「インドで迷子になった私を助けてくれた親切なおじさん」「タイで大喧嘩したけど、なぜか気になるアイツ」、あるいは「旅先で話を聞いたけれど、ついに食べることができなかった料理」などなど、時間を経た今となっては、もう一度、再会できる可能性はゼロに等しい「誰か」や「何か」……。
 あなたの記憶にこびりついて離れない大切な記憶を教えてください。どんな異国でも辺境地でも構いません。
 一年間の募集期間の後、応募された記憶の中から一つを選んで、ノンフィクション作家・高野秀行が実際に探しにでかけます!! 下の「応募する」ボタンから、ぜひご応募ください!
〜読者から依頼された記憶〜
ファイル 023:腹が立ちすぎてヘッドロックをかましたアフリカ人
[お名前]森川貴彦
[性別]男性
[探して欲しい記憶の時間]1997年4月
[国名]マリ共和国
[都市名]バンジャガラ
[探して欲しい記憶の人名、物]白木ミノル似のかなり小柄なガイド
[探して欲しい記憶の人物の性別]男性
[探して欲しい記憶の詳細] 
 ちょうど10年前にアフリカを旅行していた時のことです。マリに入ったのは旅も始まり3〜4ヶ月たった頃だったので、アフリカの雰囲気にも慣れて、一寸やそっとではビックリも腹も立たなくなっていたと思い込んでいた時期で、ちょうどそのとき知り合った日本人の夫婦の方と、学生さんと4人での移動のため少しのんびり気分だったのは確かです。
 ドゴンの村に近づくにしたがって、インドでさえ「ここまでは……」と思うほどの、自称ガイドさん達の売り込み攻勢が凄かった事をよく覚えています。
 その中に一人、目に見えてかわいらしい小柄な現地人(立派な大人)が朝から晩まで我々に付きまとい始めました、彼の特長がかなり小柄で、ぷくっとしていた事もあり我々4人の間で自然発生的に「白木ミノル」の名が彼に冠せられたのは当然の成り行きであったのですが、ここから彼の怒涛の追走(今なら立派なストーカー)行為が始まります。
 最初は、「あ〜仕事ほしいんだな」と簡単に考えていましたが、追っても追っても何時間も付いて離れません、まるで自分の影のようにです。
 影は話し掛けてきませんが、彼は始終片言の英語で「雇え、損はしない」みたいな事を言ってきます。
 宿の人も「彼には気をつけた方がいい」と忠告してくれたり、地元でも余り評判は芳しくないようでした。それでも数日朝から晩まで付きまとってきます。そんなこんなで不愉快なりに相手にしていなかったのですが、ある朝、日が出てすぐに川沿いのカフェ(単なる屋台ですが)でカフェオレを飲んで、のほほーんとしていた時、彼が登場して一言、「俺を雇え、さもないとドゴンに行けなくしてやる!」みたいな事を片言の英語で結構な態度でまくし立ててきました。その時「プッチ」と音は聞こえはしませんが、反射的に小柄な彼の首をヘッドロックした上にグリコでこめかみあたりをグリグリしている自分がいました。彼はワーワー言ってました。被虐的悦に入っていたのかどうかは判りませんが、私はニタニタしながらゴリゴリしてたそうです。
 これについて彼に謝るつもりは毛頭ありませんが、今でも彼が自称ガイドでバンジャガラに居るのかどうか?
 今でも旅行先で知り合った夫婦の方と会うと必ず話題に出ます。愛嬌のあるフェイスに腹立たしい性格……。今でもアフリカの思い出の人NO.1です(因みに名前はわかりません)。

高野秀行より
 西アフリカのその辺りは前から行きたいと思っていたのですが、そんなに観光ズレしてるのかと正直がっかりしました。
 1980年代にドゴンの村へ旅行した人に聞くと、それはもう「秘境」という感じだったそうです。
 この「メモリークエスト」を始めてもう九ヶ月になりますが、「現地で知り合った観光ガイド(もしくは観光業者)を探してほしい」という依頼が実に多いですね。これで4件か5件目ではないでしょうか。
 結局外国人がふつうに旅行に行って仲良くなれるのは、言葉の問題も含め、観光ガイドが圧倒的に多いんでしょうね。3,4ヶ月もアフリカを旅して、いちばん印象に残ったのが観光ガイドという事実がそれを示しているように思えます。
 たしかに現地のガイドにはユニークな人がけっこういます。現地社会になじめないとか、能力が抜きん出ているとか、何か特徴があるから外国人の相手をする(できる)わけです。
 この際、世界中に名物観光ガイドを訪ねて回る「ツーリストガイド・クエスト」なんていうのもいいかもしれません。ミシュランみたいに星をつけたりして。
親切度☆、強引度☆☆、ユニーク度☆☆☆、下心度☆☆とか。
逆にガイドたちに外国人観光客の星付けをしてもらうのも面白いでしょう。
 例えば、日本人:カモ度☆☆☆、コミュニケーション能力☆☆、ケチ度☆、現地へのリスペクト度☆☆とか、スケベ度☆☆☆とか。
 全世界観光地化の時代では決して冗談ではない企画だと思います。
メモリクエスト Backnumber 〜前号の依頼
ファイル 022:タイの次期国王になる予定(!?)の占い師
[お名前]ゆっこりん
[性別]女性
[探して欲しい記憶の時間]2006年5月
[国名]タイ
[都市名]バンコク
[探して欲しい記憶の人名、物]PRATYA KIRNNOKKUM
[探して欲しい記憶の人物の性別]男性
[探して欲しい記憶の詳細]〜依頼内容を読む
メモリクエスト Backnumber 〜過去の依頼
 以下の応募フォームから、あなたの「記憶」をご応募ください。
 これは! というものは、高野秀行がその記憶を詳細に取材した後、実際に探しに出かけます。
 その記憶の状況、人の姿形、場所、時間など、なるべく詳しく教えてください。

※ご応募いただいた記憶は、毎号、高野秀行さんのコメント付きで紹介させていただきます。また、高野さんの触手が動いた記憶については、さらなる詳細を聞きに取材に伺います。
集英社文庫HPにて旅日記連載中!高野秀行オフィシャルサイト