出ました、伊良部!(あ、伊良部というのはこの本の主人公、精神科医の太った男のことでして)。本屋さんに行ってこの伊良部シリーズを見つけたときのあの感動。そこに伊良部がいると思うだけで、心はウキウキ、ソワソワしちゃって、テンション高め。そんな私は完全に伊良部ファン。だって〜、あの伊良部ですよ!!
 ってこのシリーズを読んだことのない方にとっては全然この興奮ぶりの意味がわからないですね(先走りぎみ、反省)。読んだことのない方は是非、『イン・ザ・プール』、そして直木賞受賞作『空中ブランコ』を読んでください。もちろんこの『町長選挙』からでも結構ですが、伊良部にはまるにはやっぱり、順を追って読むのがお勧めです。
『町長選挙』はこれまでのシリーズとちょっと違って、実社会に生きるある人たちをモデルに、もしくはベースに小説が展開します。そこに奥田さんが創造された架空の人物、伊良部が乱入(もしかしたら伊良部にもモデルがいるのかもしれませんが……そんなわけはないか?)。
 小説を読んでいると、これってあの人のことかな? もしかして……。なんて、実際のその方々は決してその通りではないのは分かっているにもかかわらず、勝手に想像力が逞しくなり、頭でその有名人の方々を思い浮かべて読んでしまいました。何だか悪い気がするのは何故……? でも、そういうふうにして楽しめるのは、主人公「伊良部」のキャラクターが凄いから。ぶっ飛び指数が度を超え過ぎているから、ベースとなるモデルの方々の小説中での生き様が妙に現実味を帯びるのです。危ない、危ない。そういう意味でも純粋に伊良部を楽しむには今回お勧めする『町長選挙』ではなく、シリーズ一作目の『イン・ザ・プール』からどうぞ。その方が『町長選挙』を読むときの楽しさが増える気がします。
 4つの話が収録されている今回の『町長選挙』。ちなみに、一番良かったのはやっぱりタイトルにもなっている「町長選挙」でした。
「人生は祭りごと、一回きりのこの人生、祭ってなんぼ」です。
 まったく清々しい気持ちになりました。憎らしいけど憎めないお茶目な野郎、伊良部。また会いたいわ!
 それでは皆さん、また次回まで。


黒谷友香

黒谷友香(くろたにともか)
黒谷友香(くろたにともか)1975年、大阪府生まれ。95年、映画「BOXER JOE」のヒロイン役で女優デビュー。その後、CM・ドラマ・映画・ 雑誌など幅広く活躍。主な出演作に03年「魔界転生」、04年「クイール」など。またこの秋、公開の映画「SHINOBI」では、美貌の毒婦、陽炎(かげろう)を好演。

犬のしっぽを撫でながら
『町長選挙』
奥田英朗著
文藝春秋刊
1299円(1238円)