「インドで迷子になった私を助けてくれた親切なおじさん」「タイで大喧嘩したけど、なぜか気になるアイツ」、あるいは「旅先で話を聞いたけれど、ついに食べることができなかった料理」などなど、時間を経た今となっては、もう一度、再会できる可能性はゼロに等しい「誰か」や「何か」……。
 あなたの記憶にこびりついて離れない大切な記憶を教えてください。どんな異国でも辺境地でも構いません。
 一年間の募集期間の後、応募された記憶の中から一つを選んで、ノンフィクション作家・高野秀行が実際に探しにでかけます!!
〜読者から依頼された記憶〜
ファイル 026:ペルーで忘れたセーター
[お名前]そうめん
[性別]男性
[探して欲しい記憶の時間]2005年3月
[国名]ペルー
[都市名]クスコ
[探して欲しい物]セーター
[探して欲しい記憶の詳細] 
 高野さん、こんにちは。そうめんと申します。
 私の探して欲しいものはセーターです。
 ペルーに行った時に防寒のため日本から持って行ったものなのですが、どこかに置き忘れてきてしまったようなのです。
 気付いたのは日本に帰ってきてからで、今となってはそのセーターがどこまではあって、どこからはなかったのかというようなことがあまり思い出せません。
 ただ、ここじゃないかなという心当たりはあって、それはクスコの土産物屋です。マチュピチュから帰ってきて、自分へのお土産にと、アルパカの毛のセーターを試着するときに脱いで、忘れてしまったのではないかと思うのです。
 観光地だけあって、クスコには土産物屋がたくさんあるのですが、どの土産物屋だったのかある程度特定はできます。というのもセーターの試着をした土産物屋はその一軒だけだからです。
 そこには日本語がひと言だけ喋れる子供がいて、その子と一緒に遊び、帰り際に持参した日本の硬貨を見せて、欲しいのがあったらあげると言って、50円玉を渡してきました。ちなみにその子供が喋れる日本語は、本人は意味が分かって言っていたのかはわかりませんが、たしか「殺すぞ」です。
 無くしたセーターは古着屋で買った激安の品ですが、ペルーに行くためにわざわざ買ったもので、デザインが気に入っていたため、無くしたことがいまだに悔しくて仕方ありません。どうか高野さん、私のセーターを探してください。よろしくお願いいたします。

高野秀行より
 面白い!!
 これが最後の依頼ですが、ついに来た! という感じです。
「殺すぞ」にも笑いましたが、それよりも南米のペルーまで自分が忘れたセーターを探しに行ってくれとぬけぬけと言うバカさ加減。これが実にいいです。
 これまでの依頼も十分おもしろいものだったけれど、どこか物足りない感じがありました。
 みなさん、真面目なんですよね。それはそれでもちろんいいのだけれど、そうめんさんみたいな、「他人にとってはどうでもいいことだけど自分にとっては重要」という、いい意味で自分本位な依頼は新鮮です。
 いいでしょう、あなたがそこまで未練を残す、でもきっと大したことのないセーターを探しにはるばるペルーまで行こうじゃないですか!……と思わず言いたくなります。
 手がかりは「殺すぞ」ですね。
 有力候補とさせていただきます。
メモリクエスト Backnumber 〜過去の依頼
ファイル 025:ラオスで出会ったさすらいのシンガー
[お名前]すぎも
[性別]女性
[探して欲しい記憶の時間]2005年11月
[国名]ラオス
[都市名]ムアンゴイ
[探して欲しい記憶の人名、性別]さすらいの歌い人(現地の人)、男性
[探して欲しい記憶の詳細]〜依頼内容を読む
メモリクエスト Backnumber 〜過去の依頼
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