素人にはちんぷんかんぷんな最先端技術を駆使して、世のあちこちで目に見えない貢献をしている縁の下の力持ち・システムエンジニア。現代社会をさらなる進化へと導く彼らが、実は前時代的なワーカホリックにならざるを得ない労働環境にいることをご存知だろうか。
“オフィスにカンヅメ”は当たり前。夜遅くまで働いているのが通常の状態であり、「この仕事が一段落したら休む!」と決意を固めてみても、次なる仕事がわんさかと押し寄せてきて……結局、休めない。
自らもそんな現実と格闘するSEのひとりだったきたみさんがたどり着いた結論のひとつは……働けば働くほど貧乏になるじゃん!?
私は思いました。「……同感」と。
過酷な労働環境で働いたがゆえに芽生えた、過激すぎる胸の内。「食あたりにご注意を」とわざわざ断るほどの毒を盛り込みつつ、思わず笑えてやたらと共感できる『会社じゃ言えない SEのホンネ話』を刊行したばかりのきたみさんに話を聞いてみた。
SEのみなさんはもちろん、会社勤めをする全ての方にとって必読の一冊です!
−−いきなりで何なんですが、SEってホントに大変なお仕事なんですね……。でも、『SEのホンネ話』を読んでいると、これでもかってくらいトホホなエピソードの裏に隠された、SEという職種に対する愛着も感じるんですが。
ホントにいきなりですね(笑)。まぁ、大変は大変なんですけど、もちろん醍醐味もあるんですよ。
愛着を感じてもらえたのだとすれば、その醍醐味があるからでしょうね。
−−と言いますと?
醍醐味ということで言えば、「無から有を作り出すことができる快感」というのになりますね。頭の中にあるものを、プログラムという言語に落とし込んでシステムとして具現化してみせる。これがかなり達成感のあるものなんですよ。規模の大小にかかわらず、うまく動きはじめた時は「よっしゃ!」と思わず声が出ちゃいます。「解き明かした! オレ賢い!」とか自分をほめたくもなったりするし。しかもそのシステムを納めたら、お客さんの喜ぶ顔が見れちゃったりもする。二重三重の喜びがあります。
−−その喜びに到達するためには、かなり辛い思いもしなくていけないんですよね?
そうですね(笑)。「頭の中にあるものを具現化する」わけだから、場合によっては脳みそがかなりつらいことになる。全部そこだけで考えるわけですから、頭を休める暇がないことも多いんです。よく「脳みそで鉄骨を担ぐ」という言い方をウチらの業界ではするんですが、この言葉がSEの仕事の大変な部分を、うまく言い表していると思います。
−−『SEのホンネ話』で一番読んでほしいところってどういうところですか?
うーん、気楽に読んでもらえれば(笑)。バカバカしい理論をまじめに考えて実践する様を、楽しんでもらえたりすると幸いです。
−−「バカバカしい理論」だなんてことはないですよ。「働けば働くほど貧乏になるぞの法則」を読んだ時には、目からウロコが落ちました。「その通りだ!」と(笑)。未読の読者のために、その法則を簡単に説明してもらえますか。
んーと、「サービス残業の多い会社で毎晩泊まり込みを続けていたら、夜食代が出てくばっかで、全然お金が貯まりゃしない」という法則です。悲しいですよね。実際、悲しかったです。
−−ホントに悲しいですよね(笑)。本書を刊行するうえで、一番こだわった部分ってどういうところになるんですか?
この本は、「NETWORKWORLD」という雑誌で連載していた原稿がベースになっているんですが、「単なる再録に終わらないこと」に気をつけました。やはり連載を続ける中で自分の文章にも変化があるし、それを単に詰めこんだだけじゃ、統一感のない、読む人にも消化不良な印象を与える本になっちゃうと思うんです。なので、本という形のまとまりを出すために、再録ではなくて再構築を行ったつもりでいます。今回連載時にはなかった4コマまんがを、各話ごとに書き足すようにしたんですが、それもそうした気持ちの表れですね。
−−4コママンガは、きたみさんの本を読む楽しみのひとつでもありますよね。でも今回の4コママンガは新たに描き下ろすということで、結構キツかったんじゃないですか?
最初は、1コマまんがで勘弁してもらう予定だったんです。でも、文章を再構築してたら、自然と3話くらい4コマまんがを思いついちゃって。それで、「お蔵入りさせるのはもったいない」と「書きます」宣言したんですけど……、おかげで1月の追い込み時は死んでました。
−−お疲れさまでした(笑)。その4コマのおかげで、各話がより共感しやすくなったと思います! それにしても、本書にはきたみさんが出会った強烈なキャラが登場しますが、彼らに対して今、どういう思いを抱いていますか?
うーん、特には(笑)。昔から、そういうキャラの人に好かれやすいということもあったので、彼らだけが特別印象強いとかいうことはないです。ただ、個人的な付き合いの範疇であれば、そういうキャラの強い人っておもしろいですよね。自分の意見を持たない人といるよりは、よほど酒がうまいです。
−−会社には色々な人がいますもんね。きたみさんは、「会社で働く」ということをどのように捉えているんですか? 『SEのホンネ話』を読んでいると、あれだけ大変な思いをしながらも決して思考停止に陥らず、常に考え続けるきたみさんに感心してしまうのですが。
色んな側面があるので、ひと言ではなんとも…。端的に言えば、「学校の延長線上にあるもの」でしょうか。とりあえず会社で働いてれば、責任を会社になすりつけることができる安心感があるんですよ。給与安いのも会社のせい。忙しいのも会社のせい。リストラにあったのも会社のせい。会社つぶれたのも会社のせい。そうやって、他所のせいにできるメリットを享受するかわりに、多少の不自由さには目をつぶる。そのへんが、なんか学校っぽいんですよね。
−−なるほど、学校か。ということは卒業もする、と(笑)。
卒業と言っていいのかどうかは別として、自分は不自由がダメな人なので、向いてないなぁ…と(笑)。「サラリーマンをやるのにも、サラリーマンをやる才能が必要だ」とは、よく思います。
−−なるほど、「才能」ですか(笑)。最後に読者の方へのメッセージをお願いいたします。
「もう会社の中に寝袋持ち込んじゃおっかなぁ」とか思いはじめてる人に読んでもらいたいですね。
で、できれば会社で寝袋にくるまりながら読んでもらいたい。徹夜の時の、なんかこう「妙に静かなんだけど、なんかぼわー…っとする」感じを、読者の方と本を通して共有できると嬉しいです。
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 『会社じゃ言えない
SEのホンネ話』
1,470円(本体価格1,400円)
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きたみりゅうじプロフィール
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大学卒業後、企業用システムの設計・開発、おまけに営業までをもこなす、なんでもありなプログラマーとなる。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウインドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍デビュー。現在はフリーのライター&イラストレーターとして活躍中。著書に『新卒はツラいよ!』(幻冬舎)、『SEのフシギな生態』『SEのフシギな職場』『パソコンマナーの掟』(全て幻冬舎文庫)などがある。
http://www.kitajirushi.jp/
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