『ダイエット・パラダイス/私は美神(ミューズ)、ダイエットしてるの』
銀座、イイ女入門
新しい女づくり
 つい先日の話だ。
「美人は三日で飽きるけど、ブスも三日で飽きるんだよね〜」というお客の名言を聞いた瞬間、悪酔いしたことがある。
 私の冷たい眼差しに気付きもせず、そのお客は、俺はもう好みのタイプが分からなくなってしまった、と真剣に悩んでいる様子。
 なんなの?
「まずその考え方を改めなさいヨ。人間は結局“情”よ。末長く心が通じ合うような付き合いをしていけるのが理想的なんじゃないの。ホステスだって、ナンバーワンは必ずしも見た目じゃないもんね」
「それはそうだけど、情が生まれる前に色々あるだろう」
 うーむ。
 実際にそうならば、仕方がない。皆、言わないだけでそんなこと思ってるのかも。もしかして、この人は正直に言ってしまうだけイイ人?
 日頃よく来てくれるお客にだって、色んなタイプがいる。
 大切な接待のみの目的でクラブを利用する人もいれば、その日をワッと楽しみたい、別世界のような華やかさに触れたいとプライベートで遊びにくる人もいる。
 三十代もいれば七十代だっている。
 もちろん好みのホステスを口説きにくる人も沢山いるわけで、そのストライクゾーンはさまざまなのだろう。美人であってもタイプじゃなければ関係ないとも言えるし、好みのタイプだとしてもいつも見てりゃあ飽きるのかも知れない。
 だから最後に“情”が残るんだって私は言いたいんだけど、その前に終わってしまうという意見もやっぱあったか。
 そうかも知れない・・・とスグに思ってしまう私も、言いたくないけどそういう経験がある。最初は私のことをものすごく気に入ってくれていたはずなのに、ある日突然他のコを可愛がり出したりするお客は実際いる。お店に来てくれるんだから、まいっかで済むけど、忙しいからなかなか行けないんだよと電話で言われたその深夜、アフターの店で他のクラブのホステスと戯れているところにバッタリ出くわした〜なんて、男の心変わりをまざまざと見せつけられるのがこの商売のイヤなところ。
 ムっとした瞬間にガクンと落ち込んでしまう。
 ステーキのあとにはおにぎり食べたくなるのか(こじつけ)。ま、どっちがおにぎりかはわからないけど、浅い時期を通り越さなければ深くなれないのも現実。
 私が思うに、大体一年くらいで一つの壁がやってくる。
 だけどね、ホステスをしている限りこれは避けて通れないコトみたいなのです。意外なことにホステスが自律神経失調症に陥る原因、ナンバーワンがコレだってさ。長年続けてきたママ達に言わせると、
「そんな時には後を追わずに別のお客サマをゲットするわ、そのうち戻ってくるわよ!」くらいの図太い神経が必要みたい。
 でもこれって、ホステスしてるからこそ露骨に分かることなんであって、一般社会の男と女にも水面下ではそんなことが起こっているのでは?
 熱い季節を通り過ぎて、秋が来る〜。やがて段々と離れていってしまうのはどこの世界も同じことみたい。でも、相手が変わっただけで、同じこと繰り返していくってのも疲れることよね。
 私のどこが悪いの? を超えると、私は魅力がないの? と、その男にバイバイしたとしても自分の問題として残ってしまう。これを解明しておかないとそれこそ自信のなさそーな女になってしまいそうだ。飽きるのはイイけど飽きられるのはイヤよ〜。
 私ももちろん悩みました。くら〜い顔で接客をしたこと何度もあります。そして、ビョーキになる一歩前に<男とは?>みたいな本を何冊も読んで調べたりしたのです。
 そしたらね、男って浮気をするように遺伝子チップが組み込まれているんだってさ。
 その話はアダムとイヴなんかにまで遡る。
 何やら、男は人類を繁栄させる役目があって、精子を振りまくように出来ているらしい。一人で色んな女に子供を産ませるため、たくさんの女性を追い求めるようになっているらしい。これは神様レベルの計画で、そのお陰で今の人間社会がある。
 私が生まれてきたのも、昔を辿れば誰かの浮気のお陰なの? 今、少子化が進んでいるから、またまた浮気が活躍する時代が到来したりして。
 となると、国家というものが民衆を管理するために編み出した一夫一婦制に、そもそも無理があるのかもしれない。
 何冊かの本を読んでいくうちにミョ〜に納得する私。だけど、ならば仕方ないね、ともいかない。だってこの世には男と女しかいないんだもの。しかも、これって奥サマレベルの問題のような・・・。
 ま、私はホステスなので、お客が浮気をしないのは無理だとしても、どうすれば少なく出来るのか? ムッとしたり落ち込んだりしてるだけじゃなく、男の攻略法を探りたい。
 それには、常に“新しい女”でいることが良い方法だと気がついた。常に新しい発見を与える女。これは大変そうだが、意外と単純なことだった。
 例えば、髪型や洋服などでイメージをちょこっと変えたり、いつもつけている口紅やマニキュアの色、香水など気に入っているものもそうだ。五感に適度な刺激を与えることが大切なのだ。
 ちょっと新しいことをすると気分が変わったり、背筋が伸びたり、一皮剥けるような気分になる。それって奇麗になってゆくってことよね。
 ホステスもただ豪華なドレスや着物を奇麗に着てりゃいいってもんじゃないんだわ。個性をなくしてはいけないけど、自分を新しくしていくって楽しいこと。同じ街で、同じ店で、同じことをする毎日だからこそメリハリをつけていかないと、自分的にも飽きちゃったりするもんね。
 安泰な間も小さく変化をし続けながら、他の男(お客)にもちゃっかり目を向ける。深い情が生まれるまでは"女”を研究することがやっぱ大切なんだわ。
檀 れみ
檀れみ プロフィール
5月18日生まれ。B型。牡牛座。東京都出身。桐朋学園短期大学部文科卒業。1999年より女性誌、WEBサイト等でライター活動を開始。主にファッション、ビューティー、娯楽ページ等を手掛ける。嶋田ちあきメイクアップアカデミー第1期卒業に伴い、一般の女性を対象にしたメイクサロン「メィユール」を主宰。2004年8月より銀座のクラブ江川にてホステスを始め、今年7月に幻冬舍より初の単行本、『ダイエット・パラダイス/私は美神(ミューズ)、ダイエットしてるの』を刊行する。

檀 れみの、銀座日記
http://ameblo.jp/remiremi/