メモリークエスト2 読者からの依頼一覧

[お名前]ラモス
[性別]男性
[欲しい記憶の時間]1993年8月
[国名]アメリカ
[都市名]カルバーシティー
[探して欲しい記憶の人名、物]ホームステイ先のゲームソフト。
[探してほしい記憶の人物の性別]男性

[探して欲しい記憶の詳細]
 中学1年生の時にアメリカのカルバーシティに1週間ホームステイしました。その家族には私と同じ年の男の子と2つ下の男の子の兄弟がいました。ある夜TVゲームをしようと誘われました。
 それはアイスホッケーのTVゲームでした。当時私はアイスホッケーを習っていたので、本場のアメリカ人をまずTVゲームから痛めつけてやろうとコントローラーを手にしました。プレイした瞬間に私はヨダレが止まりませんでした。それくらい衝撃でした。
 なんと、試合そっちのけで乱闘を楽しむゲームだったのです。ラフプレイをすると、選手同士が防具を脱ぎ、ファイティングポーズをとり殴り合いを始めます。パンチやキックをボタンでコントロールするのです。中学生ながら、こんなにぶっ飛んだゲームがあるのか。さすがアメリカだと感心してしまいました。帰国までの間、毎晩そのTVゲームを楽しんだほどです。ぜひそのゲームソフトと本体を探して下さい。


高野秀行より返信


 私がアメリカ音痴だ、自分にとって最大の秘境はアメリカだと前回書いたせいでしょうか。今度もアメリカの依頼ですね。
 アメリカにホームステイですか。全体ではアメリカに何日(何ヶ月?)くらい滞在していたんでしょうね。それとも留学でしょうか。

 また私の話ですけど、アメリカに留学していたと聞くと、いきなり「へえ、すごい…」と感嘆の念が沸き上がってきます。どこがどうすごいのかと訊かれると困るけど、「だって、英語ぺらぺらでしょ?」なんて外国に一度も行ったことのない人みたいなことを口走りそうになります。

 1970年代〜80年代に十代を過ごした人間にとって、アメリカは憧れの地だったんですよ。「自由の国アメリカ」とか「アメリカ建国200周年記念」とかなぜか日本でも盛り上がったもんです。

 それがどうしたことか、最近のアメリカは大暴落です。9・11とそれに続くアメリカのアフガニスタンやイラクの侵略で権威を喪失したのか、マイケル・ムーアの「アホでマヌケなアメリカ白人」や町山智弘「アメリカ人の半分はニューヨークがどこか知らない」が大幻滅を呼んだのか、はたまた日本で格差社会が取りざたされて、「アメリカは格差社会先進国だ」となり、ダメ大国の烙印を押されたんでしょうか。

 日本の若者の閉塞感、極端な内向き、夢も希望も持てないことなどは、最大の原因はアメリカに希望を持てなくなったことじゃないかと私は思ってしまいます。
 実はアメリカは急にアホでダメな国になったわけでなく、昔からそんなに変わっていないでしょう。ただ昔は今とは真逆で、よいことばかり伝えられ、ネガティヴな情報が入って来なかったんですね。

 おかげで多くの若者が「日本でくすぶっていてもしかたない。アメリカに行って夢をつかむぞ!」みたいな、今では「は?」というような情熱にかられていたのではないかと分析しています。

 実は今でも日本以外のアジア・アフリカの若者は元気で希望に満ちています。とくに発展途上国の若者はそうです。
 彼らの夢の源泉は「いつかアメリカやヨーロッパに行って勉強したり仕事してリッチで自由な生活を手に入れたい」ということなんですね。
 私たちがすでに失った夢をまだ彼らはぎゅっと握りしめているわけです。

 日本の若者を活気づける秘策。それはもしかするとアメリカへの幻想をもう一度かき立てることかもしれないと私は考えています。アメリカへ行けばなんでも夢が叶う。アメリカは日本より常に進んでいる。アメリカは年功序列でなく、若者にもチャンスがある……。
 で、アメリカに行った人はそれでいいし、行けなかった人はそのコンプレックスを抱えて、「今に見てろ!」という暗い情念を抱いて日本で頑張る。

 ほら、万事うまく行きそうじゃないですか。
 そこでこの依頼。アイス・ホッケーのゲームなのに、中学生がやるようなゲームなのに、試合そっちのけで乱闘を楽しむ。まさに「自由の国アメリカ」の底力を感じます。
 だからこそ、私がそのゲームを探しだして……、えーと、一体どうするんでしょうね……。日本の若者がみんなでそのゲームをやる? 野球で乱闘を楽しむゲームを開発する? 国会で乱闘を楽しむゲームを企画する? 格闘技に長けた議員が乱闘を繰り広げ、勝ったほうが法案を通すとか?

 えー、そろそろ混乱してきました。今度、ゲーム会社を経営する友人に、そのゲームの名前を調べてもらいますね。じゃ、そういうことで。

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高野秀行からのメッセージ
『メモリークエスト』第一弾/全依頼26件
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高野秀行プロフィール

一九六六年東京都生まれ。辺境作家。早稲田大学探検部在籍中に執筆した「幻獣ムベンベを追え」でデビュー。

アジア新聞屋台村』『ワセダ三畳青春記』『腰痛探検家』(以上、集英社文庫)、『怪獣記』『西南シルクロードは密林に消える』(ともに講談社文庫)『世にも奇妙なマラソン大会』(本の雑誌社)、『イスラム飲酒紀行』(扶桑社)など著書多数。

高野秀行プロフィール