加藤レイズナ『プリキュア シンドローム!〈プリキュア5〉の魂を生んだ25人』特設サイト
Webマガジン幻冬舎
『プリキュア シンドローム!〈
プリキュア5〉の魂を生んだ25人』特設サイト

加藤レイズナ(かとう・れいずな)

1987年9月11日生。フリーライター。「エキサイトレビュー」レギュラーライター&編集。Web幻冬舎「実況野郎Bチーム」でインタビューの面白さに目覚める。「プリキュアぴあ」(ぴあ)に参加。はじめての著書『プリキュア シンドローム!』絶賛発売中!。

Twitter: @kato_reizuna
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ぐっとくる書評

単純なアニメ制作裏話を伝える本ではない

米光一成(ゲームデザイナー/立命館大学映像学部教授)

加藤レイズナ『プリキュア シンドローム!〈プリキュア5〉の魂を生んだ25人』

 2004年からスタートした女児向けアニメ「プリキュアシリーズ」の転換点となった『Yes!プリキュア5』『Yes!プリキュア5GoGo!』の制作スタッフ25人にインタビューしたものをまとめたのが『プリキュア シンドローム!』という本。
 全592ページ。表紙カバーは川村敏江書き下ろし(4色プラス特色さらに特色という豪華印刷)。さらにオリジナルポストカード3枚セット封入。カラー12ページで設定画も大公開。
 でもって、定価が1800円。ぶっちゃけありえない。いまの出版事情で考えると常識破りの激安価格だ。
 最初は256ページだったのが592ページに増加するも値段設定を変更しそこねたとか、ムック『プリキュアぴあ』がバカ売れしたのでその部数で計算してしまったとか、諸説あるが、本当は、情熱全開や出版の良心や幻冬舎の魂などが力を合わせて大バトルした結果生まれた奇跡の結晶であるらしい。
 聞き手であり著者である加藤レイズナは、24歳、男、プリキュアファン。他のアニメにはさほど興味なく、単著を出すのは今回が初めて。
 最初のインタビューは、鷲尾天プロデューサー。加藤レイズナ、緊張している。聞き手として頼りない感じ、それを察して丁寧に説明しようとしている鷲尾天。現場の雰囲気が伝わってくる。
 インタビューをした人なら分かると思うが、もちろん、これは、そう感じられるように緻密に編集構成してあるのだ。
 緊張感や頼りない感じ、ファンっぽい発言は消して、冷静なQ&Aとしてスッキリ構成したほうが簡単だ。書物の威厳だけを保つには「うわあ、川村さんのイラストは素敵ですよね。大ファンなんですよ。声優さんにも?」なんてファンの発言は削ってしまえばすむ。だけど、この本は、そこをあえて残した(もしくは付け加えた可能性だって否定できない)。
 スタッフが作ったプロデューサーの顔が印刷されたお金「天円」をめぐるくだりも、そうだ。「会社の机の中に入れっぱなしだ!」という展開を経て、最後にバイク便が到着して、「さっき呼びました。えへへ。電話で遠隔操作してきたんですよ」、天円をみんなで観て、わっと全員が喜ぶ(鷲尾天さんは照れてつっこむ)。
 こういったことは無駄だろうか。無駄じゃない。「みんな楽しく、でも厳しくやっていました」とただ語るよりも、「楽しく、でも厳しく」現場で制作している様子が、何十倍もの実感を伴って伝わってくる。
 永江朗の名著『インタビュー術』に次のような言葉がある。
“報道というものが「誰が何をしたか」を伝えるものだとすれば、インタビューは「誰が」のほうに比重がかかっている。つまり、「何を」語るかよりも、「誰が」語るかが注目される。”
 スタッフが何をしたのかを語る様子から、その語り手や、中心人物である鷲尾天プロデューサーが、どんな人であるのかが立体的に浮かび上がってくる。
「シリーズディレクター小村敏明に聞く」の章では、電話が入って鷲尾プロデューサーがちょっとだけ途中退席する。これだって、ずっといることにしたほうがノイズが少ない。でも、退席したことが重要な情報を示しているのだと考えれば、直接書けない微妙で重要なことが隠されていることを解釈できるはずだ(もどってきたときに鷲尾天は「危ない話をしていませんでした?」と聞くのだよ)。
 舞い上がったり、緊張していた聞き手・加藤レイズナは、インタビューしていくなかでゆっくりと変わる。成長していく。
 モノをつくる熱い現場の話を聞き出しながら、自分自身もモノをつくる熱い魂を持ち始める。その、彼の気持ちが読者にも伝染してくる。伝染するように再構築されている。
 この本は、単純なアニメ制作裏話を伝える本ではない。
 プリキュアという子供向けアニメーションに情熱を込める現場の大人たちと、その情熱を受け取って、また違った形で継承しようとしている若者が、自分自身の身を挺して描いた「モノづくりの魂」についての長い長い手紙だ。