にしのあきひろエンヤコラ日記〜絵本作りはつらいよ〜

 中学時代の僕はといえば、仲間を連れてラブホテルの玄関脇の植え込みに身を潜め、出入りするカップルを確認しては「OH〜、モ〜レツぅ〜」と叫ぶなど、地獄的に不毛な時間を過ごしては、思春期突入と共に順調に芽生えたスケベ心と正面から向き合う毎日。
 そんな僕ですから、エッチな本は喉から手が出るほど欲しい代物だったわけですが、そんなお金もありませんし、お金があったとしても買う勇気がありません。
 そうした逆境の中、考案されたのが「エッチな本を自分で描く」というものでした。
 これならば、お金もかかりませんし、勇気も必要ありません。夜な夜な、ペンと股間を交互に握り、エッチ本制作に精を出しておりました。

 これまでの人生で絵と向き合った記憶はそれくらい。学校の美術の授業で描いた作品は、「ピカソの絵を観てアゴ髭をさする人」「宙に浮いているリンゴを描いて『真実』というタイトルをつけちゃう美大生など、アートを小馬鹿にしたものばかり。絵なんぞこれっぽっちも興味がありません。
 そんな僕が絵本を描くことになるキッカケ、それはタモリさんでした。
 タモリさんとはときどき二人で呑みに行かせていただいているのですが、そこで繰り広げられているのは延々と続くミニコント。会話の中に登場したキーワードをもとに、ときに1時間にも及ぶ大作が生みだされることも。これに関してお話すると長くなるので、またいつか。
 とにかく真面目な話になることなんて滅多にないのですが、その日は珍しく神妙な面持ちのタモリさん。席につくなり、「お前、絵描いたら?」という言葉がタモリさんの口から突然飛び出してきたのです。どうやらミニコントではなく、真面目モード。
 あまりに突然なことだったので、一瞬動揺しましたが、ここは誤魔化さず正直に「面倒そうなので描きません」とお返事させていただきましたところ、そこから話題はコロコロと転がり、「絵本に着地します。
 お互い、絵本に感じていた疑問が共通していたからです。ザックリ言うと、「子供をナメている大人が多いよね」といったような。
 そんなことを話しながら「そういえば物語を作るのには興味があるなあ」という思いがよぎり、「絵だけを描くのは嫌だけど、絵本なら」と考えが整理されていきます。
 この世界に飛び込んで、まさか絵本を作るハメになるとは思いもよりませんでしたが、「長い芸能生活、まあ一年くらい棒にふってもいいか」と、まとまり、「絵本を作ってみます」と宣言。
 しかし、現実はそう甘くはありませんでした。
 制作開始から数ヵ月後、「一年くらい」という計算が甘かったということに気づくこととなるのです。

にしのあきひろ エンヤコラ日記〜絵本作りはつらいよ〜 #2 制作日記スタート

 原因は写真左下に写っているコイツ。「コピックマルチライナー」というペン先0.03ミリのペン。なんてったってこれだけの細さですから、このペンでページを埋めるのはそりゃあもう大変な苦労です。だったら何故、僕はこのペンを選んだのでしょう?
 細いペン一本で作品を作ったら、「なんか超ストイックって感じぃ〜」とキャバクラ嬢ちゃん達からチヤホヤされるのではないかという破廉恥な動機と、もう一つ、このペンでなければならない理由があったのです。その話は次回。

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エンヤコラ日記〜絵本作りはつらいよ〜

にしのあきひろ

西野亮廣。1980年7月3日兵庫県生まれ。99年梶原雄太と漫才コンビ「キングコング」を結成。「NHK上方漫才コンテスト」で最優秀賞など受賞多数。現在「はねるのトびら」「キングコングのあるコトないコト」「いつも!ガリゲル」などのレギュラー番組で活躍する一方、漫才ライブ「KING KONG LIVE」やソロトークライブ「西野独演会」などの活動も意欲的に行っている。「日の出アパートの青春」「ドーナツ博士とGO!GO!ピクニック」「グッド・コマーシャル!!」(のちに、小説『グッド・コマーシャル』として刊行)、「ペンギン・ボーイズ」ほか、演劇やショートムービーの脚本・演出も。

絵本『Dr. インクの星空キネマ』では、物語の絵の力で世間を驚愕させた。絵本第二弾は、切ないラブストーリー、『Zip&Candy ロボットたちのクリスマス』。今回、三作目の絵本に取り組んでいる。

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