メモリークエスト2 読者からの依頼一覧

[お名前]森あゆみ
[性別]女性
[欲しい記憶の時間]西暦2002年ごろ
[国名]日本
[都市名]愛知県三河地方
[探して欲しい記憶の人名、物]建国記念日に生まれた建国先生
[探してほしい記憶の人物の性別]男性

[探して欲しい記憶の詳細]
 ファイル17の「奈良先生」のリクエストを読んで、私も忘れられぬ先生の記憶をリクエストしたいと思います。日本ですし田舎ですが辺境ではないので自分でもがんばれば探せそうなのですが、まだご存命かどうか自分で知るのがちょっとこわいのと、高野さんに探し出されたときの建国先生の反応をぜひみてみたいのでリクエストしてみました。
 探していただきたいのは、高校生のときに日本史を教えてくれた岡本建国先生です。建国記念日に生まれたので建国と名付けられたそうです。私が高校生だった2002年ぐらいに、たぶん60歳ぐらいだったんじゃないかと思います。
 私の通っていた高校は県内有数の進学校で、東大京大を目指しちゃう感じの生徒がごろごろいるような学校だったので、指導をする先生たちもけっこうプレッシャーなんじゃなかろうかと当時の私は生意気なことを思っていました。建国先生はそんな進学校の教師陣のなかでも異色の雰囲気を放っていて、独特のユーモアと我が道を貫き通している(ように見えた)その姿に私は勝手な憧れと好意を抱いて、バレンタインデーに(別に本命ではない)チョコを渡して、建国先生にものすごく不審がられたこともありました。
 建国先生の評判は、生徒にはあまりよくなかったような記憶がうっすらとありますが、説明中に突如はじまる先生の寸劇と奥ゆかしいエロネタまじりの日本史の授業が私は大好きでした。先生が生徒のことをなぜか「選手」と呼んでいたのもツボでした。建国先生の授業中では眠りにつく生徒が少なくはなかったので、板書を一息ついて振り返った先生は、生徒が次々に机につっぷして眠りについていくその様子を眺めながら「点が線となり面となり……」と、よく実況中継していました。
 建国先生は、すべてを3つの箇条書きで構成する日本史の教科書?本?を書いて、それで一儲けするのだとよく語っていました。Amazonで「岡本建国」で検索すると「執念の女帝・持統」という謎の本が一冊出てきますが、これではないような気がします(著者も違うし)。
 3つの箇条書きの日本史の本が無事に完成したのかと、当時、先生は生徒のことを正直どう思って授業をしていたのかを聞いていただきたいです。
 先生はきっと私のことを覚えていないでしょうが、リクエスト文を書いていたら、南蛮人について説明しながら、教壇でいきなり「スペイン人!」と叫びながら謎のポーズをとっていた先生の姿がなんだかぼんやり蘇ってきました。まずは先生がご存命であるとよいですが。
 どうぞよろしくお願いいたします。


高野秀行より返信


 いいですねえ、建国先生。なんですか、「教壇でいきなり『スペイン人!』と叫びながら謎のポーズをとっていた」とは。生徒のことを「選手」と呼ぶというのは私にもツボでした。

 私の高校でも社会科系の先生には奇人変人が揃っていたのを思い出しました。
 日本史のM先生は一年かけて縄文時代から大化の改新までしか行かなかったですし、世界史のN先生は中国史しか教えてくれませんでした。また、地理のO先生は試験問題に「中央線の駅名を3つ書きなさい」という問題を出しました(もっとも、「小岩」と書いて単位を落としたやつが一人いましたが)。

 そして、おそらく偶然ではないんでしょうが、この先生方は三人とも学会に論文を定期的に発表していたり、著作を刊行したりしている研究者でした。
 研究者は教育者には向いてないんでしょうね。
 私も久しぶりにその個性豊かな先生方を思い出しましたよ。

 さて。結論から申し上げますと、建国先生はおそらくご健在です。少なくとも、今年の5月29日には刈谷市郷土文化研究会主催の「第1回談話会」にて「刈谷の米騒動」についてお話をしていらっしゃいますね。

 研究会の連絡先はTEL(0566)25-6000 です。
 ここに問い合わせるか、あるいは刈谷市図書館で訊いてもよさそうです。

 グーグルで検索をかけたら、あっさり出てきてしまいました。
 http://www.city.kariya.lg.jp/library/kyoubunnkenn/kyoubunken.html
「三河地方」で「岡本建国」なんて日本史の先生が何人もいるとは思えませんから、まちがいないでしょう。
 ネット時代おそるべし!と思ったのですが、しかし例えば、「森まゆみ」で検索しても何もわかりませんでした。まあ、仮名かもしれないですけど。
 つまり、今の時代、名前がユニークであるということは、ネットですぐに検索できるというメリットがあるということです。
 もちろん、何かマズイことをしでかしても名前がすぐにバレてしまうというデメリットもあります。

 突然訪ねていくのは唐突すぎて気恥ずかしいかもしれません。それなら刈谷市郷土文化研究会に入会し、次回の建国先生の談話会に出席してはいかがですか。
 私も同席するのにやぶさかではありません。
 談話会で「スペイン人!」をぜひやっていただきたいものです。

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高野秀行からのメッセージ
『メモリークエスト』第一弾/全依頼26件
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高野秀行プロフィール

一九六六年東京都生まれ。辺境作家。早稲田大学探検部在籍中に執筆した「幻獣ムベンベを追え」でデビュー。

アジア新聞屋台村』『ワセダ三畳青春記』『腰痛探検家』(以上、集英社文庫)、『怪獣記』『西南シルクロードは密林に消える』(ともに講談社文庫)『世にも奇妙なマラソン大会』(本の雑誌社)、『イスラム飲酒紀行』(扶桑社)など著書多数。

高野秀行プロフィール