清水ミチコ様

 関西には物真似文化が最近まで無かったというお話、驚きです。が、言われてみれば関西弁で物真似をする人って、あまり見たことがなかったかも……。

 清水さんの物真似で好きなものは数々あるのですが、先日、ユーミンの苗場のコンサート(SURF&SNOW in NAEBAというやつですね)に行きまして、清水さん演じるところの「ユーミソ」のことがつい、思い出されてしまった私。さらには、清水さんが真似るえなりかずき君の声とユーミソは似ているのではないか……等と、素敵なステージを眺めつつ、思っておりました。

 しかしユーミンの苗場のコンサートというのは、今年でもう三十三回目なのだそう。当然、客層も中年が中心でして、ポロシャツの襟を立てていたり、セーターを肩にかけていたりする人を見ると、「よっ、ご同輩」と、語りかけたくなるのでした。

 三十三年前にこのコンサートが始まった時は、さぞかし洒落た趣向だったのだと思います。スキーリゾートのホテルでコンサートというだけでも珍しいのに、「昼はスキーを滑り、ゆっくり食事をした後に楽しむコンサート」ということで、開始は夜の九時半。終演は十二時頃となるわけですが、お客さんは皆、ホテルに泊っているから終電など気にしなくてよい。

 私が高校生や大学生の時代は、ユーミンの苗場のコンサートのことを知ってはいたものの、「くーっ、洒落てる」と指をくわえて見ているだけで、行ったことはありませんでした。

 大人のためのコンサートという感じがして、二の足を踏んでいたのです。

 しかしそれから年月が経って、こういった大人の趣向のコンサートが増えたのかといえば、そうでもないようです。日本人は夜に弱いのか、コンサートでもお芝居でも、割と早めの時間に始まるものが多いのではないか。

 特に私が「それはないでしょう」と思うのは、歌舞伎の昼の部、というものです。昼の部は、開始時間が十一時であったりする。午前中から芝居というのも、何とも気分が上がらないのみならず、朝に弱い私としては、体調も上がっていません。劇場までたどり着くだけで疲労困憊、最初の時間はほとんど睡眠に費やさないと、残りの演目を見ることが不可能なのです。「これって、芝居を見に来る意味があるのか」と思うほどクタクタに。

 とはいえ江戸時代の歌舞伎というのは、早朝からぶっ通しで演じていたらしいので、十一時くらいでガタガタ言うな、ということかもしれませんが、「夜の部」というのも開演が午後四時台だったりするしなぁ。これはもう「まともに働いている人は見に来ないで下さい」と言っているようなものなのでは……。

 ということで、夜九時半開演というのは、私にとっては有難い限り。東京で仕事を終えてから新幹線に乗っても間に合いますし、終演後は寝るだけって、何てらくちんなことよ。外は雪、という非日常感もまた楽しい。

 ……のですが、今の若い人は「そんな遠いところまで行きたくない」と思うらしいですね。近くにいるお客さんの話を聞いていたら、「東京でのコンサートはいつも娘と一緒に行くのに、苗場については『そんな遠くまでわざわざ』と言われて、ついて来てくれなかった」と言っているではありませんか。

 えーっ、若い人ほど「遠くに行きたい」って思うものなのでは? ついでにスキー、は若者はしないにしても、スノボとかすればいいのに。……と私などは思うのですが、若者からしたら「面倒くさい」らしい。

 若者のスキー離れが言われていますが、彼等は色々と道具を用意して遠くの寒い場所まで行くよりも、家でぬくぬくしている方を選ぶのかもしれません。思い起こしてみれば、私も若者時代、スキーに行くのは確かに面倒臭かったけれど、でも周囲がみんな行くので、勢いで行っていたのだっけなぁ。

 フジロックのためなら若者は苗場に来るのでしょうが、あれは彼等にとって思いきり羽目を外せる村祭のようなものなのでしょう。寒い盛りに夜九時半からの数時間のために苗場へ赴くという行為は、バブル期を知る中年の心だけを揺すぶるのかも。

 あ、ユーミンのコンサートのもう一つの特徴といえば、男性同士のカップルが多いということですよね。それは清水さんのコンサートも共通しているわけで、短髪でガタイが良くてお洒落な男性達が客席のそこここに。「もったいない……」と、いつも思います。

 以前、その手の男性が、

「僕たちはMがつく人が好き! 松任谷由実、清水ミチコ、松田聖子、ミーシャ、槙原敬之!」

 と言っているのを聞いて「なるほどね」と思ったわけですが、しかし考えてみたら私もどっぷり、イニシャルM好き。……というわけで、「ゲイと芸」というのも、いつか考えてみるべきテーマなのかもしれないと、思ったことでした。

酒井順子

清水ミチコ
Shimizu Michiko

岐阜県生まれ。タレント。
新作ネタDVD『私という他人』、日記エッセイ『主婦と演芸』(幻冬舎)が発売中。

酒井順子
Sakai Junko

東京都生まれ。エッセイスト。
近著に『この年齢だった!』『下に見る人』『もう、忘れたの?』などがある。「週刊現代」「小説新潮」「別册文藝春秋」「週刊文春」などで、幅広く執筆中。近著に『泡沫日記』(集英社)、『そんなに、変わった?』(講談社)など。

Webマガジン幻冬舎 最新号 INDEXバックナンバー

Copyright © GENTOSHA INC. All rights reserved.
Webマガジン幻冬舎に掲載されている記事・写真の無断転載を禁じます。webmagazine@gentosha.co.jp