『ダイエット・パラダイス/私は美神(ミューズ)、ダイエットしてるの』
銀座、イイ女入門
一夜限りの銀座のクラブ
 つい先日、私が以前通っていたライターズスクールの卒業パーティがあった。青山にあるその学校は生徒は女性だけで、ライタークラスとカウンセラークラスの二つのコースがある。入学すると、授業は週に一度で約三時間。約一年間通うことになる。生徒は学生からOL、専業主婦等々、年齢層も幅広い。
 毎週与えられる課題のハードルは結構高く、かなり鍛えられる。週に一度でもふぅふぅの状態だったのをよく覚えている。在学中から現場の仕事にも触れる機会を与えてくれるため、本気であれば一気にプロになれると言っても過言ではない。
 実際、私もこの学校に入るまでは名前もクレジットされないただのアシスタントライターだったが、在学中に営業に行くことも覚え、自分の名前で記事を書くようになったのだから、ね。
 ひとクラスには大体三十名くらいの生徒がいるので、両方合わせると約六十名にもなる。これだけの人数の女性が集まると、色々な人生があるものだな、と思う。
 しかし、この学校に来たということは、一番大切なものが共通しているのだった。
 それは、人生を充実させたい! 花を咲かせたい! という目標を持っていることだ。そのパワーときたらもの凄い。
 大人の学校というのは、自分の意志で通うのだから、意気込みが違うのだ。その気持ちが生徒をプロにする。
 一般公募などで物凄い競争率をくぐり抜けて賞をとったり、売れっ子作家になったりする女性が続々と出て来たりするのを見ていると「本当に望むことは、諦めなければ必ず叶う!」ということを実感出来る。
 私にとって、この学校はまさに第二の青春であり、今も心の糧になっているのだ。
 何も知らなかった夜の銀座の世界でホステスをやってこられたのも、きっとこの学校のポリシーのお陰で、卒業してからも近況報告をしたり、相談にのってもらったりと、とにかく卒業生も在校生も皆、仲良しなのである。
 話は戻るが、毎年行われる卒業パーティはいわばその集大成だ。クリエイティブな学校なので、あらゆる知恵をしぼって楽しい企画を練るのであります。
 それが、今年はなんと、私に白羽の矢が立てられたのだからビックリ。
 最初は驚いたが、ま、オモロイ学校なので、すぐに「らしいな」と思わずにやついてしまった。
 ナント、卒業パーティの一日だけ、卒業生の全員が銀座の高級クラブのホステスになりきって、男性客をおもてなしする、一日だけの銀座のクラブを誕生させるというのである。
 私は面白そうな話にはすぐにのる性格である。
 かといって、私も時間があまりないため、メールのやりとりと限られた打ち合わせで、出来るだけ夜の銀座の世界のことを説明させていただいた。
 そして、一日講習会を開いて、服装やアクセサリーのことから、水割りの作り方、マナーやタブー、イケてるトーク、男心をくすぐる方法をレクチャーしたのだ。
 ドレスを買うと大変な出費になるので、銀座のホステス御用達のレンタルショップを教えたりもしてね。
 どうやら皆さん、ホステスに混ざってドレスを物色しに行ったらしい。あとは銀座モノの本を読んだり、ビデオを見たりしてひたすら研究を重ねていたようなのだ。
 そのパーティがとうとう本番の日を迎え、私はゲストとしてお招きいただいた。
 豪華なディスコを借り切っての一夜だけのクラブに、ワクワクしながら足を踏み入れた私は、思わず「わっ!」と声をあげてしまった。
 女性達、皆輝いていて、すこぶる美しいではないか。
 本当にすぐに銀座のクラブで働けそう。
 髪に大きなお花のコサージュをつけたり、スパンコールのドレスを着たりと、思いっきり派手にやってくれている。何人か引き抜いていったら大ママが喜ぶんじゃないだろうか、と本気で考える私。
 しかも、今夜は強制同伴日らしく、皆、男性を呼んで来ているというのも銀座の意気込みさながらで微笑ましい。
 すれ違った生徒さんが私に嬉しいことを言ってくれた。
「何だか、なりきってみたらすごく楽しくて、男性のお客サマに甲高い声のリップサービスもノリノリで出来ちゃうのっ。ホント、やれば出来るんですねっ」
 奇麗に着飾った一日ホステスに囲まれて、男性客の鼻の下が本当に伸びているのがパーティの成功を物語っているようである。
 最後に男性客の投票によってベストホステス賞が決められ、私はその発表もさせていただいた。皆さん甲乙付けがたいくらいのホステスぶりだったが、選ばれた女性は元気ハツラツで、とってもチャーミングな人だ。
 ステージを降りると、顔馴染みの男性のコピーライターの先生が、何か言いたげな様子でニヤニヤッとしながら近づいて来た。
 そっと耳打ちされた言葉に、私は思わず絶句してしまった。
「カノジョ、自分に票がはいるように各テーブルまわりながら根回ししてたんだよな。それ見てたら可笑しくてさぁ、俺、笑っちゃったよ。でも絶対ナンバーワンになると思ったよ。やったな、あいつ」
 おおっ! それこそ、まさにベストホステス賞ではないか。短い期間で、彼女はまさに夜のクラブ生命の要である、"競争に勝ち抜くホステス”にまで成長したということなのか。
 女はヤル気なのだ。
 諦めさえしなければ、願いは必ず叶うのだ。
 彼女はきっと稼げるホステスになるだろう。だけど、スカウトするのはやめておくことにした。私のライバルになったら困るからね。
檀 れみ
檀れみ プロフィール
5月18日生まれ。B型。牡牛座。東京都出身。桐朋学園短期大学部文科卒業。1999年より女性誌、WEBサイト等でライター活動を開始。主にファッション、ビューティー、娯楽ページ等を手掛ける。嶋田ちあきメイクアップアカデミー第1期卒業に伴い、一般の女性を対象にしたメイクサロン「メィユール」を主宰。2004年8月より銀座のクラブ江川にてホステスを始め、今年7月に幻冬舍より初の単行本、『ダイエット・パラダイス/私は美神(ミューズ)、ダイエットしてるの』を刊行する。

檀 れみの、銀座日記
http://ameblo.jp/remiremi/