『ダイエット・パラダイス/私は美神(ミューズ)、ダイエットしてるの』
銀座、イイ女入門
癒し系ホステスになった私
 今年一年を振り返ると、めっきり男らしくなった気がする私。
 それはね、若手のホステスがわんさかと増えて、今では水割りを作る機会さえめっきり減ってしまったポジションのせいかも知れない。オードブルだって取り分けないし、灰皿だって私がチロリと見るだけで、新人ホステスが「アッ!」ってな顔してそそくさと取り替えてくれる。お客サマが退屈をしていないか、楽しんでいるか、何を必要としているかだけを気にすればいいようになった。
 さて、ゆとりの出来た私は今、何をしているか、というとホステス観察。
 近頃、うちのお店に入ってくるホステス達はめちゃめちゃ顔が可愛いコが多いのだ。その上、若いときている。
「○○ちゃんっていくつなの?」なんて余計なことを聞くと
「最後の昭和生まれです。ウフっ」なんて答えが返ってくるからズルっ。するとそのまた横に座っているホステスが
「私、一っこウエ」キャピっ。なんてしてるからズルズルズルズル〜っ。
 一緒に顔並べて飲んでる場合じゃないよ、どう考えても。
 銀座に永久指名(一度担当になったお客は、そのお店にいる限りは永久に係)っていう制度があって助かるよ。
 若いって無条件で奇麗だし、可愛いもんだ。
 だけどね、そんな中でも会話が出来るコとなるとその数は限りなく少なくなる。会話といっても、大した話をしているワケじゃないんだけどね。大切なのはゆっくり話を聞いてあげられる姿勢っていうのかな。
 自分には全く関係のない自慢話やつまらない愚痴にじっくりと付き合ってあげたり、もうとっくに知っている情報に対して初耳のように驚いたり、もっと詳しく聞いたり、はたまた間違った話に対しても決して逆らわないといった度量が男にとっては“癒し”になるんだな、きっと。
「カラスは白い」と言われたら、
「えっ? そうなんですか? 知らなかったわ。お勉強になります」って言えるかどうか。
「ナニ、言ってんのよぉ〜、んなワケないじゃん!」じゃ、ダメなのだ。
 私がそれに気付いたのは意外なことに母との会話。
 私の母は専業主婦で、一緒に暮らしていながらも私の日常とはかけ離れているのであります。母は料理、掃除、洗濯を一通りこなし、余った時間はお庭の花のお世話をしてお家を飾る、非常に出来た主婦で、とっても大っきな子供の私は、ま、非常にお世話になってるワケです。
 銀座で間違った話、ムカつく言葉をたっぷり吸い込んだ私は、お家に帰るとその毒を一気に吐き出す。世間で弱者の私はお家くらいでしか言いたいこと言えないんだよなぁ。
 しかしながら、悲しいカナうちの母はそれを五百倍くらいにして跳ね返してくる。
「あなたは間違っている。何を偉そうに! 可愛くないっ。もっと女らしくしなさいよっ」といった具合にすぐなります。
 その時私は非常に不愉快。お母さんってばヒドイっ。いいじゃん、私だってたまには言いたいこと言わせてよ。こんな家、出て行ってやるって思うのでありますが、お金の都合上、居座ってます。
 でも、ちょっと待てよ。これって世の中の夫婦の関係に似ていない?
 夫が仕事から帰ってくると、奥さんはゴハンもお風呂もちゃんと用意してくれてるっていうのに、それを当然のように受け流して、疲れて話しもなかったり、口を開けば愚痴ばっか。とにかく態度ワルっ。今の私はそんな世の中の夫と同じによく似ているのかも。そんな夫の態度に奥さんの不満が爆発するのは当然だろうな。
 だけど男って(今の私も)、そんな時でも、
「うん、うん、分かったわ、大丈夫よ」とか、
「あなたってスゴイわ! よく頑張ってるわ」って、やっぱ言われたいんだよなぁ。
 同じ男として? 身をもってそのことに気付いた瞬間から、私はお客サマに対して一切逆らったり、自己主張をしたり出来なくなっちゃった。楽しい時間を過ごしにきたんだから、せめてココでだけは快適に、偉そうに過ごして欲しい。言いたいこと言わせてやろうじゃん。
 残るは私。さて、どこで毒を吐こうか。
 母はとあるごとに、
「あなたは主婦には絶対向かないわ。っつーか一生結婚出来ないと思う」と相変わらず私の神経を逆撫でし続けて、それでストレスを発散しているようだけど、これじゃ父も滅多に帰ってきたくなくなるっつーもんだ。なんだかミョ〜に納得。
 だけどね、こんな私も今ではお店ではお嫁さんタイプで通っているのよ。私ってば、いつの間にか癒し系になったみたい。
 それは、よく考えてみればお母さんのお陰なのかも知れない。
 いずれにしても人気が上がったのはラッキーだった。実態はちっとも伴ってないのだが、銀座ではカラスもよく白くなるっつーことだし、ま、いっか。
檀 れみ
檀れみ プロフィール
5月18日生まれ。B型。牡牛座。東京都出身。桐朋学園短期大学部文科卒業。1999年より女性誌、WEBサイト等でライター活動を開始。主にファッション、ビューティー、娯楽ページ等を手掛ける。嶋田ちあきメイクアップアカデミー第1期卒業に伴い、一般の女性を対象にしたメイクサロン「メィユール」を主宰。2004年8月より銀座のクラブ江川にてホステスを始め、今年7月に幻冬舍より初の単行本、『ダイエット・パラダイス/私は美神(ミューズ)、ダイエットしてるの』を刊行する。

檀 れみの、銀座日記
http://ameblo.jp/remiremi/