前進する日もしない日も
第百十七回 新しいワールド
 仕事用の新しいパソコンを買ったのだった。14年ぶりである。今まで使っていたのは型が古すぎて、ここ数年はインターネットも使えず、仕事で送られてくる資料も、ほぼ見られなかった。なので、たいていのことはケイタイで済ませていたのだけれど、さすがに、小さい画面では目も疲れる。使い慣れているパソコンを手放すのが怖くてダラダラと先延ばしにしていたのだが、意を決して買い替えたのである。
 それにしても、 14年である。パソコンはびっくりするくらい進化しているようである。バシッと言い切れないのは、全貌があきらかになっていないせい。漢字を打つだけで、フワッと辞書の機能が浮き上がる画面を見て、えええーっと驚いている「さわり」の部分である。
 こうなったら、とことんパソコンを習ってみよう!
 というわけで、週に一度、パソコンの講習を受けているのだった。
「シフトとコマンドと4でスクリーンショットです」
 先生の教えをメモしながら、ああ、一体、これは何語なんだろう? とか考えるのはやめて集中するのだ!! と自分に言い聞かせている。
 買ったのはノート型。前々から一度やってみたかったカフェでのパソコンデビューの日も近い。WiFiというものの扱いはまだ習っていないのでわからないのだけれど、いずれ、このWiFiをものにして(って、この日本語は正しいのでしょうか??)、スタバなんかでパソコンに向かうというステキな構想もある。
 さらには、アニメーションなんかを作ったりさぁ、映画とかも作ったりさぁ、などと妄想し始めると、目の前のパソコン講習に集中できず、
「あ、先生、今のところもう一回いいですか?」
 覚えの悪い生徒なのであった。



益田ミリ『すーちゃんの恋』

益田ミリ(ますだみり)

1969年大阪生まれ。主な著書に「すーちゃん」シリーズ、『週末、森で』、『泣き虫チエ子さん1』シリーズ、『オレの宇宙はまだまだ遠い』などが、またエッセイ集に『47都道府県女ひとりで行ってみよう』『益田ミリ
銀座缶詰
』『ちょっとそこまで ひとり旅 だれかと旅』などがある。近著は『五年前の忘れ物』『キュンとしちゃだめですか? 』。


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