メモリークエスト2 読者からの依頼一覧

[お名前]のし梅
[性別]男性
[欲しい記憶の時間]2002年秋
[国名]ベトナム〜カンボジア〜タイ
[都市名]ハノイからプノンペン、アンコールワット、バンコク
[探して欲しい記憶の人名、物]「TOO MUCH PAIN」を奏でていた旅人まゆみ

[探して欲しい記憶の詳細]
 学生の頃、3ヶ月ほど東南アジアを一人旅したときのこと。
 真っ黒に日焼けして、チェーンでぐるぐる巻きにしたカバンを背負った女の子まゆみに出会いました。ベトナムの宿で、小さなギターをかき鳴らしながら、ブルーハーツの「TOOMUCH PAIN」を歌っていたのです。
 ベトナムからカンボジアへの陸路は、一本道なので、彼女とヒロという男の3人で旅路を共にしました。カンボジアでは、プノンペンからアンコールワットまで、デコボコの陸路をピックアップトラックの後ろに乗って、丸一日ゆられました。
 アンコールワットでは、ホンダのカブをレンタルして3人で3尻して乗りました。
 ドリカム構成で苦楽の旅路を共にした3人でしたが、ヒロはチェンマイへ、マユミはインドへ、僕はタイで帰国。
 それぞれ、道が分かれました。
 ヒロとは、帰国後も連絡をとり、今でもたまに会うのですが、一度、まゆみからインドのサルナートにいるということだけがわかるわけのわからない絵葉書が届いて以来、音信不通。ヒロと会うときに、手帳に書いてもらった携帯に2度ほど連絡をしても連絡がとれずじまいでした。
 彼女がその後、無事帰国し、元気にしているのかが知りたいです。


高野秀行より返信


 旅先ではよく奇妙な人に会いますよね。「この人、一体何して暮らしているんだろう」とか「この先、どうやって生きていくんだろう? 一生、旅人やってるのかな」といった人たち。
 もっとも、私はふつうの旅行者が行くような場所に行かないので、そういう風来坊的な人とはむしろ日本でよく会いました。
 例えば、後輩の石川とインドで出会い、私たちのワセダのアパートに出入りしていたヒッピーの二人。名前を忘れてしまったので、AさんとBさんと呼びましょう。
 二人は日本でも電車に乗るとき、切符をほとんど買わないと言ってました。買ってもキセルばかり。でも、「絶対に捕まらない」んだそうです。
 一度、石川が彼らと一緒に日比谷の野音(だったと思います)で行われたレゲエの大きなイベントに行ったとき、彼らはいちばん安いチケットを買ったのに、通路を平気な顔で歩いて、ステージ間近まで行って空いた席に座ってしまったと言ってました。警備員も咎めたりせず、黙って見過ごしていたとか。

 その後、Aさんは私が海外のどこかにいるとき、私の部屋に住み着き、これまたどこかで知り合ったオーストラリア人の金髪女性と同棲していたそうです。
 で、私の後輩たちと一緒に、「結婚式」をあげ、Aさんは「金髪女性と結婚するのが夢だったんだよ。俺は夢が叶ったんだ!」と感きわまっていたとか。

 オーストラリアの先住民アボリジニの使う長くて奇妙な笛「ディドリドゥー」をぼうぼうと吹き鳴らし、オーストラリア人の彼女と睦み合い、欲求不満のたまったアパートの他の住人を激怒させていたそうです。

 いつの間にか、AさんもBさんも、私の視界から姿を消してしまいました。私より十歳は上のはずだから、もう五十半ばを過ぎたでしょう。あのまま、風来坊として暮らしているのかなあ。暮らしているといっても、何で食いつないでいるんだろう。その当時でも、彼らが一体何で生活しているのか、全くわからなかったんです。

 意外とその後で堅気になったかもしれません。
 私の別の知り合いで自称「ポッキー」という、これまたヒッピー系の旅人がいました。腰まで届く長いドレッドヘアと怪しい髭を生やして、ふらふらしてましたが、あるとき突然、髪をばっさり切って七三に分け、ふつうのシャツを着て、「公務員になりたい」と真顔で言うので仰天した思いがあります。そういうケースもあるんですね。まあ、三十過ぎまで放浪して、今更公務員は当時
 でも無理だったでしょうけど。あの人も今はどこで何をしてるのやら。

 こうやって書いているうちに思いついたのですが、ヤフー知恵袋の旅人版みたいなものがあればいいですね。
 まゆみさんやAさんみたいな旅人は広く長く旅をしているわけでしょう? いろんな人と出会い、個性も強いから、そうとうの印象を残すはずです。
 この依頼文に書いたような具体的な特徴や出会った場所や時期を明記しておけば、誰かがそれを見て、「あ、この人、知ってる!」となる可能性が高いですよね。

 いや、そういう人たちだって、今はさすがにネットを使うだろうから、「あ、それ、あたし!」と言って、直接返事がもらえるかもしれません。

 うん、これはかなり成功の確率が高い。
 誰かそういう旅人メモリークエストサイトを立ち上げてくれないかなあ。
 のし梅さん、どうです? 全国の旅人や元旅人のために、やってみませんか?

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高野秀行からのメッセージ
『メモリークエスト』第一弾/全依頼26件
『メモリークエスト』第一弾が文庫になりました!
高野秀行プロフィール

一九六六年東京都生まれ。辺境作家。早稲田大学探検部在籍中に執筆した「幻獣ムベンベを追え」でデビュー。

アジア新聞屋台村』『ワセダ三畳青春記』『腰痛探検家』(以上、集英社文庫)、『怪獣記』『西南シルクロードは密林に消える』(ともに講談社文庫)『世にも奇妙なマラソン大会』(本の雑誌社)、『イスラム飲酒紀行』(扶桑社)など著書多数。

高野秀行プロフィール