実録! 現役サラリーマン言い訳大全 2
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実録! 現役サラリーマン言い訳大全
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 シャワーを浴び、リビングルームに戻ると、美保(仮名)は明らかに不機嫌な様子でテレビを見つめていた。彼女は、僕以上に感情の起伏が激しい上に、それが完璧に顔に出るタイプ。その都度指摘はするのだが「いいじゃん、わかりやすくて」と、いつだって取り合うことはない。確かに、不満をため込んで突然爆発されるよりはましで、往々にしてこのタイプは機嫌が直るスピードも速く、僕はそんな性格の女性が嫌いではなかった。とりわけ美保の場合、20歳近くも歳が離れていて、事あるごとに不貞腐れる様子もどこか愛おしかった。ただし、対応を一歩間違えると、話が取り返しのつかない方向に行ってしまう危険性もはらんでいることを経験から学んでいた僕は、彼女の様子をひとまず観察することにした。
「洋介、私、洋介の彼女だよね」
 突然の問いかけに一瞬ひるんだが、ここで動揺を悟られてしまっては彼女のペースにはまってしまう。僕は逆に呆れた表情を彼女にむけた。
「おまえ、今さら何言ってんの? 彼女じゃなかったら、こうやって家にあげたりしないんだけど」
「だったら、私たちに隠しごとはないよね」
「あたりまえだよ」
 僕は平静を装い続けながらも、ここしばらくの自らの言動を省みていた。彼女の話っぷりからして、機嫌を損ねている原因は女性絡みであるに違いなかったが、思いあたるふしはなかった。堂々としているべきと踏んだ僕だったが、そんな態度が癇に障ったようで、美保は敵意をむき出しにした面持ちで僕をにらみつけた。
「じゃあなんで、携帯電話、ロックしてんのよ」
「おまえ、俺の携帯、見たの?」
「見るつもりなんて、全然なかったけど、目の前に置いてあったから、ついつい見ちゃったの。悪い?」
 携帯の中味を勝手に覗こうとした行為に、さすがに腹が立ったが、それを今は咎めてはいけないと思いとどまった。僕の携帯電話の中には、彼女の逆鱗に触れる内容が満載だったのだ。万一、「他人の携帯の中を勝手に見るって、どういうこと? おまえだって嫌だろ!」と非難しようものなら、彼女の怒りの火に油をそそぐだけ。最悪の場合、「そんなに怒るなんて、やましいことがあるんでしょう。ないなら、今ここで暗証番号を教えてよ」などとも言われかねない。
 そうなれば万事休す。ここは、携帯電話に入っている情報にロックをかけているもっともらしい言い訳で逃れるしかない。閃いた僕は、やさしく諭すように口を開いた。
「あのさあ、最近よくニュースでも報道されてる個人情報保護法って知ってるだろ?」
「知ってるけど、それがどうしたのよ」
「美保の会社ではどうなってるか知らないけど、うちは個人の情報をたくさん抱えてるから、あの法律にはやたらとナーバスなんだよ」
 明らかに、美保の表情に変化が見て取れた。僕のでっち上げに、微塵の疑いも抱えていない。僕は一気にたたみかけた。
「で、会社の方から、個人で持つ携帯にも、万一紛失した時のために、ロックをしておくようにお達しが出てるんだよ」
「へえー」
 僕の話を完全に信じ切った様子の美保は、いかにもバツが悪そうに僕から視線をそらした。
「だから、別に隠しごとがあるから、ロックしてるわけじゃないの。何だったら、この場で全部見せようか」
「いいよ、別に……」
 難を逃れたことを確信した僕は、濡れた髪の毛をドライヤーで乾かそうと洗面所へ。程なくすると、テレビを見ている美保の笑い声が聞こえてきた。
言い訳