Z」で子ども時代を過ごしたので、当時のお話をアレコレ聞きまくり!


──へええ、チームで作っているからこそのプラスアルファがある。スタッフ全員が作品にのめり込んでいるから起こるんでしょうね。集団制作ならでは。

西尾 僕、すごい初歩的なことで悩んでいると思うんですけど、ひとことでいうと、配分のようなものかもしれない。「ここまでは自分ひとりで考えてもいいけど、ここからはみんなでやろうぜ」という配分が、この歳になってもうまくいかない。

──それは、「ここは監督がやらなくてもいいんじゃないですか?」とか?

西尾 ほんとだと、とっとと自分の手を離してみんなの作業にしたい。でも、まとまってない段階で手を放しちゃうと、残された暗雲感に耐え切れない。みんなでつくればプラスアルファが生まれる、というのは、指針や目的などの確実感があった上での話。最初のハードルが低いところにみんなが集まっていいものができたといっても、それ自体なにかをちゃんと表現できてるかどうかはわからないわけです。

──手を放せないというのは、どこの段階から?

西尾 もうね、絵コンテから(笑)。

──コンテが終わらないということは、アニメーターさんも絵を描けないし。アフレコもできない。

西尾 そっとしておいて欲しいところをストレートに斬りこんできますね(笑)。そういえば、アフレコの一週間前くらいまで引っ張ったこともあります。もちろん大部分はすでに作業中なんだけど、最後にあがった部分が困っちゃうよね〜。

──どこまで引っ張れるかみたいな。

西尾 なにか方法を考えて編集するまでの素材にしましょう、とかね。みんなに「工夫すればできるでしょ?」とは言えないです。工夫というのは、いろいろなところに対して綿密に、細心の注意を払いながら説明をするということ。みんなが工夫のあるしんどい仕事を好きなわけではないし、それを強いるにも時と場合があって……(笑)。

──どこかでルーチンにしないと。

西尾 そうしないと身がもたないのもわかる。どこかでそのバランスを取らないといけない。でも、どっちがいいって話じゃないと思うんですよ。



あんな天才にはかなわない


ドラゴンボール

「ドラゴンボール」(1986〜1989年)
岡崎稔と共同で、西尾大介がはじめてシリーズディレクターを務めた作品。
©バードスタジオ/集英社・フジテレビ・東映アニメーション



ドラゴンボールZ

「ドラゴンボールZ」(1989〜1995年)
199話(「逃がすな勝利!!決めろ超速かめはめ波」※魔人ブウ編直前の、アニメオリジナル「あの世一武道会編)まで西尾大介がシリーズディレクターを担当。
©バードスタジオ/集英社・フジテレビ・東映アニメーション



シリーズディレクター、演出のお話をたくさん聞いていますが、現在はプロデューサー職がメインだそうです。

シリーズディレクター、演出のお話をたくさん聞いていますが、現在はプロデューサー職がメインだそうです。



お話がとにかく面白くて、笑いっぱなしの2時間。

お話がとにかく面白くて、笑いっぱなしの2時間。


──「金田一」と同じく「ドラゴンボール」「Z」(1986〜1995年)も原作ものですよね。

西尾 「ドラゴンボール」「Z」のときこそがむしゃらでしたね。やってもやっても、鳥山明さんの原作に及ばない。ハードルが高すぎる。「10年近くやったんだからもう飽きたでしょ」って言われることもよくあったんですけど、全然飽きない。できてないことが多い。ずっと、何が目標で、何をやれば答えが見つかるかわからなかった。

──「ドラゴンボールZ」の途中で、「蒼き伝説シュート!」(1993〜1994年)に行かれますよね。

西尾 スパンっと移ったから「ドラゴンボール」から離れることができたかもしれない。ひとつのきっかけですね。

──アニメ「ドラゴンボール」は、原作との戦いだったと勝手に思っていて、すぐ原作に追いついていましたよね。あれもつらかったんじゃないでしょうか。

西尾 よくぞ聞いてくださいました。そうだよ、すごくしんどくてさ。でも、逆にオリジナルストーリーで、いかに「ドラゴンボール」っぽくつくるかでしたね。でも、ほんとうに大変だったのは、どうすればちゃんとまとまった話に見えるかでした。

──それはオリジナル関係なく?

西尾 そう。たとえば漫画原作で、ピッコロがいるコマと、ベジータがいるコマがあるとするでしょう。アニメにしたとき、そのピッコロのコマで来週に続くとする。でも、次の週はベジータからははじまらない。ピッコロとベジータのコマの間で丸々一本つくって、その話のラストでベジータのコマで終わる。という手法を取って伸ばしたこともありました。

──そこで稼いで、原作につなげる。

西尾 原作ではコマの間に話はないでしょ。シリーズ構成の小山高生さんをはじめ、脚本の人たちは大変な思いをしていたと思います。でも、そのコマを埋めたという感じにしないための工夫はしていました。コマとコマの間で一本バトル回をつくっても、他の回と似るんですよ。いかに「この話数ならでは」という感じを出すのかは悩みでした。

──原作でバトルに1話つかっていても、それをアニメにすると数分で終わっちゃいますよね。

西尾 「ドラゴンボール」をやっているときに、原作があってなるほどと思うことがあって、戦いながらしゃべっているじゃないですか。あれはオリジナルでやろうと思ったら大変なんです。ああいうところは刺激になったと思います。

──そこは気付かなかったです。でもたしかに悟空とフリーザが戦っているときに、サイヤ人の話になって、「きさまらサイヤ人は罪のないものを殺さなかったとでも言うのか?」「だから滅びた……」「オレが滅ぼしたんだ。サイヤ人はなんとなく気にいらないんでね」「こんどはこのオレがきさまを滅ぼす」(『ドラゴンボール完全版』22巻)のくだりとかは好きです。好き勝手侵略してきたサイヤ人とその末路。それはフリーザも同じ。悟空にもサイヤ人の血が流れていること。

西尾 オリジナルでつくると、ストーリーを説明するためのセリフほど、ストーリーっぽくないんです。でも、鳥山さんは、ちゃんとバトル中でもセリフになっていて、ストーリーをつける。決して説明だけになっていない。

──意味がある。逆に、オリジナルでバトル1話使おうと思ったら大変ですよね。

西尾 戦闘シーンが増えると、絵は動いているけど、ストーリーは動いてないもんね。でも、鳥山さんは、技巧でやっているとは思えない。やっちゃうとそうなっちゃう人なのかな。たとえば、原作があるアニメをつくるとき、僕たちは冷静に判断するから、技巧の部分も分析をする。鳥山さんの「やっちゃうとそうなっちゃう」というところをテクニックとして取り入れていかないと、とてもあんな天才にはかなわないですよね。

──がむしゃらの意味がようやくわかった気がする……。西尾さんは「ドラゴンボール」がはじめてのシリーズディレクター作品なんですよね。

西尾 はじめは岡崎稔さんのアシスタントでしたけどね。だからオープニングもはじめて手がけたんだよね。

──あ、そうか! シリーズディレクターがオープニングの絵コンテを描くんですもんね。もう、何百回も観てます。

西尾 初代オープニングで、「この世のどこかでひかってる」ってところでで、亀仙人のハゲ頭がキラっと光る絵にしたんですよ。そうしたら、「絵と歌詞をあわせすぎだろ!」って言われた(笑)。



次号予告


次号「ふたりはプリキュア」のあの話について語ってくれます! お楽しみにー。

次号「ふたりはプリキュア」のあの話について語ってくれます! お楽しみにー。


加藤レイズナの「プリキュア」制作陣インタビューシリーズ、ついに初代「ふたりはプリキュア」のシリーズディレクター西尾大介さんに会いました! まずは現在展開中の「金田一少年の事件簿」20周年記念企画の製作秘話から過去の映画、そして「ドラゴンボール」のエピソードまで話はどんどん広がっていきます。後編(9/15公開予定)では、「ふたりはプリキュア」の思いがけないあんな話やこんな話が!? 乞うご期待!

「お前の目玉は節穴か」では、おもしろい取材企画を募集しています。ブログなどで具体的に企画をはじめているかた、道場破りもありです、ぜひお問い合わせください。プロアマ問いません。編集担当のツイッター @kaerubungei までどうぞ。

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