『すーちゃん』を読んだ後の、この不思議な寂寥感って何だろう……。
 現代に流れている空気を絶妙にキャッチしていて、それをその中で生きる主人公達にとても上手く語らせて本は終わっている。

 女30歳以上、独身あるいはバツイチ、子供なし、負け犬、勝ち組、マンション購入、ポジティブシンキング、自分探し……。

 そんなキーワードをベースにして、「すーちゃん」という主人公の日常は流れていくのだけれど、読み進めていくうちに「これって私の日常?! 普通に私が思ってることじゃん?!」と思えてくる……。だから、「寂寥感」とでもいうしかない感情があふれてくるのだ。
 この本は30歳以上の独身女性が読むとより印象深いのかもしれない。こういってはなんだけれども、20代前半の女の子が読んでもあんまりピンとこないのではないかと思う。
 すーちゃんは、切ないことも、悲しいことも、その逆に嬉しいことも経験する。でも、表情があんまり変わらなくていつも同じ顔に見える。そんなすーちゃんの表情が胸を締めつけるのだ。とっても頑張って肩肘張って生きている現代の女性像を象徴している気がする。
 この漫画は、イラスト自体が持つ可笑しさで笑わせようとする類のものではない。あくまでも漫画に添えられている文が重要で、それが読者へのメッセージになっている。つまり、漫画は心象風景みたいなもので、それぞれのコマにそっと添えられている文がメインなのだ。
 こういう本は初めてだ。この絵のそっけなさと、添えられる文との温度差がいいバランスをとっていて、独自の世界観を醸し出している。そういう意味で印象に残る本だ。
 その本の感想が寂寥感だったと書くと、あまり皆様にお勧めできなさそうな感じがするかもしれないけど、そんな悪い意味では決してない。むしろこれを読んで自分がどう思うかを確かめてもらいたいという、珍しい形でのお勧め本なのです。どっちかと言えば陰な感じの本ですが、陰があるから陽がある……ということも実感できる本なのではないかと思います。
 今回は珍しい形でのご紹介でしたが、お時間のあるとき、読んでみて欲しい一冊です。それでは、また次回に!!


黒谷友香

黒谷友香(くろたにともか)
黒谷友香(くろたにともか)1975年、大阪府生まれ。95年、映画「BOXER JOE」のヒロイン役で女優デビュー。その後、CM・ドラマ・映画・ 雑誌など幅広く活躍。主な出演作に03年「魔界転生」、04年「クイール」など。またこの秋、公開の映画「SHINOBI」では、美貌の毒婦、陽炎(かげろう)を好演。

今夜は心だけ抱いて
『すーちゃん』
益田ミリ著
幻冬舎刊
1260円(本体1200円)