黒猫「くる」がやってきて


 さて。あれからさらに2週間。
 休まずホットヨガサロンに通い続けているが、はじめの頃のようは感動は、もうない。
 最初は急激に体がよくなった気がしたのだが、いまは倦怠期なのか、安定期なのか。
 しかし、こういう時期こそが、大事なのだ。そういったことは40年も生きていればわかる。
 わが幻冬舎の女子のあいだでも静かに広がっている、ホットヨガの輪。
 みるけんをみた次の日にホットヨガサロンに入会したという菅野ちゃんや、わたしがさわぐ前から通っていた阿部どんに、効果のほどを取材し次回レポートしたいと思う。


色つけ係 いづりん
 先日、黒猫の「くる」(推定年齢12歳、雑種の和猫)が我が家にやってきた。
 くるは同じバンドの吉田君のネコで、引っ越しをするから一週間ほど預かってほしいと言われた。私はしっぽを振って快諾し、くるの来訪を心待ちにした。遊べる場所を作ろうと、くる用に模様替えもした。
 ニャンキーが亡くなってはや3年。ネコと住むのは久しぶりだ。くるはイヌのように人懐っこく、顔もかわいく、すこぶる健康で毛並みもいい。私はくるを歓待し、たいへんかわいがった。
 ネコと眠る。なんという幸せ。
 くるの鼻息で目覚める朝は格別だった。おなかがすいたと、5時に起こされても嫌な気がまったくしない。
 くるをひざにのせて読むゲラは、原稿の一文一文まで生き生きと輝きだすような気がした。
 くると一緒にいたいあまり、会社を一日休んだ。
 そんなふうにして一週間が過ぎ、ある晩、引っ越しの終わった吉田君が、くるを引き取りに来た。
 うちに来た彼が、お世話になりましたと言って彼女のトイレを片付け、移動用のバッグにくるを押し込んだ。そのテキパキとした様子に、私は悲しくなった。
 みるみるうちに目に涙が溜り、そして声をあげて、びいびい泣いた。
 吉田君は唖然とし、私に詫びたが、彼はちっとも悪くない。
 悪くないが、とつぜん切り離された、くると私の空間。元には戻らない。
 あんなに、あんなに、かわいがったのに……。
 ひとりきりに戻った部屋は白く、広く感じられた。
 思い切り泣いたあとは、気持ちがよく、心が澄んだように思えた。
 くるが私にもたらしてくれたのは、一緒に過ごす幸福ではない。
「再びひとりになったときにわかること」だった。