メモリークエスト2 読者からの依頼一覧

[お名前]コバヤーシ
[性別]男性
[欲しい記憶の時間]1998年9月
[国名]日本
[都市名]神奈川
[探して欲しい記憶の人名、物]奈良先生
[探してほしい記憶の人物の性別]女性

[探して欲しい記憶の詳細]
 中学1年生の時、私のクラスは学級崩壊をしていました。担任のS先生は昔堅気な熱血教師、言うことを聞かない生徒には体罰も辞さない人でした。徐々にクラスの中で反抗する人が増えていき、授業中の私語は当たり前になりました。
 S先生が黒板を向いている時手裏剣が投げつけられたこともあります。また、家庭科の授業で、自分たちの作った料理を担任の先生に食べてもらうというものがありましたが、私たちの班は三角コーナーに溜まっていた生ゴミを皿に盛り付け、先生に食べさせました。先生は泣いていました。
 私は入学当初はとても真面目な学生で、当初はS先生にも元気に挨拶する程でした。しかし、友人が過激な行動に走ることに最初は戸惑いましたが、いつしか慣れ、止めることはしませんでした。いつしかその雰囲気を楽しんでニヤニヤしている取り巻きの一人になっていました。
 そんなある日、私と以前から図書委員会で交流があり、仲の良かった国語の奈良先生が授業中「朱に交じれば朱くなる」という言葉を説明しながら、「このクラスもそうですね」とじっと冷え切った目で私を睨みつけながら言いました。
 私はその時初めて恥というものを感じました。臨時教師だった奈良先生は2年時には転向されましたので、その後その真意を確かめることは出来ませんでした。
 今でも私は自分をごまかそうとする時、先生の目を思い出します。
 奈良先生に会い、その時のことを謝り、お礼を言いたいです。


高野秀行より返信


 この依頼文にはすごく深いものがあるように感じます。学級崩壊で、熱血の先生にゴミを食わせるほど荒んだ生徒たち。主人公の少年はもとは図書委員会で活動するマジメな生徒だったのに、いつしかその荒廃したクラスに馴染んでいってしまう。しかしかつて交流のあった国語の女性教師の一言で、初めて「恥」を覚え……。
 おおっ、まるで「文学」ではないですか! 今でも自分をごまかそうとするとき、先生の目を思い出すとは。
 国語の教科書に載っていてもいいような話です。
 なのに、読んでいて思わず吹き出してしまいました。「朱に交われば朱くなる」が私の笑いの琴線に触れたみたいで……。
 深いようで浅い、浅いようで深い(かもしれない)という、まさにこのメモリークエストのためにあるような依頼です。
 面白そうですが、一つ気がかりなのは、もし奈良先生を首尾良く見つけ出したとして、私は何と言ってお会いすればいいんでしょうね……。
 私も恥というものを感じそうでなりません。

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高野秀行からのメッセージ
『メモリークエスト』第一弾/全依頼26件
『メモリークエスト』第一弾が文庫になりました!
高野秀行プロフィール

一九六六年東京都生まれ。辺境作家。早稲田大学探検部在籍中に執筆した「幻獣ムベンベを追え」でデビュー。

アジア新聞屋台村』『ワセダ三畳青春記』『腰痛探検家』(以上、集英社文庫)、『怪獣記』『西南シルクロードは密林に消える』(ともに講談社文庫)『世にも奇妙なマラソン大会』(本の雑誌社)、『イスラム飲酒紀行』(扶桑社)など著書多数。

高野秀行プロフィール