石黒由紀子 犬猫姉弟 センパイとコウハイ

 南向きの窓辺にセンパイ用のベッドが置いてある。ドーナッツのように丸くてマシュマロのようにふんわり、晴れた日には日差しが降り注ぎ、ふかふかぬくぬくな日だまりベッドとなる。私が犬猫ほどの大きさになれたら「一度あのベッドにもぐって寝てみたい」と羨望の、我が家で一番居心地がよい場所。いつもはセンパイの特等席なのに、先日、気がついたらコウハイがいた。
 ベッドの中でそれはそれは堂々と身体を伸ばし「天下獲ったり!」という顔をして寝ている。横には床で背中を丸めて眠るセンパイ。あれれ、コウちゃん、ずっと狙っていたんですか。下克上ですか。
 
 しかし、不穏な空気は漂っていない。センパイは平和主義、獲られた天下(ベッド)を獲り返そうなんて1ミリも思わない。「センちゃん、コウちゃんにベッド獲られちゃったけど、いいの?」そう訊ねても「んー、それより今は眠いのよ〜」とどこ吹く風。
 
 しばらくしたら、コウハイが目を覚まし「ふわわわ〜、よく寝たニャ〜」と大あくびをひとつ。それから気分転換? ベッドをあとに部屋のパトロールに出かけた。
「お? 」すると、センパイ、すかさずベットに移動。無表情だが「やったね〜!」と背中は嬉しそう。そうか、センパイ、ただのらりくらりと寝ていたわけではなく、じっとこの時を待っていたんだね! 家康タイプだね! 戦わずして天下を獲り戻したセンパイは、何事もなかったかのように、またベッドで眠りはじめた。
 
 一方、コウハイ。気分よくパトロールして戻ってきたら、あらら、ベッドにはセンねえたん。「さっきの夢の続きを見ようと思っていたのに……」どうしたものかと立ちすくむ。世の中甘くないニャ。しかし策士•コウハイ、負けて勝ちとれ? おとなしく自分の陣地(ベッドの横にあるダンポール)に引き上げた。

 すやすやと眠るセンパイを見てコウハイは考えた。じっくりじっくり観察して策を練った。小さな脳みそをクルクル動かし考えた。動きはそろりそろり息を詰めてそぉーっとそぉーと。でも心の中では「えいっ!」と思いきって大胆に。

 「ふ〜っ」。ハイ、潜入大成功。「やっぱりね〜。一度眠ると、センねえたんは起きニャいの、知ってたのニャ〜」。コウハイ、してやったり。そのあと、少しの時間、緊張しながら様子を伺っていたが、「よっしゃ、大丈夫そ♡」とコウハイも満足そうに眠った。コウちゃん、天下獲りしてベッドを独占するよりも、ほんとはセンねえたんとくっついて眠るのが好きらしい。
 コウちゃん、よかったね。

石黒由紀子 犬猫姉弟 センパイとコウハイ

ある日、センパイのベッドがコウハイに占拠されてた
ある日、センパイのベッドが
コウハイに占拠されてた

「やっぱり気持ちいいわ〜ん♡」センパイ、ベッを奪還!
「やっぱり気持ちいいわ〜ん♡」
センパイ、ベッを奪還!

「さっきまでぼくのベッドだったのに」コウハイ、しょぼん…
「さっきまでぼくのベッドだったのに」
コウハイ、しょぼん…

「うーん、どうしたものかニャ」 コウハイ考える
「うーん、どうしたものかニャ」 コウハイ考える

「そーっと、そーっとニャ」自分に言い聞かせ、コウハイ、ベッドに潜入。
「そーっと、そーっとニャ」
自分に言い聞かせ、コウハイ、ベッドに潜入。

コ「ふーっ。ねえたん、気づいてニャい…」
コ「ふーっ。ねえたん、気づいてニャい…」

くっついて寝たら、同じ夢見られるかニャ…♡
くっついて寝たら、同じ夢見られるかニャ…♡

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犬猫姉弟 センパイとコウハイ

石黒由紀子

犬顔犬性格のエッセイスト。ゆるり系エッセイやリコメンドを「CREA」ほか女性誌、愛犬誌、WEBなどで。好きなものは、犬、猫、雑貨、街歩き、音楽、絵本。著書に『GOOD DOG BOOK~ゆるゆる犬暮らし』『なにせ好きなモノですから』『さんぽ、しあわせ。~東京ゆるゆる街歩き』『GOOD DOG GOODS!』『カップル・ストーリーズ』など。

単行本『豆柴センパイと捨て猫コウハイ』発売中!

寒くない センねえたんと 一緒だもん♡|石黒由紀子 犬猫姉弟 センパイとコウハイ
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