レー・ラダックウダイプールジャイプールクンバルガルジョードプールジャイサルメールビカネールマンダワリシケシュアグラーヴァラナスィデリー
 砂漠の都市を後にして、潤い豊かなクンバルガルへと向かう途中、車のエンジンが止まってしまった。マンシンが工具を取り出して一生懸命格闘していたけれど、アクセルを踏むたびにエンジンは空回りするのみ。道行く車を止めて助けを仰ぐも、解決策は見つからず、再びひとりでカチャカチャやっていた。
 砂漠の道で立ち往生なんて、映画によくある話だけれど、親切を装った強盗には遭わなかったし、胸がときめくような素敵な出会いもなかった。このまま1日を過ごすのも悪くないと思いかけた頃、エンジンは正気を取り戻してくれた。
クンバルガルへと向かう道程で立ち寄ったラーナクプルのジャイナ教アーディナータ寺院は、総大理石に精緻な彫刻を施した建築で、一部ではインドで最も美しい寺院とも言われている。写真のような彫刻が随所に見られ、その完成度にはため息が漏れるほどである。
2頭の牛がせっせと回転させているのは、農業用水汲み上げの滑車に繋がる歯車で、この地域では、飲用の水源をダムで確保しているものの、農業はこうした原始的な方法で行われるらしい。
前述の牛を動力に実際に水を汲み上げる滑車がこちらのもので、用水路に流し込まれた水は、田畑へと注がれる。このような労苦を伴ってようやく水を得ることができるのを知ると、日々の暮らしで使用する水に改めて感謝したくなる。
14世紀に建造されたというクンバルガルの城壁は、その長さ36キロにも及び、万里の長城に次ぐ世界第2位を誇るのだとか。砂漠のラジャスターンにありながら、緑が生い茂る土地柄や、この城塞以外何もないのどかさが気に入って、もしも次に訪れるなら、長期滞在してみたい場所である。
 インドという国は、貧しいのか、豊かなのかよくわからない国だ。先ほどまで、牛が一生懸命歩いて農業用水を地下から汲み上げている姿を見ていたのに、今度は「夏は暑いから、湖の中に宮殿を建てよ!」という王のひとことで本当に造らせてしまった白亜の宮殿の中にいる。夢と現実が混在していて、どちらが夢で現実なのかもわからなくなってくる。
ウダイプール名物の、湖に浮かぶマハラナの避暑地レイクパレスは、現在ホテルとして営業しており、一般客の宿泊が可能である。夕暮れ時は、まるで船が海に浮かんでいるかのようにも見える。
レイクピチョラーを睥睨するシティパレスは、ラジャスターン州最大の王宮と言われ、内部は博物館として開放されている。かつて王たちが遊興に使用したという宮殿4階に位置する中庭のプールへは、400人もの女性たちによってレイクピチョラーの水が運び込まれたのだとか。
近隣のグジャラート州からやってきたという少女たちは、指輪にピアス、そして腕輪、チョーカーと、美しい宝飾品を身に纏い、ひときわ目を惹いた。
洗濯物の配達だろうか? インドでは、街中のいたるところで、こうした色鮮やかな衣を目にする。
 旧市街を抜けてしばらく行くと、人工の湖が現れ、ウダイプールのレイクパレスのように宮殿が浮かんでいる。この当時の王たちは各シーズンごとに、また居住のため、遊興のためと、目的ごとに宮殿を建てたそうで、今でこそ観光の貴重な資源になっていて、市民を喜ばせているかもしれないが、巻き上げられた血税で、多くの人員を使って建てられたこうした宮殿は、その当時の人々にとっては迷惑なものだったのではなかろうか?
かつてその姿を公にすることを許されていなかった王族の女性たちが、祭りの際に透かし窓越しにパレードを見た場所が、この風の宮殿であった。ピンクシティーとも言われるジャイプールの旧市街は、このようなフラミンゴピンク色に塗られている。
噂に聞きしコブラ使いを発見。笛を吹くと、籠の中のコブラが首をもたげてクネクネと踊るだけなのだが、観光客相手の商売として成立しているというからすごい!
シャガール城の入り口にて、土の甕で保冷されたアイスを購入。ほんのりマサラが香るカスタードアイスはピスタチオ片入りでとてもおいしく、炎天下の観光で上気した身体にはありがたかった。
ラジャスターン州名物のチリパコーラーは、大きめの青唐辛子に、マサラで味付けしたジャガイモを詰めてフリッターにしたもので、激辛の唐辛子とホクホクのジャガイモのバランスがたまらない!
 「あなたはラッキーだね」
 地元旅行会社の社長ワンチュクさん曰く。ダライラマが滞在中で、今日が説法の最終日だという。ラダック地方にはチベット文化がかなり入り込んでおり、インドの地域とは全く異なる様相をしている。ダライラマもこの地が好きで毎年必ず訪れるそうで、今回は2週間も滞在し、3日間にわたる説法を行っている最中なのだとか。
 すでに説法が始まっていた青空広場には、5000人以上の人々が日除けのための傘をさして座っていた。ここでは、自由に立ったり座ったりしながら、何箇所か設置されている井戸で水を汲み、友人との会話を楽しみ、堂々と弁当箱を広げて食事までしている人々がいる。その間もダライラマの説法は続いている。
 そんなゆるい雰囲気のお陰で、私も青空の下で昼寝をすることができた。日差しは刺すように熱く、頭から被ったストールに手も隠さずには眠れないほどだったけれど、何を話しているのか全くわからないダライラマの説法を聞きながら眠ると、頭痛が少しずつ和らいでいくようだった。
高度30000メートル以上、インダス川が流れるラダックの空はとにかく青く、空気は喉が痛くなるほど乾燥している。不毛の地ではあるけれど、小高い丘の上にはチベット仏教の修道僧院ゴンパがある。写真は、リキルゴンパ。
同じくリキルゴンパ。高山病で呼吸困難になるため、敷地内の階段を上るのにも一歩足を前に出しては休み、また一歩進んでは休みと一苦労だったけれど、レー・ラダックは北インドのなかで最も好きな場所になった。
神々を描いた極彩色の絵図で溢れるゴンパ内部。
泥レンガの世界遺産バスゴゴンパ。バターランプが煌々と焚かれた本堂の中には巨大な弥勒菩薩が祀られており、たった二人の僧侶と、近隣の村人が管理に携わりつつ、考古学庁による修復作業も行われている。
同じくバスゴゴンパにて。五色の旗が青い空にたなびく姿はとても清々しいものでした。