2003年、深夜の三宿デニーズで泣いたのは、かっこ悪かった。

 ひょんなことから、吉本の芸人・ぜんじろうさんのひとり芝居を作・演出することになり、午前3時のデニーズで、ぜんじろうさんとマンツーマン打ち合わせをしていたときのこと。わたしには芝居関係の経験がなく、うまくいくとは思えぬ暗い展望に目をそらす努力をしていた最中に、「吉本の風は冷たい…」という、まずい追い風話をぜんじろうさんから延々聞かされたのだ。わたしの力量もふくめ八方ふさがってるや〜んと思ったときに、涙がダーーッ。
 それは、やるせなさと自分の疲れの混じった涙だったのだが、その場で泣いているわたしが“別れ話を切り出されてる女”にしか見えないことを指摘され、「あ、すいませ〜ん」と謝り、泣きは即笑いに変わった。
 深夜のファミレスで芸人にフラれ泣きする女、あまりにいそう! あぶねー。

 これほどの無駄泣きは、その後ありませんけど、今回は「有効に涙する女子」のモテを考えたいと思います。

 残念ながら現在、泣きは男性優勢の感がある。ここ最近でも一番有名な泣きといえば、ワールドカップでブラジルに完敗した後の中田英寿の涙でしょう。あの涙には賛否両論あると思いますが(わたしは否)、全てのニュースでトップ扱い、10分の寝そべり泣きシーンが中田の今後に有効だったのはいうまでもありません。中田以上にベストタイミングで涙してる女性は見つかりませんねー。

 そもそも男が涙を見せない時代なんて、とっくに終わってますもん。ずいぶん前に友人宅であった『北の国から'98時代』観賞会なんてのも、男子が涙腺を解放する会だった。草太兄ちゃん(岩城滉一)の死で、身長180cmの男友達3名はわたしの3倍ティッシュを使用。奇跡的に人工哺育で大きくなった『シロクマ・ピース』のドキュメンタリーで涙する仲間も、「わしはチャンスがあればどんどん泣いていくよ」と、さらに涙解禁宣言。涙がコルチゾールというストレス物質を体外へ排出させる効果があるなどの、あるある情報も一般的となり、男性だってじゃんじゃん涙を流しストレス解消しているのだ。

 ただし、プライベートシーンで流す涙は、まだ女性の方が多いのではないでしょうか。
 先日もうちの近くの電柱の明かりの下で、男女が痴話ゲンカを繰り広げており、女のコがメソメソと泣いておりました。事情はまったくわからぬものの、女子の泣き顔のかわいくなさと男の冷たい表情から、このとき女の涙が何のプラスにもなっていないことだけはくっきり。
 また、喜怒哀楽が激しく感性豊かなところが彼女の魅力、とベタぼめでつき合いだした友人でさえ、「なんでわかってくれないの!」と自分へ問題の鉾先が向けられた途端、彼女の涙には無反応。「明日、目が腫れても大丈夫なのぉ〜?」と、携帯電話のゲームを続けながら現実的な言葉を投げかけたのみだという。わかってはいたけれど、劣勢時の涙はほんとうに無駄、無力の結晶でしかないんですね。ここで涙のむなしさに泣けてきますが、かしこい女になるには涙腺をきつくきつーくしめるべし。
 じゃあいつ泣けばいいのか? ちゅー話ですが。まず、貴女はめったに泣かないタイプだと印象づけてください。その一方で、男を泣きたいように泣かせておき、“泣くのは彼、泣かないのはあなた”の基本を作っておきましょう。その上で、男子が「さすがに自分のことで泣くのは」と涙をこらえた瞬間に、本人より先に彼のドラマに入りこんでぽろりと涙をこぼせば、「オレのために…」とあなたのひとつぶの涙がダイヤモンド並みにキラリ! 涙における男女同権時代、『男の涙腺をゆるめ、自分の涙腺はしめておける女子☆』の涙がやっと有効。
 もともと女性は、過去の出来事の感情を連鎖的に思い出して感情移入するのが得意なのだそう。たいしたことないプライベートドラマでも、昔飼っていた愛犬の思い出をひっぱりだして泣いてあげられるのが、人生の女優です。
『自分の泣きネタに1リットルの涙』