『ダイエット・パラダイス/私は美神(ミューズ)、ダイエットしてるの』
銀座、イイ女入門
幸せを呼ぶ義理チョコ
 前回、新年の抱負を語ったのに、もう二月になってしまった。
 銀座にいるとやたらと年中行事が多い気がするけど、今月も節分とバレンタインデーがあるではないか。たかが豆とチョコだが、ダブルとなるとその出費はお歳暮を凌ぐ勢いなのであります。
 景気の傾きに伴い、一般社会から義理チョコの風習が撤廃気味になってからどのくらい経つだろう。女って意外とクールだなと思う。ピタッと止めてしまったら、再開の目処も立たないのだから。会社の上司とかにも、女性社員が皆で割り勘して一個のチョコレートを贈ったりしている。それはそれでいいのかも知れないが、夢がないというか、ちょっと義理っぽすぎやしないか。
 と言うのもね、男性ってチョコレートもらうと実はすんごく嬉しいみたいよ。私がそれを知ったのはかれこれ十年くらい前のことで、話はホステスになるずっと前に遡る。
 当時まだライターのアシスタントだった私は、セレブな男性ファッション誌の仕事をしておりました。毎号、かなり狭い人脈の中から細い繋がりを辿り、やっとのことで名だたる青年実業家まで行き着くと、しぶとい交渉の末、嫌々ながら登場してもらう。
 そして取材を終えると、今度はそのお友達を紹介してもらうという、今思うとあれは結構良いホステス修行になっていたのではないだろうか。
 登場して欲しい男性ほど露出を嫌がることが多く、ほんと苦労したもんだった。
 引き受けてもらったところで、先方にイイコトはあまりないというか、まったくない。忙しい方が時間ばっかり拘束されて、まさにボランティアに近い状況なのだ。
 無理を承知で紹介してもらうという私の厚かましい戦略には勿論ワケがあった。
 男の頼みごとって無下にされないものなのよね。正面から私が頼むよりも何十倍も話が早く進み、しかも確実なのです。
 無事に取材を終えた時のあの有り難みは言葉では表せないほどのものだけど、一ライターの私は恩返し出来るような立場でもない。何度も何度も頭を下げながら御礼を言うしかなかったっけ。
 そんな私は女性誌も手掛けており、二月号なんかでは決まってバレンタイン特集を組んでたわけです。男性のハートを射止める〜とか、男心をくすぐる〜といったありふれた文章を、ホントかよ、なんて思いながら書いているうちに、ふと感謝の気持ちとして無理を聞いてもらったその男性達にチョコレートを贈ってみようかな、ホントに喜ぶかな、とその時、私はひらめいた。
 勿論、取材した時期とは大分離れてしまうケースが殆どなんだけど、“ご無沙汰しておりますがお元気ですか?”というカードを添えてね。いきなり届いたからって、それを愛の告白とは今時誰も受けとらないだろう。
 実行してみると、それはかなりの反響があったのであります。必ずお礼の電話をいただき、
「わざわざ会社に送ってきてくれるなんて、予想もしていなかったからすごく嬉しいよ。会社の女の子達にも、注目されちゃった」と、なんだか声が弾んでいるではないか。
「○○さんだったら沢山、もらうんじゃないですか?」と聞くと、
「もう義理チョコの時代じゃないんだよね。女性社員皆で一個とかだよ」
 素敵な男性でも結構もらえてないもんなんだな、と意外に思ったっけ。
 私は今、ホステスをしているので、義理チョコを配るのは当然のように思われてしまうのかも知れない。だけどね、その昔お世話になった方達には、銀座に入ってご無沙汰になってしまっていても、年に一度、送ることにしているのです。今ではまるで元気な知らせのようになってしまってるんだけど、
「御礼に食事、奢るよ」なんて誘いの電話をくれるところを見ると、未だに結構喜んでくれてるんじゃないかな。
 つい最近、そんな男性の気持ちが何となく分かるような出来事があった。それは昨年のクリスマスのこと。私の自宅に何の前触れもなく小さな小包が届いたのであります。送り主を確かめてみると、それは最近お仕事をさせてもらうようになった出版社の女性の社長さんからだった。
 リボンをほどき小箱を開けると、中からピンクのレザーに小さなラインストーンが散りばめられているとっても可愛いボールペンが姿を現した。その女性らしい品選びは、思わず溜め息が出るほどなのだ。それには美しいクリスマスカードも添えられている。
 プレゼントも然ることながら、年末の慌ただしい時期に、私のためにメッセージを書いてくれたその気持ちがとっても嬉しかった。
 その時の私は、お店もクリスマスパーティをしていたことから、時間も気持ちもゆとりがない反面、何となく寂しい気分で過ごしていたのだった。
 ちょっとしたプレゼントって人の心を温かくするものなんだな、ということを改めて感じた瞬間だった。お中元やお歳暮、年賀状などとは全く違う季節の贈り物。大人の男性は、そんな女性の気持ちが嬉しいのではないだろうか。
 だとしたら、たとえ義理チョコであったとしても、なんだかすんごく素敵な気がする。義理チョコというネーミングを、再考してみてはどうだろうか。
檀 れみ
檀れみ プロフィール
5月18日生まれ。B型。牡牛座。東京都出身。桐朋学園短期大学部文科卒業。1999年より女性誌、WEBサイト等でライター活動を開始。主にファッション、ビューティー、娯楽ページ等を手掛ける。嶋田ちあきメイクアップアカデミー第1期卒業に伴い、一般の女性を対象にしたメイクサロン「メィユール」を主宰。2004年8月より銀座のクラブ江川にてホステスを始め、今年7月に幻冬舍より初の単行本、『ダイエット・パラダイス/私は美神(ミューズ)、ダイエットしてるの』を刊行する。

檀 れみの、銀座日記
http://ameblo.jp/remiremi/