酒井さんと私とでこういうリレーエッセイをやりましょう、という話の時、なんとなく酒井さんは、「清水ミチコさんへ」「は〜い。では、私から酒井さんへ」という、『二人だけのやりとりのムード』のノリ、がちょい恥ずかしいかも、というようなことをおっしゃってたのを、このあいだふと思い出したのですが。

 あんがいこうやって始めてみると、アレですね。二人の文通、みたいな気配は、意外と希薄なのではないでしょうか。

 私は中学の時に、大好きだった私のアイドル同級生「よっちゃん」と、二人で交換日記をしておりました。その記憶がよみがえりました。

 地方にしては稀に見るかわいらしいルックス、成績も抜群で、おっとりした性格の上、運動神経まで優れているという、まるで次世代型の同級生、よっちゃんに、まわりは誰も嫉妬などできないほどでした。

「女はあまりに遠い存在のマリリン・モンローに嫉妬しない」

 糸井重里さんの名言のひとつです。

 自分に似たような存在にこそ嫉妬するもので、はるかに遠くなればなるほど、それは一緒にあがめたい。

 話がそれました。

 よっちゃんは、ややお笑いに厳しく、ちょっとやそっとでは口角でしか笑わないので、ウケた時の私は最上のヨロコビに溢れました。

 そんなよっちゃんと二人だけの交換日記ができるという私は(選ばれた!)と、優越感が走り、しかもこれは秘密、というのがまたさらに(ウケたい欲望)に火をつけました。

 ところが、はじめは(よっちゃんと私の二人きりの世界をナイショで構築!)のはずが、我ながら面白い文章を書けた時など、なんだか(早くバレればいいのに。ほかの人もこれを読んでくれるといいのにな)的な方向にちゃっかりなってたのを思い出しました。

 よっちゃんのお母さんも私の母も時々読んでた、つまりはバレてた、と知った時など、叱られる、と危惧しつつも(で、どうだった?)と感想が知りたくてしかたありませんでした。

 文章というものは、やはりネタにも似て、(共感こそ命!)なのではないでしょうか。

 もちろんギャラは貰えるに越したことはないけれど、タダでもいいから「私の発見」を認めて欲しい。そのためにはこの文章を読んでくださらぬか。

 なんて。

 ブログなどがそうですが、仕事ではない上、お金が派生しないのに、書かずにはいられない私。

 モデルの方なんかに多く見られる、イバリちらした、安っちい幸せ生活の文章のどこがいいの?と思うようなブログでも、そこには享受する人が必ずいる。

 ウケたい、発信したい、という人もいれば、またそれをウケてさしあげましょう、という人もなぜか平等にいるのも世の常のようですねえ。

 つまり誰でも、「ウケたい」という思いにつながってるんじゃないでしょうか。

 ウケたい=受け入れられたい

 とくにこれは女のあいだで、というのが好ましいのも特徴です。

 日常の視線の細やかなわかちあいの強さ、男にはどうしても理解できないところでもありそうです。

清水ミチコ

清水ミチコ
Shimizu Michiko

岐阜県生まれ。タレント。
新作ネタDVD『私という他人』、日記エッセイ『主婦と演芸』(幻冬舎)が発売中。

酒井順子
Sakai Junko

東京都生まれ。エッセイスト。
近著に『この年齢だった!』『下に見る人』『もう、忘れたの?』などがある。「週刊現代」「小説新潮」「別册文藝春秋」「週刊文春」などで、幅広く執筆中。近著に『泡沫日記』(集英社)、『そんなに、変わった?』(講談社)など。

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