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山手通り沿いにある目黒109スタジオでのCM撮影終了後、僕と電通に勤務するS氏、H氏の三人で六本木にあるキャバクラ「G」へ繰り出した時の話だ。 久々に訪れた「G」は相変わらずの盛況ぶり。事前に予約の電話を入れておいたにもかかわらず、入口近くにあるカウンターで席が空くまでの間待たされることとなった。まずは景気づけにとビールを飲んでいると、顔なじみのつけ回しT氏が、にやにやしながら僕に歩み寄ってきた。 「伊藤さん、ご無沙汰じゃないですか。っていうか、いつもいいタイミングで来るんだよな」 「なんで、なんで、何かあったの」 「実は、今日入店したばかりの子で、絶対伊藤さんの好みって子がいるんですよ」 「うそ、じゃあその子よろしく」 「ラジャーです」 T氏とはかれこれ5年以上になるつきあいで、僕の女性の好みを詳細に把握してくれていた。当然、彼が薦める子でハズレたことはこれまで一度もない。そんな彼の言葉だけに僕のテンションはいやがうえにもあがった。 程なくして席に案内され、高鳴る期待を抑えつつ、昨今の「G」のキャバ嬢事情を観察していると、T氏と共に、胸元が大胆に開いた白いロングドレスに身を包んだ女性が現れた。 「かおりさんです」 T氏の言葉には自信が満ち溢れていて、「この子でいいですよね」と言わんばかりに僕の目を見据えている。隣に座っていたS氏が声を上げた。 「伊藤さん、いいなあ。超かわいいじゃないすかあ」 かおりと紹介されたその女性は確かに僕のストライクゾーンど真ん中。今時のキャバ嬢にありがちな派手さは微塵もなく、切れ長の目とやや小さめでツンと上を向いた鼻には気品が漂っている。しばしその姿に見とれた後、僕は思わず立ち上がって彼女を左隣の席に招き入れた。 「今日入ったばっかりなんだって?」 「えー、そうなんです」 「今までどこで働いてたの?」 「実は水商売は初めてで……」 このやりとりで、僕のテンションは最高潮に達していた。容姿ばかりか、言葉遣い、経歴共に申し分ない。僕が常々求めている「かわいいのにすれていない」というある意味真逆の要素をいずれも持ち合わせている子に違いなかった。 「さすがはTだわ」 僕は改めて彼のつけ回しっぷりに感心しながら、今後の展開につなげる突破口を見いだせないかと頭を巡らせた。 とその時、T氏とは別のつけ回しが現れ、「かおりさん、お願いします」と声をかけた。「ちょっと行ってきますね」と席を立ったかおりの後ろ姿を追っていると、見覚えのある男の顔が僕の視界に入った。しかも彼女は、その男の隣りに座り、さも親しげに話し始めている。 「なあなあH、あそこにいるの、AのN君だよな。へえーキャバクラとか来るんだ」 S氏の言葉でその男が誰であるかをはっきりと認識した僕は少なからずひるんだ。Aといえば、東京ドームでライブをするほどの人気ロックグループ。中でもNはそのメンバーの中で一、二を争う人気を誇っている。万一彼が本気になって口説いたなら、おそらく今「G」で働いているキャバ嬢で落ちない子はいないだろう。争って勝てる相手でないことは明白だった。そんな僕の心情を察したのか、同情するような面持ちでS氏が口を開いた。 「伊藤さん、ちょっと相手が悪いですね」 あまりに的確な指摘に一瞬いらついたが、僕はあえてとぼけたふりをした。 「えっ? どういう意味?」 「だって、あのかおりって子、伊藤さん、気に入ったんじゃないんですか?」 僕は変わらず平静を装い、言葉を続けた。 「あーあ。いや、昔つきあっててふられた子と顔が似てから、ちょっと盛り上がっちゃったんだけどさあ。いや、外見似てると中身も似てるねえ。もう同じ過ち繰り返すのは勘弁だから、全然興味ないよ」 |
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