不思議なテンションで書かれた小説で、唖然、を通り越して変に納得……。想像していた内容とは違い、ものすごくSF的な要素が入っていてちょっと現実感に欠ける娯楽小説とでもいうのか、なんともいえない不思議な小説でした。
 薬物と遺伝子操作を組み合わせた研究から生まれた、聴力、視力などがずば抜けて優れている一人の少女・遙と、同じ経緯で生み出された犬のアレキサンダー。彼女たちは、自分たちと生みの親である研究者を暗殺しようとする「ZOO」という組織の手から逃れながら、ある目的のために数少ない味方と共に、自らに課せられた任務を遂行しようと戦います。
 軍が出てきたり、核兵器が出てきたりと、一人対国家というような図式の中で物語は動いていくのですが、あまりにも大きなものを相手にしているせいか、なかなか現実味が感じられず、そういう意味でSF小説的な感じを受けました。
 今まで読んできた小説とはまた違った印象を持ちましたが、ラストまで結構すらすらと読むことができました。出だしのサバイバルを描いた場面ではこれからどんな物語が……とぐっと引きつけられましたし、人物の描写が細かくて、一体どんな人間なのかと想像力をかきたてられました。もう少し何かが欲しいとも思いましたが、SF小説として考えると面白いのではないでしょうか。
 今回はいつもと違ったテイストの小説でしたが、読んでる最中は思いっきりその世界に浸れるので、自分の想像力を駆使して楽しむことができるのではないかと思います。皆さんも読んでみてはいかがでしょうか? それでは今回はこの辺で。また!!




黒谷友香(くろたにともか)
1975.12.11生まれ 大阪出身 「さらりとした梅酒」のCMでおなじみの黒谷さん。現在「天国への階段」(日本テレビ系・月曜22時〜)に出演中。「バイラ」(集英社)にて、本のエッセイ連載中。

劫尽童女
恩田陸著
『劫尽童女』
光文社
価格1,500円