少し前になるけれど、読売新聞で「私と本」というような囲み記事の取材を受けた。前もって、最近どんな本を読んだとか、好きな作家は? とか、本にまつわる質問が書かれたFAXを受け取っていたので、家の戸棚から今まで読んだ本を引っ張り出したり、戸棚に入りきらない本をひっくり返して(うちには本棚というものがなく、ソファーと、少し離して並んで置いてあるライティングビューローとの隙間に本を平積みにして置いてあるという本当に情けない始末なのである……ああ、本棚が欲しい!)これはと思う本を探し、FAX用紙に書き込み、当然、好きな作家という欄には宮本さんのお名前を書く。取材の日は特に本自体を持参する必要はなかったが、なんとなく実物を持って話がしたかったので、書き込んだ何冊かを持っていった。取材が進み、インタビュアーの方とも打ちとけたとき、私は「こういうのもありますよ」と、とっておきのもう一冊を鞄から取り出すことにした。タイトル「宮本輝」。タイトルそのまま宮本輝さんを語った本である。インタビュアーの方も驚いていらっしゃったが、私も見つけたときは、「……ん??」と対峙してしまった。普段、小説家の方が書いたエッセイを買うのをためらってしまう私だったが、そのときは嬉しくて速攻買っていた。
 宮本さんの小説を読んでいるときは私には変な構えがいらない。本を読む前の時点の自分そのままを引っ張りながら、小説を読める。主人公や登場人物達の状況や境遇は小説の中にあるものだけど、そこから私が感じることはあまりにも普段の世界と近いと思う。近いというとちょっと違うけれど、小説中の言葉を改めて自分の中に落ち着けさせることが自然に出来るということで、これは宮本さんの力そのものだと思う。無意識に感じたり、常に探っている部分を長い小説を通してそこはかとなく匂わせた後、こちらの心に何かが残り、それを意識する。ほんとに素晴らしい作家だと思うから、タイトルそのままの宮本輝さんという人間がどんな方なのかとても興味があったのだった。
 最後にちょっと「睡蓮の長いまどろみ」について触れると(それがメインですよね……すみません)、主人公の目の前で「さよなら」と言葉を残し、飛び降り自殺をした女性から届く手紙の謎をときながら物語が展開する、宮本さんには珍しい(?)ちょっとサスペンス的な始まり方をするのだけれど、テーマは「因果倶時」。そのつながりは?? 是非読んでみて下さい。




黒谷友香(くろたにともか)
1975.12.11生まれ 大阪出身 「さらりとした梅酒」のCMでおなじみの黒谷さん。10月11日スタートの連続ドラマ「ストレートニュース」(日本テレビ毎週水曜夜10時〜)に出演します!

睡蓮の長いまどろみ 上 
睡蓮の長いまどろみ 下
文藝春秋社刊 宮本輝 著
睡蓮の長いまどろみ 上・下』