ため込んだ感情の行方


 その昔、駅のトイレは下品な落書きでいっぱいだった。誰が何の目的であんなことを公共の場にぶちまけるのか。
 狭い空間に満載のそれは用を足してるといやでも目に入り、見ないわけにはいかなかった。国鉄のトイレなどはひどい状態で、たびたび気分が悪くなったものだ。
 いまでは駅も駅のトイレもすっかりきれいになって、ああいった人を落ち込ませるような落書きは消えた。
 ところが、先日、久しぶりに某駅のトイレにかけこんだら、落書きが。
「もう生きていたくない。まったく自分に自信が持てない。死にたい」
 といったものだった。
 で、それに対し、誰かが応えている。
「生きよう。生きていれば、必ず希望が見えてくる。生き続けなければーー」
 小さな個室をよく見回すと何人もの人が、「死にたい人」に向けて励ましのメッセージを送っていた。しげしげ眺めると、なかなかいい文章もある。誤字が惜しい。せっかくだからと直してやろうとつい校正したくなり、自分が書き込んでしまいそうになった。いや落書きはよくないんだったとふと我にかえる。

 昨日はバンド(HaRappers)の本番ではりきりすぎたのか腰痛になった。
 タク先生の本によると、腰痛の一番の原因は、「感情の強制停止」なんだそうだ。どうしてかというと感情という巨大なエネルギーは腰の力でしか止められないのだと。
 ぐぐっと押し殺した感情はからだの中心である腰がすべてふんばって受け止めているんだという。
 こころのモヤモヤや怒りが積もり、ガマンのレベルがある日100に達したとき、症状は起こる。
 なるほどねー。
 「腰痛はからだ全体のSOSだから2日間はゆっくり休むべし」かー。私は真面目な患者なのでタク先生の言うことはよく聞くのである。
(腰痛の話は「かわいいからだの救急箱」より引用)。


つづく