メモリークエスト2 読者からの依頼一覧

[お名前]まさと
[性別]男性
[欲しい記憶の時間]2010年12月
[国名]ペルー
[都市名]プカルパ近郊、ヤリナ
[探して欲しい記憶の人名、物]告白してくれた現地の当時13歳の女の子
[探してほしい記憶の人物の性別]女性

[探して欲しい記憶の詳細]
 アメリカ留学中の冬休みにペルーを訪れたときのこと。プカルパへと向かうバスの中でデジカメを盗まれた。着いてすぐに警察署へと向かい、名を名乗ると爆笑された。なんでも近くに「マサト」という同じ名前を持つ酒があるのだという。
 翌日モトタクシーでそこへ向かうと、着いたのはまさに思い描いていたようなアマゾンの村だった。その村、ヤリナで酒を探していると「ケン」と名乗る英語を話すガイドと出会った。彼にボートで案内してもらいその村の湖の対岸にある「植物園」を訪れた。申し訳ばかりの道があるだけの単なるジャングルだったが。
 そこで金をとっていた家族に誘われて我々2人はピラニアなどをご馳走になった。マサトネタはここでもウケた。そこを後にしようという時にケンがこう言った。「ここのお父さんが言うには長女が君の彼氏になりたい、日本に連れて行ってほしいと言ったみたいだ」
 彼女の方を見ると恥ずかしそうにしかし熱いまなざしでこちらを見ていた。しかし、13歳だと聞いて何もできずにそこを後にした。彼女の名前とどういう血筋なのか(シピボ族かメスティソか)を突き止めて写真を撮ってきていただきたい。今でも彼女のことが忘れられない。


高野秀行より返信


 アマゾンのプカルパ。そんな「辺境」での依頼は本当に珍しいですね。
 プカルパは私にも深い思い入れがあります。ちょうど二十年前、アマゾン河を河口から源流まで、地元の船で遡ったことがありました。とはいうものの、実はペルーのイキトスまでで、そこからプカルパまでは治安がよくないという話だったので、旅費も尽きかけていたこともあり、一気にアンデス山脈の源流部まで飛行機で飛んだのでした。

 「治安がよくない」と話してくれたのは、私とは逆にアンデスからプカルパに飛び、そこからイキトスまで船で下った宮澤という後輩です。彼はプカルパで、あろうことかテロリストと間違えられ、三日間、牢獄にぶちこまれたそうです。
 プカルパの牢獄は地獄のようなところで、雨が降ると、膝の高さに浸水して、横になって寝られないどころか、立ちっぱなしだったとか。

 その後、誤解が解けて釈放された彼は船に乗ったものの、甲板にハンモックを吊して寝て、朝目覚めたら胸に抱えていた貴重品入れが空っぽになっており、一文無しになってしまったそうです。

 かくして、私はプカルパ行きを回避したのですが、今となってはプカルパに行きそびれたことが残念でなりません。

 もう一つ、そんな少女との色恋沙汰(というほどでもないでしょうが)は他人事ながら惹かれます。まあ、十三歳ではどうしようもないけど、あれから十一年経っていたら二十四歳。ちょうどいい年頃ですよね。

 私は日頃から、男女の仲を取り持つのが大好きという「仲人体質」なので、「これは是非とも探しに行って、アマゾンと日本のカップルを誕生させたい!」と意気込んだのですが……、ふと「探して欲しい記憶の時間」を見直してびっくりしました。

 2001年だと思っていたら、なんと「2010年」じゃないですか!! しかも12月。つまりたった一年ちょい前の話じゃないですか。
 「今でも彼女のことが忘れられない」なんて、甘美な追憶みたいな表現につられてしまいましたが、去年からずっと思い続けているという現在進行形でしたか。しかも彼女はまだ14歳か15歳…。

 いや、プカルパに行ってもいいですよ。で、その子を探してもいいですよ。
 ていうか、絶対見つかりますよね。小さい町だし、一年前の話だし。
 で、見つけてどうするんでしょうか。その子の両親と話をつけ、日本に連れてくるんでしょうか。まあ、日本で14とか15だったら問題ですけど、あちらではおそらく決して結婚に早すぎはしないでしょう。日本の法律でも親の承認さえあれば、16歳で結婚できますしね。
 パスポートと日本のビザを取得し、航空券を買えば、可能なわけですが、それはメモリークエストというより、「花嫁斡旋業」というか、なにか別の仕事ですよね。

 まあ、「仲人体質」なのはたしかですから、他に同じような依頼が来たら、考えてもいいと思います。ただその際、この連載のタイトルは「メモリークエスト」ではなく、「ブライドクエスト」になるかもしれませんね。
 副題は「世界を股にかけた花嫁探し!」とか。
 あ、こっちの方が売れるかもしれない。ちょっとマジで考えてみます。

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高野秀行からのメッセージ
『メモリークエスト』第一弾/全依頼26件
『メモリークエスト』第一弾が文庫になりました!
高野秀行プロフィール

一九六六年東京都生まれ。辺境作家。早稲田大学探検部在籍中に執筆した「幻獣ムベンベを追え」でデビュー。

アジア新聞屋台村』『ワセダ三畳青春記』『腰痛探検家』(以上、集英社文庫)、『怪獣記』『西南シルクロードは密林に消える』(ともに講談社文庫)『世にも奇妙なマラソン大会』(本の雑誌社)、『イスラム飲酒紀行』(扶桑社)など著書多数。

高野秀行プロフィール